これからは投稿頻度が落ちますが、少なくとも週に一度は投稿します。_:(´ཀ`」 ∠):
〈9月某日〉
その日、生徒会室には1人の少女の悲痛な叫びが響き渡っていた。
〈ピシャアアアアアッ!!〉
「うへあああああ!!? おヘソ取られちゃいますううぅっ!!?」
秀知院学園が居を構える東京都には現在……激しい雷雨が降り注いでおり、台風と錯覚する程の大量の雨とけたたましい雷音が轟いていた。
「……相変わらず雷が苦手か。」
「1学期もありましたね、こんな事……」
「怖いぃっ……怖いですぅ……」エグエグッ
「帰る頃には止んでるといいが……」
「そうですね……」
「私おヘソ隠してるので、かぐやさんまた耳塞いで下さい……」
「……ごめんなさい、藤原さん。私、今から少し弓道部に顔を出しに行かないといけなくて……」
「えええっ!?」ガーンッ
「俺も部活連の会議があるから、そろそろ行かなければならないな。」
「会長も!?」ガーンッ
「じゃあ藤原さん、少し外しますね。」
「俺もそろそろ行くか。」
「え、ええぇっ!?……か、かぐやさん、会長……ちょっと待っ……!」
〈ゴロゴロ……〉〈ピシャアアアアアッ!!〉
「うえあああああっ!?」ビクッ
………
「うわ、コレ帰る時止んでるかな……」
生徒会室へと向かう道中……窓越しに鳴り響く雷と流れ落ちる雨を見ながらそう言葉を洩らす。最悪、タクシーで帰る事になるだろう……僕はほんの少しウンザリとした気分を感じながら、生徒会室のドアに手を掛けた。
「うぅ…怖い、怖いですぅ……!」エグエグッ
鳴り続く雷の音から少しでも逃げる為、私はソファの後ろに蹲る様に隠れました。両手で耳を塞ぎたいけど……それをするとおヘソを守れません。私は仕方なく片手でお腹を隠し、残った方の手で片耳を塞いで耐え続けます……
〈ゴロゴロ……〉
「ひっ!?」ビクッ
大きな雷音が鳴り響く前兆を察知して、思わず体が固まりました。
「うぅっ……雷やだぁっ……怖いっ……」
〈ピシャアアアアアッ!!!〉
「うあああああっ!?」
雷の轟音とそれによって生まれた振動が……私の鼓膜、体、心へと襲い掛かります。恐怖のあまり、ポロポロと流れ出た涙が……スカートを濡らし続けています……
「グシュッ…ううぅっ……!」
1人だと余計に怖さを感じてしまいます……私は無意識に、まるで助けを求める様に……生徒会の皆の名前を呟いていました。
「かぐやさん、会長ぉ……石上くん……!」
「……藤原先輩、大丈夫ですか?」
その言葉と共に、カポッと頭に何かが被せられました。顔を上げると其処には、少し困った顔をした石上くんが居ました。
「石上くん……?」
「……それ、使って良いですよ。」
石上くんの言葉を聞き、頭にスっと手を伸ばすと被せられた物が何かを確認します。
「コレ……ヘッドホン?」
「仕方ないから貸してあげますよ。雷の音、苦手みたいですし……」
「石上くん……!」
普段は見られない……石上くんの優しさに感動している私を余所に、石上くんはスマホを操作してヘッドホンへと音楽を流しました……普段からそういった類のモノに触れる機会の無い私でもわかりました。甘ったるく感じる歌声、背筋がゾワゾワする歌詞、テレビの歌番組じゃ殆ど聴く事が無いメロディ、この流れて来る音楽は……
〈萌え萌えきゅんきゅん!〉〈萌え萌えキュンキュン!〉〈あなたのハートに剛速きゅん!〉
「」
(アニソンだあああああっ!!?)
「藤原先輩、音量は大丈夫ですか?」
「音量は問題じゃありません! 選曲!! どうしてコレをチョイスしたの!?」
「いや、生半可なインパクトじゃ雷の音は誤魔化せないと思って……」
「確かにインパクトは十分でしたけど! 普通こういう時ってもっとこう……あるでしょ!?」
「藤原先輩はホント、ワガママですね……」
呆れた様な言い方で石上くんは、やれやれと首を振って答えます。
「なんで私が非常識みたいな感じで言うの!? コレに関しては、石上くんがオカシイでしょ!?」
「……藤原先輩にオカシイって言われると、ちくわに中身のない奴は嫌いだって言われた気分になりますね。」
「どういう意味ですか、こらー!!」
藤原千花は気付かない……石上と話をしているうちに涙は引っ込み、雷の音も気にならなくなっていた事に。
「一応……女子向けのアニソンメドレーとかもありますけど、聴きます?」
「アニソンから離れて下さい!!」ギャイギャイ
本日の勝敗、藤原の勝利
石上とギャイギャイやってるうちに雷が止んだ為。
〈生徒会室〉
「十五夜!! 月見するぞー!! フッフー!!」
9月も中旬へと差し掛かり、生徒会解散まで2週間を切った。生徒会メンバーは白銀の提案で業務終了後、屋上での月見を敢行する事と相成った。
〈屋上〉
「おっ餅ー! おっ餅ー!! モッチリモチロン、お餅ー♪」
鍋に丸めた餅を投入しながら、藤原先輩は変な歌を歌っている。その姿を視界に入れながら、僕は先程の藤原先輩の発言を思い出す。
私は花より団子、月よりお餅です!
「色気より食い気か……」
(藤原先輩らしいけど……)
「え? 石上くん、何か言いました?」
「いえ、何も……」
「ふーん……あ、流れ星!」
「あ、ホントですね。」
「世界が平和になりますように、世界が平和になりますように、世界が……あー! 間に合いませんでした……」
「願い事のスケールが大きい……」
「石上くん、私……世界の平和を脅かす魔王になっちゃいました……」
「もしかして、3回言えなかったからですか? 藤原先輩は精々、下っ端の構成員とかでしょ……魔王とか烏滸がましいです。」
「そんな言い方ある!?」ガビーン
「それにですね、魔王っていうのは……人畜無害そうなかよわい少女の様に見えて其の実……内面は鬼みたいに怖い人の事を言うんですよ?」
「……はい?」
僕の言葉に、藤原先輩が?マークを浮かべた頃……ブルブルとポケットの中でスマホが振動した。取り出して画面を見ると、非通知で電話が掛かって来ている……普段なら非通知で電話が掛かって来ても無視するのだが、その時はそんな気にならず……通話ボタンをタップしていた。
「はい、もしもし?」
〈……石上君。〉
「かっ、かしっ……!?」
電話で聞こえる声は本人ではなく、機械が似た音を作り出していると聞いた事がある……いっそのこと、機械のエラーで偶々この声になっていたら良いのにと、無意味な願望を抱きながら耳へと届く音声に意識を集中する。
〈石上君……今、私の悪口言わなかった?〉
「その様な事あろうはずがございません!」
〈ふーん、じゃあいいや……ごめんね、いきなり電話して。〉
「い、いえ、それはいいんですけど……あの、どうして僕の番号知って……」
〈フフ……秘密。〉プッ、ツーツー
「」
(怖あああっ!? ヤバい、ホントビビった……ついこの前、夏休みにマキ先輩と会う機会が減ったとかで情緒不安定になっててヤバかったのに……え? 盗聴器とか仕掛けられてないよね?)
「……石上くん、何やってるんですか?」
服を捲ったり、ポケットに手を出し入れしているのを訝しんだ藤原先輩に話し掛けられる。
「いや、盗聴器とか付いてないかなと……」
「……なんで盗聴器?」
本日の勝敗、石上の敗北
暫くの間、盗聴器の存在に疑心暗鬼になっていた為。