17巻のカバー下にある心理テストをやれば、殆どの人間が深層心理では藤原の事が好きなのは明らか……っ!
何回やっても藤原に行き着いてしまう……実は藤原が1番好きだったのでは? と気付くフジワラーが居るとか居ないとか……
次の日の放課後、かぐやと藤原が生徒会室へと向かっていた時の事である。
「……そういえば、昨日の会長の誕生日に扇子を贈ったのですが……」
(ふふ、会長の誕生日を知らない藤原さんに、この情報をリークすれば……)
「扇子ですか、良いですね! 私は、キーケースを贈りましたよ!」
「っ!?」
(えぇっ!? ど、どういう事!?)
「やっぱり同じ生徒会の仲間ですから、誕生日にプレゼントを贈るのは当然ですよねー。」
さらっと自分の誕生日にプレゼントを要求しているあたり、藤原は面の皮が厚かった。
「ふ、藤原さん? どうして、会長の誕生日を?」
(おかしい……つい先日まで、藤原さんは会長の誕生日を知らなかった筈なのに……会長が自分から教えたとは思えませんし。)
「あー、実は一昨日の放課後に石上くんが教えてくれまして……急いで買いに行ったんですよ。」
「あら、そうなの……良かったわね。」
(石上くーん! なんてタイミングで教えてるの!?くっ、計画の立て直しが必要っ……いえ、会長次第ですが、まだ修正は出来ます!)
〈生徒会室〉
「こんにちは。」ガチャッ
「こんにちはー!」
「お、おう。」
(しかし、何故昨日……四宮は1人で俺の誕生日を祝った? 普通なら藤原や石上を巻き込んで皆で祝う筈だ。事実、藤原と石上は俺の誕生日を知っていてプレゼントまでしてくれた……にも関わらず、四宮は2人が帰るまで動かなかった。つまり、藤原と石上の2人と四宮の間には、俺の誕生日に関する情報共有がされていなかった?)
「あら、会長……それは?」
「ん? あぁ、コレは藤原と石上からの誕生日プレゼントでな……装飾も使い勝手も良いから、とても重宝しているよ。」
(以上の点から察するに、四宮は1人で俺の誕生日を祝いたかったという事か? しかし、異性の誕生日を2人っきりで祝う……その意味を四宮が理解してないとは思えないし、あの四宮がそんなストレートな行動を取るなんて上手い話は無いだろうし……)
あった。
「えへへー、気に入ってくれたみたいで何よりです!」
「あぁ……」パタパタ
(しかし、四宮はプレゼントを贈りケーキまで用意していてくれた……その事実を公にすれば、四宮を追い詰める事が出来るだろう。しかし……四宮の思惑はどうであれ、善意からの行いである事に間違いはない。)
「あ、会長それ……」
「あぁ、コレは友人からの贈り物で……」
(ならば、善意に付け込み四宮を追い詰めるのは、あまりにも不義理というモノ。それに誕生日プレゼントにここまでの物を贈り、ケーキまで用意する位だ。四宮が告白して来るのも時間の問題……四宮から貰った事は伏せる、今回はそれでいいだろう。)
「友人……友人、そうですか……ふうん?」
「藤原……?」
(なんだ? 妙な違和感が……)
白銀の考えは、かぐやの立場に立って考えた場合間違ってはいない。誰だって異性の誕生日を2人っきりで祝う事には、多少の羞恥心を感じるし、秘密にしたいモノである。他者の心を思い遣り、善意に付け込む事を良しとしない……白銀御行とはそういう男である。しかし……
「……会長は、かぐやさんの事が好きなんですか?」
それはあくまでも白銀御行の考えであり、信条である。
「っ!!? ななな何を馬鹿な事をををっ!?」
「だってそうでしょ!? 私と石上くんのプレゼントは誰から貰ったか隠さなかったのに、どうしてかぐやさんからのプレゼントだけ友人からの贈り物……なんて濁した言い方したんですか!? どうして、その扇子をかぐやさんから貰ったって隠そうとしたんですか!? かぐやさんの事が好きだから、プレゼントの事は内緒にして2人だけの秘密にしたかったって事なんでしょー!? 誕生日をかぐやさんにだけ教えてたのも、かぐやさんにだけ祝って欲しかったからじゃないんですか!?」
藤原の立場からすれば、自分達からのプレゼントの出所は喋ったのに、かぐやからのプレゼントについては誤魔化した……そこには、何かしらの下心があるのではないかと邪推するのは必然! 異性に対しての下心……即ち、好意である。
「……」ニヤッ
(ふふ、会長? もし貴方が私からの贈り物の出所を明らかにしていれば、こんな事にはならなかったんですよ? 素直に私から貰ったと言えば、それ以上私の攻めは続かなかった……しかし、会長は扇子の出所を秘密にしようとした。扇子をプレゼントしたのが私だと知っている藤原さんに、その誤魔化し方は悪手。そして、その誤魔化しに隠れた意味を……普段から恋愛事に飢えてる藤原さんが見逃す筈がありません!)
白銀が扇子の出所を喋る確率は50%! 白銀はババを引き、かぐやは賭けに勝ったのである。
「最初からかぐやさんの事が好きだって教えてくれてたら、私だって応援したのに!!」
(こ、コレはマズイ!!)
「……なるほど、藤原の言いたい事はわかった。だが、そういう話になるのなら……それは四宮の方だろう?」
「え、どういう意味ですか?」
「四宮は一年前、生徒会名簿を見て俺の誕生日を知ったに過ぎず、俺が自発的に教えた訳ではない。にも関わらず、昨日四宮は態々藤原と石上が帰るのを待ってから俺にプレゼントを贈った……ケーキまで用意してな。その行動の理由は、さっき藤原が言ったモノだろう。」パタパタ
「じ、じゃあ……かぐやさんの方が会長の誕生日を1人で祝いたかったって事!?」
「そういう事だ。」パタパタ
「……」
(会長……中々上手い切り返しです。会長、扇子使ってくれてる!でも、会長……そのエピソードは一年も前のモノ、そんな昔の事を覚えてる時点でちゃんと使ってくれてる……うれしい!)
「か、かぐやさん、そうなんですか?」
「」
(あ、あれ……? 何を言えば良いんでしたっけ!? 会長、扇子使ってくれてありがとう?……違う!! 絶対それじゃない! )
「かぐやさん、答えて下さい! もしかして、かぐやさんは会長の事が好きなんですか!?」
「え、えぇとっ……」アワアワ
(ど、どうしよう!? このままじゃっ……)
「かぐやさん!!」
「どうしたんですか、藤原先輩……廊下まで声が聞こえてましたよ?」ガチャッ
「石上くん、聞いて下さいよ! かぐやさん……会長の誕生日を2人っきりで祝ったんですよ!」
「へぇ、そうなんですか?」
「え、えぇ、まぁ……」
「っという事はですよ!? かぐやさんは会長の事が好きって事じゃないですか!?」
「えぇ……誕生日祝うだけで、なんでそうなるんですか?」
「だって、異性の誕生日を2人っきりでなんて……そうとしか思えませんよ!」
「え……じゃあ藤原先輩は、自分の誕生日に男子がお祝いしたら……あ、この人は私の事好きなんだなって思うんですか? 藤原先輩、ちょっとそれは……自意識過剰というか、自惚れが酷いというか……そういうトコですよ?」
「なんで私を攻撃するの!? でも、かぐやさんが会長の誕生日を祝ったのは事実でしょ!」
「藤原先輩の考え過ぎですって。」
「そんな事ありません! このラブ探偵の目は誤魔化せ……」
「だいたい、藤原先輩……さっきからギャイギャイ言ってますけど、一昨日まで会長の誕生日知らなかったじゃないですか。」
「ちょっ、石上くん!? 」
「藤原マジか、地味にショックなんだが……」
「しかも、プレゼントした理由が……自分の誕生日の時に貰うプレゼントに影響が出るからって言ってましたよ?」
「うわ……」ヒキッ
「えぇ……」ヒキッ
「なんで石上くんは全部言っちゃうの!?……ち、違いますよ、会長!? そんな強欲的理由な訳ないじゃないですか! でも会長、私の誕生日プレゼントはちゃんとした物下さいね!」
「欲ダダ漏れじゃねーか、藤原……」
「藤原さん……はしたないわよ。」
(有耶無耶になってくれて助かったわ……)
「もう! 石上くんのバカ! ボケナス!! チクリ魔!!!」
「いや、口止めとかなかったじゃないですか。」
「私の良きに計らうべきでしょー!?」
「何処の将軍ですか。」
………
「……石上くん、よくやったわ。」ポンッ
「え? はぁ、どうも?」
本日の勝敗、引き分け
有耶無耶になった為。