石上優はやり直す   作:石神

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藤原千花は認めない

〈中庭〉

 

生徒会長選挙期間に入り、白銀御行(会長)陣営として活動し始めてから数日が経過したある日……会長のPR動画に必要な資料もある程度集まったし……あとは編集作業に取り掛かるだけだ。

 

「うーん……?」

 

中庭を歩いていると、うーんと唸りながらキョロキョロと周りを見渡して歩く藤原先輩と遭遇した。

 

「あ、石上くん。」

 

「藤原先輩、何か探してるんですか?」

 

「はい、選択授業の課題で身近なモノを被写体に絵を描くっていうのが出たんですけど、丁度いい被写体が見つからないんですよね。」

 

「へぇ、大変ですね……」

 

「そうなんですよぉ……はぁ、もう石上くんで良いので被写体になってくれますか?」

 

「妥協を前面に押し出した言い方されて、了承すると思います?」

 

「もう悩み過ぎて何を描けばいいのかわかんなくなっちゃって……これ以上は面倒臭いし、もう石上くんで良いかなって。」

 

「少しは憚った言い方をして下さい。はぁ、わかりましたよ……パパッと描いて下さいね?」

 

「任せて下さい! これでも絵には自信があるんです!!」

 

………

 

〈数日前、初の選択美術授業〉

 

「わー! 早坂さん、絵上手ですね!」

 

「それ程でもないし〜! 書記ちゃんも描けたの? 見せて見せて!」

 

「……じゃーん!!」ササッ

 

「うーっわ……」

 

自身を被写体として描かれた早坂はこう思ったそうな……

 

「ピカソかと思ったし。」

 

………

 

「よし! 出来ました!!」

 

「……一応、見せてもらって良いですか?」

 

「良いですよー……じゃーん!」ササッ

 

「うーっわ……」

(ピカソ感が凄い……)

 

「えへへー!」ニパー

 

「……ハハハ。」

(まぁいいか……)

 

楽しそうにスケッチブックを此方に向けて笑う藤原先輩を見た所為か、気付けば僕も釣られて笑みが溢れていた。全く藤原先輩は……でも、この人は悩み無くヘラヘラ笑ってるのが1番らしいよな。

 

「これはA評価取ったでしょう!」ドヤァ

 

「それはないっすね。」

 

「えぇっ!?」ガビーン

 


 

〈秀知院校舎内〉

 

早朝の登校時、教室を目指して歩いている時の事だ。廊下を歩いていると、目の前に2つの見慣れた後ろ姿が視界に入った。

 

「会長、藤原先輩、おはざーす。」

 

僕の軽い挨拶に藤原先輩が勢い良く振り向いた。

 

「石上くん! 会長が大変なんです!!」

 

「……はい?」

 

近寄って腕を掴みながら藤原先輩は、そんな事を言う。クルッと会長へ視線を移すと、キラッキラッな眼をした会長が視界に飛び込んで来た。

 

「……おう、石上。」

 

「会長、教会で呪い解いて来たんですか?」

 

「いや、元から呪われてねぇから。」

 

「でも、普段の眼光(強)状態じゃないと……やっぱり違和感ありますね。」

 

「普段の眼がまるで、状態異常みたいな言い方すんな。」

 

「でも真面目な話、その状態なら滅茶苦茶モテるでしょうね。」

 

「……マジで?」

 

「マジっす。普段の威圧感が皆無ですし、モテ期到来っすね。藤原先輩もそう思いません?」

 

「うーん……チェンジで!!」

 

「おいコラ。」

 

「まぁ藤原先輩は、異性に対する趣味趣向も特殊っぽいですからアテにするだけ無駄でしたか……」

 

「も!? 石上くん、もってどういう意味!?」

 

「そういう意味です。」

 

「ギャイギャイギャイギャイ!!」

 

「なんで急にラリってるんですか?」

 

「ラリってません!!」ギャイギャイ

 

「……モテ期か。」

(そうか、普段の威圧感が無いのか……あれ? だったら、四宮落とせるんじゃね!?)

 

その為に起こす行動が無駄になる事を……白銀はまだ知らない。

 


 

選挙期間に入り1週間が経過した。白銀御行と対抗馬である伊井野ミコとの顔合わせも無事終了……場面はとある姉妹の遣り取りへと移行する。

 

〈藤原家〉

 

「……それで石上くんが私の事、裏切リボンとか言ったんですよ!? 石上くんは、先輩に対する敬意が一切無い子なんです!!」バンバンッ

 

「いや……話聞く限り、実際に姉様裏切ってるし……」

 

「別に裏切ってません! ちょっと寝返っただけです!!」

 

人はそれを裏切りという。

 

「姉様ってさー、普段から石上先輩の事色々言ってるけど……実は好きだったりして?」ニマニマ

 

「は……ハーッ!? なんですかソレ!?ハーッ!? なんですかソレ!!!」くわっ!

 

「ムキになるとか逆に怪しいよー? 意識する様な事の1回や2回あったんじゃないの?」ニマニマ

 

「そんな訳っ……」

 

ニマニマとした笑みを浮かべる妹萌葉の発言に、藤原の脳裏には2つの出来事が浮かび上がっていた。

 

………

 

「石上くん……?」

 

「……それ、使って良いですよ。」

 

「コレ……ヘッドホン?」

 

「仕方ないから貸してあげますよ。雷の音、苦手みたいですし……」

 

「石上くん……!」

 

………

 

「ゔぅっ…ぐすっ、えぐっ……!」ポロポロ

 

「藤原……」

 

「……藤原先輩。」ポンッ

 

「うぅっ…グスッ、石上くん……?」

 

「藤原先輩のそういう……自分の感情に素直な所、僕は好きですよ。」

 

「ううぅっ!!ごんな時だげっ……ひくっ、優しい事言うのズルいですぅ!」

 

「……そうっすね、すいません。」

 

………

 

「……っないですけど!? ホント、全然! これっぽっちもないですけど!!」くあっ!

 

「ふーん? ホントかなぁ?」ニマニマ

 

「当たり前です! 石上くんみたいな不良優等生なんてこっちから願い下げです! ナイナイナイのカタツムリです!!」

 

「それを言うなら、無理無理無理のカタツムリでしょ……でも、嫌よ嫌よも好きの内って言うけどねぇ〜?」ニヤニヤ

 

「萌葉!」

 

「キャー、姉様が怒ったー!」

 


 

〈生徒会長選挙当日〉

 

前回とほぼ同じ流れで生徒会長選挙は無事終了……投票集計後、僕と会長は集計結果が張り出された掲示板の前に陣取っていた。因みに……四宮先輩は前回同様胃痛がするらしく、藤原先輩に支えられながら保健室へと向かった。

 

「……会長、お疲れっす。」スッ

 

満足そうに、でも何処かホッとした様な表情を浮かべる会長に拳を突き出しながら労いの言葉を掛ける。

 

「あぁ、石上もお疲れ。」コツン

 

拳を突き出す僕を見て、会長もフッと笑みを浮かべながら拳を合わせた。

 

「石上くん!」バッ

 

「え?」

 

振り返ると、両手を上げて此方に向かって来る藤原先輩が視界に映った。僕は反射的に身を引きながら両手を上げる。

 

「ハイターッチ!」パァン

 

「っ!?」

 

石上が身を引いた分、藤原は前のめりになりながらハイタッチを敢行した。当然前のめりになった分、藤原は石上へ凭れる様な形になる……つまり、かぐやが同じ事をしたとしても、決して当たらない部位が石上の胸板に当たっていた。

 

「……」

 

「やった、やったー! 勝ちましたよー!……あれ? 石上くん、どうしたんですか?」

 

「……いえ、何でもないです。」

(藤原先輩、パーソナルスペース狭過ぎるんだよな……)

 

「ふー……でも、会長が舞台に上がった時は心臓が止まるかと思いましたよ。」

 

「ハハハ、悪い悪い。」

 

「でも、コレで今まで通り……また皆で生徒会出来ますね!」

 

「え?」

 

安心した様にそう言う藤原先輩を見て、ついイタズラ心が湧き……え? マジで言ってるの? という顔をして藤原先輩を見る。

 

「……えっ!? か、会長!? 大丈夫ですよね!? そんな、利用するだけ利用して当選したら用済みでポイッ……みたいな事しませんよね!?」

 

「大声で誤解される様な事を言うな!……石上も、あまり藤原で遊ぶなよ。」

 

「はい、気をつけます。」

 

「もー! なんで石上くんはそんなにイジワルなの!?」

 

「すいません、つい……」

 

「ついじゃないでしょ、ついじゃ!」ギャイギャイ

 

本日の勝敗、白銀陣営の勝利


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