藤原でシリアスは無理な気がして来た……シリアルならワンチャン……
〈生徒会室〉
「……藤原さんの様子がおかしい?」
期末テストも終わったある日の放課後……僕は最近の藤原先輩について四宮先輩に相談を持ち掛けた。折角だからと、会長も付き添って話に参加してくれている。
「いや、わかります。藤原先輩はいつもおかしいって言いたいんですよね? それはちゃんとわかってるので……」
「石上、その
「……それで石上君、藤原さんが具体的にどういう風におかしいのか説明してくれる?」
「はい、実は……」
〜説明中〜
「……なるほど、そういった類のモノなら私にも心当たりがあります。」
「え? 四宮先輩にもですか?」
「四宮、そうなのか?」
「えぇ、あれは確か……テスト期間に入ってすぐの頃だったかしら……」
………
〈生徒会室〉
「失礼しまーす! 文化祭の出展書類持って来ました!」
「あら……子安先輩、こんにちは。」
「こんちわっす。」
「うん、こんにちは! それでね? うちらの今年の出し物は凄いよ? なんと、新体操と演劇を混ぜた舞台なの! 皆練習とか頑張ってるし、ステージの割り振りとか良い時間帯にしてね!」
「善処はしますけど……他の出し物との兼ね合いもあるので、約束は出来ませんね。」
「わぁ、シビア! 優くんもお願いね!」ワシャワシャ
「っ!? つ、つばめ先輩! 子供扱いしないで下さいよ!」
「あはは、ごめんごめっ……」バターンッ
「も、モラル警察です! 不純異性交遊をする悪い子は逮捕します!」
「あ、藤原さ……え? 逮捕?」
「つばめ先輩、気にしなくて大丈夫なんで……藤原先輩、変な言い掛かりはやめて下さい。」
「問答無用です!……16時35分、石上くんを現行犯逮捕です!」ガシッ
「コレが冤罪逮捕か……」
「いーから離れて下さい!」グイグイッ
(……あ! なるほど、なるほど! それなら、これ以上邪魔しちゃ悪いかな?)
「ごめん! 私この後用事あったの思い出しちゃった! じゃ、またね皆!」バターンッ
「……つばめ先輩、急にどうしたんすかね?」
「まぁ、忙しい人ですし……」
「うー……!」
「……藤原さん、どうかしたの?」
「な、なんでもありません!」
………
「あー、そんな事もありましたね。」
「……」
(藤原、わかりやすい嫉妬の仕方してんな……)
「でも……丁度良かったわ。今日は藤原さんが私の家に泊まりに来る事になっているので、さり気なく探りを入れておいてあげますね?」
(まさかとは思いましたが……石上君の話を聞いて合点がいきました。これは……使えるかもしれませんね。)
「そこまで仰々しい感じにしなくても大丈夫っすよ。ちょっと気になっただけなんで……」
「ふふ、ちゃんとわかってるから大丈夫よ。」
「はい……じゃ、僕はこれで失礼しますね。」
「あぁ、お疲れ。」
「えぇ、お疲れ様。」
(チャンスね……この藤原さんと石上君の件を上手く利用すれば……!)
………
「石上くーん!」ダキッ
「藤原先輩!」ダキッ
「「アハハハハ!」」イチャイチャ
「……上手く行って良かったな。」
「……えぇ、本当に。」
「その……四宮、2人に触発された訳ではないんだが……お、俺と付き合ってくれないか!?」
「……会長がそこまで言うなら構いませんよ。お付き合いしましょう?」
「マジでか!? よっしゃー!!」
「あらあら、そんなに喜んで……お可愛いこと。」
………
「ふふふ……」
(……コレね! 生徒会というグループ内にカップルが出来れば、異性を意識するのは必然! あくまでも藤原さんの恋路を応援した上での副産物だから、会長に計算高い女と思われる可能性もゼロ! 完璧な作戦じゃないかしら!)
「フフフ……」
(よし! 狙い通り四宮を巻き込む事が出来たぞ。生徒会という決して広くはない交友関係……その中でカップルが出来れば自ずと異性を意識するというモノ! そして、四宮に最も近い異性はこの俺! 完璧な作戦じゃないか!)
後輩と級友の恋路をダシに使うあたり、2人は小狡かった。
〈四宮邸〉
「おっ邪魔しまーす!」
「いらっしゃい、藤原さん。」
「かぐやさんの家でお泊りなんて、随分久しぶりですねー!」
「えぇ、そうね。」
(藤原さんとのお泊り……石上君について探りを入れるには、絶好の機会と言えるのだけど……)
「あー! ハーサカ君、久しぶりですねー!」
「お久しぶりです、千花お嬢様。」
「はわぁ、相変わらずのイケメン執事だぁ……」
「……」ニコ
「……」
(……大丈夫かしら。)
「お嬢様方、此方へ。」
「はいはい。」
「あ、あのっ……2人はいつも一緒に居ますよね? 年も近い感じですし、お互いの事を意識したり、ドキドキする時ってあるんですか?」
「もちろんありますよ。」
「やっぱりあるんですか!?」
「えぇ、しょっちゅうしてますよ。」
「はわぁ、執事とお嬢様……禁断の恋!」
「ちょっと! 何言ってるのよ!?」
「本当の事です。私はかぐや様の言動にいつも倒れそうなくらいドキドキしているのですが?」
「そ、それは私が悪かったけど……藤原さんが変な勘違いしてるから、ちゃんと否定して!」
「……わかりました。千花お嬢様、僕は男性にしか恋愛感情を抱かないので、かぐや様とはそういう関係ではありません。」
「どぅえええーーーっ!!? そっち!? ハーサカ君て、そっちなんですか!?」アワアワ
「状況が悪化してるじゃないの!」
「かぐや様との関係は否定しましたが?」
「これじゃ意味無いでしょう!?」
そして、夕食後……
「藤原さん、最近少し様子がおかしいみたいでしたけど……何かありましたか?」
「えっ!? そ、そんな事ないですよ?」
「……本当に?」ジッ
「も、もちろんです!」
藤原さんは、私の言葉に目を逸らしながらそう答えた……そう、私にも秘密にするつもりなのね。なら……攻め方を変えますか。
「そういえば最近、石上君はよく女子生徒と一緒に居る所を見掛けますね……誰か付き合ってる人は居るのかしら?」
「い、居ないんじゃないですかねー……」
「あら、そうなんですね……なら良かったわ。」
「っ!? か、かぐやさん!? 良かったってどういう事ですか!?」
「ふふ……秘密です。」
「秘密って……か、かぐやさん! その、石上くんはやめた方が良いですよ!?」
(掛かった。)
「……あら、どうして? とても素直で良い子だと思うけど?」
「アレは猫を被ってるんです! そ、それに石上くんは、正論でボディーブローを打って来る系男子ですから、かぐやさんとは相性悪いんじゃないかなぁって……」
「大丈夫よ、石上くんは私にそんな事しないから、別に問題無いわ。」
「い、いやいや……隙を窺ってるだけですよきっと! そもそも石上くんは先輩に対する礼儀がなってないですし、他にもっ……」
「……藤原さん、あまり石上君の事を悪く言っては駄目よ?」
「えっ!? ち、違います! 今のはそういうのじゃっ……!?」
「ふふ、大丈夫よ藤原さん。貴女が石上君に冷たくする分、私が優しくしてあげますから……安心して下さいね?」
「か、かぐやさん!?」ガタンッ
藤原さんは不安や焦りが綯交ぜになった顔をすると、荒々しく椅子から立ち上がった……効果覿面ね。正直……ここまで動揺するとは思ってませんでしたが……
「……藤原さん、冗談よ?」
「じ、冗談?……な、なーんだ、冗談だったんですねー! 焦って損しちゃいましたよー。」
「ふふふ、ごめんなさい。でも……どうして藤原さんが焦るの?」
「えあっ!? そ、それは……そう! 石上くんがモテ始めたのかと思って焦っちゃったんですよ! 石上くんはラブ探偵である私の助手なんですから、助手業を疎かにして色恋に現を抜かすなんてダメに決まってます! ま、まぁ? かぐやさんの冗談だったので、余計な心配でしたけど!」
「あぁそういう事……でも強ち、冗談とも言えないのですけどね。」
「え、どういう事ですか?」
「弓道部の後輩にね、石上君の事を気にしてる子が居るの。」
「えぇっ!?」
「最近、石上君はいつも藤原さんと居るでしょう? だから、2人は付き合ってるんですか?って聞かれるのよね……」
「そ、そうなんですね……」
「藤原さんは、別に石上君と付き合ってる訳じゃないのよね?」
「あ、当たり前じゃないですか!」
「そ、ならそう伝えておくわ。」
「あ……」
藤原さんは、シュンと顔を下げて落ち込んだ……全く、本当に仕方のない子。
「……藤原さん、私が言えた事じゃないけど……自分の気持ちっていうのは、言葉にしないと伝わらないモノなのよ?」
本当に言えた事ではない。
「かぐやさん……」
「意地やプライドが邪魔するのも、恥ずかしくて勇気が出ないのも……それ自体は別に悪い事じゃないわ。でもね……そうやって行動しないうちに、会っ……気になってる人が合コンに行ったり、身近な人にアプローチされたりする羽目になるのよ!?」
思いっきり自分の事だった。
「うぅー……」
「石上君の事が好きなら、ちゃんと捕まえておかないと……」
「えぇっ!? か、かぐやさん!?」
「気付いていないとでも思ったの? 貴女……最近様子がおかしかったわよ?」
「あ、あはは、バレちゃってたんですね……」
「改めて聞くわ……藤原さんは、石上君の事が好きなのね?」
「うっ……」
藤原さんは、一瞬躊躇したものの……小さくコクリと頷いて答えた。
「ふふふ、大人しい藤原さんは珍しいわね。」
「だ、だってっ……なんか、恥ずかしいと言いますか……」
「……藤原さんは、石上君のどういう所を好きになったのか……教えてくれるかしら?」
「ええぇっ!?」
「あとは好きになったキッカケと、石上君と付き合えたらどういう事をしたいのかも……教えてもらおうかしらね?」
「かぐやさん!? そんなの言える訳っ!?」
「教えてくれないと……弓道部の後輩の子を応援しちゃうかもしれないわね。」
「そ、そんなのずるいですよ!」
「だったら……ね?」
「うあーん!? かぐやさんまでイジワルして来ますー!?」
「…………」
(書記ちゃんが恋かー……)
本日の勝敗、藤原の敗北
かぐやにも勝てなくなりそうな為。
1時間後……
「わ、私だけ恋バナするなんて不公平です! かぐやさん!……は無いでしょうから、今から会長に電話しちゃいましょう!」
「んー、いぃんじゃないですぅ?」ウトウト
自分ばかり恥ずかしい恋バナを話し続ける事に抵抗を覚えた藤原は、深夜帯にも関わらず白銀へとビデオ通話を試みた。
「会長ー、こんばんはー!」
「あー、会長だぁー……」
〈藤原……と四宮!? どうしたんだ、こんな時間に!?〉
「えへへ、実は会長に聞きたい事が……」
〈ちょっとお兄ぃ、壁薄いんだからもう少し静かにし……〉
「あ、圭ちゃんだー!」
〈千花姉?……とかぐやさん!? ちょっ、これビデオ通話!? もー! 汚い部屋映さないでよ、バカ兄貴!〉
〈……で、なんだ聞きたい事って?〉
「会長は、今恋をしてますか?」
〈は……はー!? 別にしてねーし!?〉
「会長! 嘘はよくありませんよ?」
〈別に嘘なんかじゃっ……〉
〈嘘! 聞いて千花姉! 最近のお兄ぃはスマホを気にしてばっかりで、偶にニヤニヤしながらメッセージ送ってるの!〉
〈ばっ!? 圭ちゃん、何言って!?〉
「誰!? 会長は誰に恋して連絡取り合ってるんですか!?」
〈別に恋じゃねぇから!〉
〈私知ってます!!〉
〈圭ちゃん!?〉
「圭ちゃん! 私が許すから言っちゃって良いよ!」
〈それは……ハーサカっていう人です!〉
「」
〈お兄ぃはハーサカって人に恋してます!!〉
「」チラッ
「……」ニコ
「ちょっ、ちょっと洗面所借りますね……!」
藤原は鼻血を出しながら、洗面所へと向かった。
〈洗面所〉
「……えっ!? か、会長がハーサカ君と!? 男同士なのにっ!?」
&白銀の敗北
BL疑惑が浮上した為。