石上優はやり直す   作:石神

144 / 210
藤の千花編です。
チカではなく、センカです(゚ω゚)
正気を疑われるであろう藤原√開幕です。
……フジワラッテニンキアッタンダナー。


藤原千花は贈りたい

〈生徒会室〉

 

夏休みが終わり、生徒会室にはいつものメンバーが揃っていた。4人は机の上に広げられたカードとサイコロを使い、とあるゲームに興じている。そう《新ハッピーライフゲーム》である。局面は中盤、石上が結婚マスを踏み結婚相手を選ぶ場面へと進んでいた。

 

「むふふ、石上くんは誰を選ぶんですかー?」

 

「んー、じゃあ藤原先輩で。」

 

「っ!? へ、へー? 石上くんは、私みたいな女子がタイプなんですか? 普段の態度は照れ隠しだったんですかー?」ニマニマ

 

「藤原……」

(ここぞとばかりに調子乗るな……)

 

「藤原さん……」

(隙あらば煽るわね、この子……)

 

「変な言い方しないで下さい、違いますよ。藤原先輩を選んだのは、金目当てです。」

 

「」

 

「藤原先輩と踏んだマスの効果を共有出来るんですから、効率良く金が稼げるでしょう?」

 

「石上、滅茶苦茶ドライだな……」

(高校生なんだから、もう少し藤原の事を意識しても良いと思うが……)

 

「……効率は大事よね。」

(ホント、石上君って藤原さんに一切靡かないわね……)

 

「石上くん! 愛の無い家庭は、誰も幸せになりませんよ!?」

 

「いや、ゲームですし……」

 

「この冷徹人間! 根暗! DV男!」

 

「落ち着け、藤原……次は俺だな。」コロッ

 

「……あ、会長も結婚マスですね。」

 

「ッ!?」

(か、会長が結婚っ!?)

 

「結婚相手はこの中から選んで下さい。」

 

「俺も選択式なのか……」

 

1、四宮かぐや

2、藤原千花

 

「少ないな、おいっ!? しかも、藤原は石上と結婚してるから実質……四宮一択じゃないか。」

(し、四宮と結婚!? ……石上が藤原をもらってくれて良かった!)

 

「っ!」

(か、会長と結婚!? 石上君、よくぞ藤原さんをもらってくれたわ!)

 

最早、不良物件扱いである。

 

「え? 別に会長は私とも結婚出来ますよ? ただその場合は、会長が石上くんに慰謝料払っての略奪愛になりますけど……」

 

「無駄にドロドロした感じにするな! ま、まぁ不義を働く訳にはいかないよな?」

 

「え、えぇ、石上君は可愛い後輩ですしね。」

 

「……あれ? 四宮先輩は、男性不信カードを持ってるから結婚出来ないんじゃないですか?」

 

「」

 

「」

 

「あ、でも……既に結婚しているプレイヤーが居れば、カードの効果は無効と書いてますね。」

 

「コレはハッピーライフゲームですよ? 不幸な人なんて出す筈ないじゃないですかー。」

 

「そうですね……」

(前やった時は、会長……一瞬で2億近い借金出来てたんだけど……)

 

「じゃー、かぐやさんと会長は結婚しましたから、踏んだマスの効果は共有ですからね。」

 

「あぁ、四宮……よろしく頼む。」

(四宮と結婚!)

 

「えぇ、会長も……よろしくお願いします。」

(会長と結婚!)

 

「次は私ですね……あ、出産マスですね、子供が1人出来ました!」

 

「ええぇ……?」ヒキッ

 

「何で嫌そうな顔してるんですか! 私と石上くんの愛の結晶ですよ!?」

 

「その言い方は……やめて欲しいですね。」

 

「こういう! こういう人がDVとか、ネグレクトとかやらかすんですよ!!」

 

「人聞きの悪い事を言わないで下さい。」

 

30分後……

 

「……という訳で、ハッピーライフゲームの勝者はかぐやさんでしたー! どうでした、皆さん! TG部が作ったゲームは?」

 

「えぇ、それなりに楽しかったですよ?」

(会長……9人も子供を産ませるなんて、なんて欲張りな人なのかしら。)

 

「あぁ、中々面白かったぞ。」

(全く、9人も子供が出来るなんて……四宮もとんだ欲しがり屋さんだな。)

 

「とりあえず、イベントの中身とカードの効果に差異があるので、その見直しを徹底する様に下さい。イベント内容は藤原先輩が考えたらしいですが、他の部員の意見も聞くべきです。それと、実在する人間の名前を使うのは、色々問題が生じるので控えて下さい。あと即死マスは、1回休みやスタート地点に戻るなどに変更した方が良いです。以上の点を踏まえた上で、デバッグプレイをキチンとして……」

 

「はい……ハイ…チッ……ハイ……」

 

本日の勝敗、藤原の敗北

ガチのダメ出しをされた為。

 


 

〈生徒会室〉

 

「こんにちはー!」

 

「どもーっす。」

 

「あれ? 石上くんだけ?」

 

「会長は職員室、四宮先輩は弓道部へ顔出しに行きましたよ。」

 

「へー、石上くんは何してるんですか?」

 

「……今月で生徒会の任期も終わるので、不必要な書類とデータの処理です。」

 

「……そう、ですか。」

 

「……藤原先輩?」

 

「……なんでもないですよー。」

 

藤原先輩から何やら気落ちした様な空気が漂って来る。原因は先程僕が口にした、生徒会の任期が終わるという発言の所為だろう。前回の生徒会解散の日……藤原先輩は、生徒会室を出ると同時に涙を流した。藤原先輩にも、僕とはまた違った生徒会に対する想い入れがあったのだろう……普段から騒がしい人が静かだと、調子狂うな。藤原先輩へと掛ける言葉を思案していると、丁度良い話題が思い浮かんだ。

 

「会長……明日誕生日らしいですね?」

 

「ええっ!? 石上くん、それ本当!?」

 

「はい、9月9日ですよね。」

 

「明日じゃないですか!」

 

「だから、それさっき言いましたよ。」

 

「全然知らなかったんですけど!?」

 

「……1年間同じ生徒会に居て、それってどうなんですか?」

 

「ま、マズイですよ!? このままじゃ私……滅茶苦茶冷たい人みたいじゃないですか!?」

 

「みたいではなく、正にそうだと思いますよ。」

 

「ど、どうしましょう……此処でちゃんとしたプレゼントを用意しとかないと、私の誕生日プレゼントにも影響が……」

 

「強欲過ぎません? 悩みの焦点そこですか?」

 

「……因みに石上くんは、何か誕生日プレゼントを用意してるんですか?」

 

「え? はい。会長は書類仕事も多いので、万年筆を……」

 

「滅茶苦茶ちゃんとしたヤツ!」

 

「普段からお世話になってる人なんですから、これくらい当然ですよ。」

 

「石上くん! ちょっと付き合って下さい!」グイ

 

「え? どっか行くんですか?」

 

「会長のプレゼントを買いに行くに決まってるでしょ!」

 

「なんで僕も……」

 

「石上くんがちゃんとしたヤツを会長にプレゼントする所為で、私のプレゼントのハードルが上がっちゃってるんですから、責任取ってプレゼント選びに付き合うべきじゃないですか!?」

 

「えー……」

(ダルぅ……)

 

「ないですか!?」

 

「わかりました、行きますよ……」

 

「そうと決まれば、早く行きますよ!」グイッ

 

「はいはい。」

 


 

〈ショッピングセンター〉

 

会長への誕生日プレゼントを探す為、僕と藤原先輩は近場のショッピングセンターへと来ていた。紳士服や男性向けの小物を扱う店舗に入ると、早速会長へ渡すプレゼントの物色を始める。

 

「あ、石上くん。この定期入れとかどうですか?」

 

「うーん、発想は悪くないですけど……会長は自転車通学なので、あまり使い道は無いかもしれませんね。」

 

「むむっ、確かに……うーん、じゃあ何にしましょうかねー。」

 

藤原先輩は唸りながら、商品棚に並べられた小物を見つめている……まぁ、自分で選びたいだろうし、此処なら変な物なんて無いから大丈夫か。

 

「あっ! コレなんかどうですか? 」

 

「へぇ、キーケースですか。良いと思いますよ、値段も手頃でデザインも良いですし……」

 

「ふふふ、私のセンスが光っちゃいましたね!」

 

……そのセンスを僕への誕生日プレゼントにも活かして欲しかった。

 

前回の石上、藤原の誕生日……藤原から石上への誕生日プレゼントは、ブタさんの貯金箱である。

 


 

〈次の日〉

 

「会長、コレ誕生日プレゼントです!」

 

「ほう、知っていてくれたのか? ありがとう、藤原……有り難く頂くよ。」

 

「普段からお世話になってる人の誕生日くらい、知ってて当然ですよー。」

 

「……」ジッー

(面の皮厚いな、この人……)

 

藤原を見る石上の眼は冷たかった。

 

「こんにちは。」ガチャッ

 

「こんちゃーす。」

 

「かぐやさん、見て下さい。今日の私、リボンの位置違うんですよー。」

 

「ふふ、本当ね」ポヤポヤ

(ケーキも準備出来てるし、プレゼントも用意した……会長ったら、泣いて喜ぶに違いないわ!)

 

頭脳(内)戦開廷まで、残り30分……

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。