個人的に藤原だけは、ボーボボの世界に行ってもやっていけると思ってる(=゚ω゚)ノ
〈ファミレス〉
「「「「カンパーイ!」」」」
会長が木箱に飾緒を仕舞い終わると、コップを掲げて乾杯の音頭をとる。今日で第67期生徒会は、その任期を終えた……今は打ち上げの為、ファミレスで想い出話に花を咲かせている最中だ。
「しかし……俺としては、石上なら任せても大丈夫と思ってたんだがな……」
「そうですね、私もそう思います。」
「そうですよ! もし石上くんが生徒会長に立候補して、奇跡的に当選したら……書記としてお手伝いしてあげても良いんですよ?」
「ハハハ、僕には向いてないっすよ。あくまでサポートがメインなんで……」
「……まぁ、無理強いする訳にもいかないか。」
「すいません、だけど……」
「ん?」
「あ、いえ……なんでもないです。」
「そうか?」
危なかった……つい、また会長がやるでしょ? と言う所だった。
「……石上くんがやらないなら、私が立候補して生徒会長になっちゃいますよ?」
「ハハハハハ!」パンパンパンッ
藤原先輩の発言に手を叩きながら爆笑する。
「何がおかしいんですか!? ブン殴りますよ!?」
………
数日前……
「かれん……私、出馬してみようと思うの。」スッ
「エリカ……冗談ですわよね?」
元生徒会のヤベー奴とマスメディア部のヤベー奴、どちらが票を取れるか興味深い所である。
………
「まぁ落ち着け藤原。無礼講といこうじゃないか、今日で最後だしな。」
「最後……」
「……藤原さん?」
「……藤原? どうした?」
僅かに顔を曇らせた藤原先輩に、会長は問い掛ける。
「いえ、なんでもないです! あ、そういえば私……こういうの作って来たんですよ!」
藤原先輩は……何かを誤魔化す様にそう言いながら、トンッと卓上に30㌢四方の画用紙を置いた。
〈第67棋生徒会お疲れ会〉
「ははは、ご苦労な事だな藤わ……ん?」
「……あら?」
「……藤原先輩、キの漢字が違います。」
「……あっ!?」
「藤原先輩……書記なのにそのミスはヤバくないっすか? コレホント一生イジりますからね。」
「ま、間違いは誰にだってあるでしょっ!? それとも石上くんは、現国のテストはいつも100点なんですか!? 一切の漢字間違いはしない完璧人間なんですか!」
「少なくとも、小学生レベルのミスはしませんね。」
「もー! 石上くん、全然後輩感ないんですけど!」
「後輩感ってなんですか?」
「後輩らしく、先輩を敬ってる感の事です!」
「微妙にフワッとした定義だな……」
「石上君は、普通に後輩らしくしていると思いますけど……」
「かぐやさん、騙されたらダメですよ! 上げて落とす作戦かもしれません! 」
「えぇ……」
「いや、上げて落とす意味ないだろ。」
「するにしても、藤原先輩にしかしませんよ。」
「私にもしないで下さい!」ギャイギャイ
そうして時間は過ぎて行った……
「じゃあ藤原先輩、お疲れ様でした。」
駅で会長と四宮先輩の2人と別れた後、30分もしないうちに藤原先輩の最寄駅に到着した。お疲れ様という労いの言葉に、藤原先輩は黙って此方を見つめている。
「……」
「……藤原先輩?」
「……石上くんは、寂しくないんですか?」
「……どういう意味です?」
「だ、だって、そんなアッサリお疲れ様とか言うし……そりゃ石上くんとは半年くらいの付き合いしかなかったですけど、もっとこう……」
藤原先輩はモジモジと指をイジり、少しだけ恨めしそうな眼で此方を見ながらそう洩らした。
「……大丈夫ですよ。」
「え?」
「また、皆で集まる事になると思いますよ……だからさっきのは、また明日って意味です。」
「そう、ですか……そうですよね! 生徒会がなくたって、また集まれば良いんですよね!」
「……そうですよ。それに……しんみりするなんて、藤原先輩らしくないですよ?」
(……会長が生徒会長に立候補するから、また直ぐに集まる事になるって意味なんだけど……まぁいいか。それを言ったとしても、どうして知ってるんだって話になるし……)
「どういう意味ですか! 私だってしんみりする事くらいあります!!」
「あぁ、今日とか生徒会室出た瞬間号泣してましたもんね。」
「あ、あれはっ……心の汗です!!」
「……どっかで聞いた様なフレーズですね。」
「もう! 相変わらず石上くんは、上級生に対する礼儀がなってませんね。半年程度じゃ、石上くんを更生させるのは無理だったみたいですね……」
藤原先輩は、やれやれと首を振りながらそう言った。
「人を問題児みたいな言い方しないで下さい。あと、何度も言いますが舐めた態度取ってるのは藤原先輩に対してだけですよ。」
「だからなんで!? 割と普通に接して来るみゆき君でもここまでじゃないよ!?」
「なんででしょうねぇ……」
「もう! 石上くんのアホ! 礼儀知らず! 不良優等生!! もう帰ります!」
「はい、気を付けて。」
くるっと藤原先輩は背を向けて歩き出すと……
「……石上くん!」
「はい?」
直ぐに立ち止まり、此方を振り向いた。
「また明日ね!!」
手を上げてブンブンと振る藤原先輩に……
「はい、また明日。」
と、軽く手を振って返し帰路についた。
〈藤原家〉
「ただいま帰りましたー。」
「今日は遅かったね、姉様。」
「生徒会の打ち上げをしてたんですよ。」
「そういえば、今日で生徒会の任期終わりだっけ? ねぇ、姉様……生徒会は楽しかった?」
「もちろんです! 1年があっという間でした!」
「ふーん……? 私も生徒会入ってるけど、そこまでじゃないなぁ……」
「まぁ、会長に生徒会にスカウトされた最初の頃は、私に務まるか不安でしたし、仲の悪かった会長とかぐやさんの仲を取り持ったりと、大変な事もありましたけど……少しすると、会長とかぐやさんも普通に話す様になりましたし、2年生になって会長が石上くんをスカウトして来て……皆でゲームしたりっ…花火……見たり…グスッ……」
「姉様って、意外と涙脆いんだよねぇ。」ナデナデ
「だって、寂しいですよぉっ……!」エグエグ
「……別に、もう二度と会えなくなる訳でもないのにねぇ。」
「それとこれとは別なんですぅっ……!」
「ハイハイ。」
後日、白銀から生徒会長に立候補する事を聞き、有頂天になる藤原であった。
〈空き教室〉
「……とりあえず、今日はこんな所か。」
「そうですねー。」
「もう少しすれば、色々任せる仕事も増えて来ると思うから……藤原、その時は頼んだぞ。」
「はい、任せて下さい! まぁ……私は応援演説任されないので、今は暇ですしねー。」
「だから悪かったって、拗ねるなよ……もうこんな時間か、そろそろ帰らないといけないな。」
(藤原……よくもまぁ自分で自分の事、純院の生徒を取り込める程の人気とカリスマの持ち主って言えるよな。この自信は見習いたい所だが……)
「……みゆき君!」
「ん、どうした藤原?」
「えーと……そ、その、石上くんの事は、誘わないのかなって……」モジモジ
「フッ……心配するな、石上には既に話を通している。今は別件で準備を進めてもらっているから、別行動なだけだ。」
「っ! そうでしたか、なら良かったです!」ニパー
「……」
「みゆき君? どうしました?」
「……いや、なんでもない。」
(まさか……な。)