石上優はやり直す   作:石神

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感想ありがとうございます(´∀`)


皇女の御心after①

〈ファミレス〉

 

「フッフッフ、伊井野ちゃん……覚悟は良い?」

 

「お、大友さん? 覚悟って何の事……?」

 

ファミレスへと連行された私は、現在……大友さんに詰め寄られている。

 

「石上君とのイチャラブ生活の事に決まってるでしょー? どんな感じでイチャイチャしてるのか、しっかり吐いてもらうよ?」

 

「えぇっ!? そ、そんな……イチャラブ生活なんてしてないもんっ……」

 

「ネタは上がってるんだよ?」

 

「ね、ネタ……?」

 

「えーとねー……」

 

………

 

これは、目撃者のおのっ……R.Oさんからのタレコミです。その日、R.Oさんは昼休み……昼食を食べ終え、中庭を散歩していました。暫く中庭を歩いていると、近くから聞き慣れた声が耳に届いたそうです。

 

「……?」

 

なんだろう? と思い、周囲を見回すと……草木に遮られた茂みの先から声が聞こえて来ます。R.Oさんは、物音を立てない様に気を付けながら……問題の茂みを覗き込みました。すると……

 

「なんか……人に見られない様に隠れてると、悪い事してるみたい……」

 

「仕方ないだろ? 教室だと人目があるし……今のうちにして欲しい事があるなら聞くけど?」

 

どうやら2人は恋人同士の様です。校内ではイチャイチャ出来ないからか、態々こんな所まで来てイチャついていた様です……所謂バカップルです。

 

「……手。」

 

「手?」

 

「そ、その……両手を広げて、おいで……って言って欲しい……かな。」

 

「……」

 

「あ、その……や、やっぱりっ……!」

 

「……おいで。」

 

「〜〜〜っ!!」ダッ

 

いいっ……その女の子は男子の胸に飛び込むと、それはそれは幸せそうな顔をして、グリグリと男子の胸に額を擦り付けたり、頭を撫でてと懇願したりと、甘えまくっていたそうな……最後に、R.Oさんから一言。

 

「……敷地内であーいう事をするんなら、見られてないか気を付けな。」

 

………

 

「ア…ア……」プルプルッ

(み、見られてたー!?)

 

「誰なんだろうねー? この話に出て来る女の子と男子って……?」ツンツン

 

「あぅあぅっ……」

 

「ねーねー、伊井野ちゃーん?」ツンツン

 

「も、もう、許してぇっ……!」プルプルッ

 

「えー? しょうがないなぁ……じゃあ、石上君の事が好きって実感するのってどういう時か教えてくれたらいいよ?」

 

「えぇっ!? そ、そんな……恥ずかしい事言えなっ……」

 

「えーと、続きまして……R.Oさんから2つ目のタレコミです。」

 

「わあぁっ!? 言う、言うから!そ、その、ふとした時の優しさとか、褒められたり撫でられたりした時に……ぎゅーってしたり、されたくなっちゃった時に、甘えさせてくれる所……かな?」

 

「そうなんだー?」ニマニマ

 

「あうぅ……や、やっぱり、今のはなんでもないの! 忘れてぇっ!!」

 

………

 

「……って伊井野ちゃんが言ってたよ?」

 

「それ、絶対僕に言ったらダメな奴だろ……」

 


 

〈ファミレス〉

 

「伊井野ちゃん! 恋人同士っていうのは、付き合い始めてからが本番なんだよ? コレに色々載ってるから、読んでみて!」

 

「う、うん……」パラパラ

 

最早恒例になりつつある、大友さんとのファミレス談議。私は大友さんから雑誌を受け取ると、パラパラとページを捲り始めた。

 

「あ……」

 

ページを捲っていると、あるページで捲っていた指が止まる。そのページには、デカデカとこう書かれていた。

 

〈デート回数による恋人との進行度〉

 

「……」

 

「伊井野ちゃん、どうしたの?」

 

「その、ちょっとコレが気になっちゃって……」

 

「えーと、何々……」

 

1〜2回〈恋人繋ぎ〉

3〜4回〈キス〉

5〜6回〈最後まで……〉

 

「へー、こんな感じなんだ……」

 

「……」

 

「伊井野ちゃんは、石上君とデートの約束とかしてるの?」

 

「う、うん……今度、動物園に行く予定なの。」

 

「へー、良いなぁ……そういえば、伊井野ちゃん達は今度のデートで何回目なの?」

 

「まだ一回……っ!?」

(アレ……ちょっと待って? えぇと、中等部の頃……石上と一緒に夏祭り行ったよね? アレは夏祭りデートと言えるんじゃ……?)

 

大仏こばちも同行していたので、厳密には違う。

 

「……」

(それから……高等部の文化祭にも行ったよね? アレも文化祭デートと言えるし……)

 

大仏こばち、小野寺麗の2名も同行していたので、厳密には違う。

 

「……ッ」

(そ、それからっ……この前風邪をひいた時、石上が私の家に来て看病してくれた……あ、あれはもう、お家デートと言えるんじゃっ!?)

 

言えない。

 

(それに、その次の日……石上に家へ来てもらって告白した時、石上……薬指にキスしてた!? じ、じゃあもう、完璧にこの雑誌の通りに進んでるって事になるんじゃっ!?)

 

ならない。

 

(それから、励ましのセリフを録音させてくれた日は何も無かったけど……コレが5回目。)

 

私はそこまで考えて、もう一度……開いたページを確認する。

 

5〜6回〈最後まで……〉

 

(つ、次が6回目って事は……思いっ切り射程内に入ってる!?)

 

「伊井野ちゃーん?」

 

「ど、どうしよう……私、次のデートで最後まで行っちゃうかもっ……」

 

「わー、ラブラブカップル凄い……」

 

「で、でも……付き合い始めて1ヶ月も経ってないのに、早過ぎるんじゃ……」

 

「んー? 人それぞれじゃない? それに、クリスマスも近いしリボンを自分に巻いて……プレゼントは私、とかするチャンスだよ!」

 

「わ、私、そんなエッチな子じゃないもん!」

 

………

 

〈生徒会室〉

 

「くちゅっ!」

 

「ん? 四宮、風邪でも引いたか?」

(くしゃみ可愛い……)

 

「いえ、そんな事はないと思いますけど……」

 

「エッフェル塔!!」サッ

 

「ふむ……最近は、特に寒くなって来ているからな……気を付けろよ?」

 

「……えぇ、そうですね。」

(会長に心配してもらっちゃった!)

 

「ダイヤモンド!!」ササッ

 

「……」

(さっきから、何やってんだ藤原(コイツ)……)

 

………

 

「そうと決まれば……伊井野ちゃん! 友達に教えてもらったお店があるから、今から行こ!」グイッ

 

「えっ、あ……ま、待ってぇ!」

 

「早く早く!」グイグイ

 

「ああぁっ……」

 

〈女性服専門店〉

 

大友さんに連れて来られたのは、女性向けの下着専門店だった……来店している他の人達は、大人の女性ばかりで……制服で来ている私達は、場違い感が凄い。

 

「フフフ、名付けて……勝負下着で勝負を決める作戦だよ!……という事で、とりあえずコレとか試着してみる?」

 

「ち、ちょっと待って!? あるべき場所に布が無いよ!? エッチ過ぎるんじゃっ!?」

 

「そうかなー? じゃあ、コレは?」

 

「薄い! 薄過ぎて下着としての責務を全く果たせてないよ!?」ガーンッ

 

「まぁまぁ、とりあえず色々見てみたら?」

 

「う、うん……」

 

「じゃ、また後でね!」

(可愛いなぁ、伊井野ちゃん。冗談に顔真っ赤にして……流石に高校生でこんなの履いてたら痴女だよー。)

 

………

 

「〜〜〜っ!?」プルプルッ

(か、買っちゃったー!? こ、こんな破廉恥なっ……で、でも、大友さんは割と普通みたいな言い方してたし、そこまで変じゃない筈……)

 

「やっほー! 伊井野ちゃん、どうだっ……」

 

大友さんは、私が胸に抱えた袋を見ると固まった。

 

「……え? もしかして、伊井野ちゃん……ホントに買ったの?」

 

「え……?」

 

「軽い冗談のつもりだったんだけど……」

 

「」

 

「……あ! でも、男子はエッチな女の子が好きって言うし……うん、大丈夫だよ!」

 

「」

 

僅かに身を引きながら、そう言った大友さんを見て……私は言葉を失った。

 

………

 

「フフフ……石上君、伊井野ちゃん……かなり気合いの入った下着買ったみたいだよ?」

 

「……だから、なんで言うの?」

 

念の為、件の下着が披露される様な事にはならなかった事を……此処に示しておく。

 


 

〈生徒会室〉

 

「こんちゃーす。あれ……会長1人ですか?」

 

「2年は今日三者面談だからな、俺は仕事しに寄っただけだ。」

 

「そうでしたか……」

(進路……か。伊井野は、弁護士か検察官を目指して、レベルの高い大学に行くんだろうな……)

 

ずっと一緒? ホントに? ずっと一緒に居てくれるの?

 

「……」

 

「……どうした、石上?」

 

「……会長、ちょっと聞いて良いですか?」

 

………

 

〈白銀家〉

 

「……」

 

「どうした、御行? 進路相談で言った事、後悔してるのか?」

 

「いや、別にそういうんじゃない。ただ……今日後輩と進路の話になってさ……」

 

会長は……好きな人と一緒に居る為に、自分の進路を決めるのを……どう思いますか?

 

「……アイツはまだ1年なのに、悩んでたみたいだったからさ……」

 

「……これからの人生を左右する事なんだ、悩んで当然だ。」

 

「父さんも……悩んだりしたのか?」

 

「そうだな……俺も母さんと大学で出逢う前は、仲の良い友人達と一緒に起業する夢を語り合ったもんだ……」

 

「へぇ、そうなの……?」

 

「その友人は、情報処理と経理の能力に長けていてな……俺の持ってる色んな資格を活かして、何でも屋をやる……なんて事を良く、あーだこーだと話し合ったもんだ……」

 

「……」

 

「呼ばれれば、何処へでも行って問題解決……デリバリーヘルプ、略してデリへ……」

 

「それ、意味違ぇから二度と使うなよ。」

(真面目に聞いて損した……)

 


 

〈中庭〉

 

会長と話をした次の日、僕は伊井野と一緒に中庭の隅に腰を下ろしていた。

 

「……伊井野はさ、将来は弁護士か検察官になるのか?」

 

「え……いきなりどうしたの?」

 

「あー、いや……昨日、2年は進路相談だっただろ? それで、ちょっと気になってさ……」

 

「そっか……うん、まだどっちを目指すかわからないし、何になりたいかもわからないけど……間違いを正せる仕事がしたいなって。」

 

「そっか……」

 

「……石上?」

 

「僕は……将来この仕事に就きたいとか、やりたい事とか特にないんだよ。でも伊井野は違う、間違いを正す仕事に就きたい……流石だよ。」

 

「ど、どうしたの……?」

 

「今はまだ良いけど……僕達も進路について、ちゃんと考えなきゃいけない時が来る。伊井野は……レベルの高い大学の法学部に進学するんだろうな……」

 

「っ! い、石上っ……」ギュッ

 

僕の言葉に伊井野は、不安そうな表情を浮かべて遠慮がちに袖を掴んだ。

 

会長は……好きな人と一緒に居る為に、自分の進路を決めるのを……どう思いますか?

 

「だから……」

 

……別にいいんじゃないか? 恋人と一緒の進学先を選ぶ……結構な事じゃないか。だがな……どんな選択肢を選ぼうと、自分が後悔する様な選択だけはしないようにするんだぞ。

 

「だから……僕も伊井野と同じ大学に行ける様に、頑張ってみるよ。」

 

「え……?」

 

「流石に学部は違う所になると思うけど……約束したからな。」

 

「約束……」

 

「ずっと一緒に居る。ずっと隣で支えて、守り続ける……って約束しただろ?」

 

「〜〜〜っ!! 石上ぃ!」ギュッ

 

感極まったのか、抱き着いて来た伊井野の頭を撫でて落ち着かせる……はぁ、伊井野が目指す大学に受かるのは大変だろうな……でも、あと2年間は時間があるし、何より……

 

「うぅ〜!」グリグリ

 

伊井野と一緒なら、きっと頑張れると思うから。

 




終わったよー(´∀`)
今だから言える事……今作を書き始めた当初は、原作で石上とつばめ先輩がどうなるかわかっていない状況だったのですが、願掛けの意味も込めて意図的につばめ√を排除したり、龍珠√は最初考えてた展開から大幅に変更したりしました。
龍珠√を書き始めた頃は、龍珠組の敵対勢力が出て来て、最後に石上が漢を見せる展開を考えていたんですが……石上がそれをやると、京都で七味片手に奮闘した会長がバカみたいじゃん……と思ってやめました。(;´д`)
正直な話……どこまで書けるかわからなかったし、大仏√以外は誰√を書くかも決めてなかったので、出すだけ出してそれ以降殆ど出番無しなキャラがいたりも……(つД`)ノ<圭ちゃんゴメン
√によって最低1人は、進行役やお助けキャラの様な人物を設置する事でなんとか無理のないストーリーになったと思います。
大仏こばち編→小野寺麗
龍珠桃編→紀かれん、巨瀬エリカ
伊井野ミコ編→大友京子
って感じですね……何はともあれ、完結させる事が出来て良かったです。
ありがとうございました!!

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