石上優はやり直す   作:石神

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評価、誤字脱字報告ありがとうございます(゚ω゚)


石上優は起きれない

週明けの月曜日……私は1人、生徒会室へと続く道を歩いています。かぐやさんの家にお泊りしてから……頭の中には、その時の出来事が鮮明に流れて来ます。

 

石上君の事が好きなら、ちゃんと捕まえておかないと……

 

「うー……!」

 

わかってます、それはわかってるんですけど……石上くんが誰かと一緒に居ると邪魔したくなっちゃうし、なんというか……好っ……じ、自覚してから変に意識する様になっちゃいましたし……

 

「あー、もーっ!!」

 

ダメダメ! 石上くんの事を考え過ぎたら、また変な感じになっちゃいます! 別の事を考えて気を紛らせなくちゃっ……!

 

……ハーサカっていう人です! お兄ぃはハーサカって人に恋してます!!

 

「うっ!? 危なかった……」

 

また鼻血が出る所でした。まさか……会長とハーサカ君が密に連絡を取り合う蜜な仲だったなんて。会長はハーサカ君に恋してて、ハーサカ君も満更でも無い感じで……お、男同士なのにっ、男同士で!?

 

「あ……」

 

鼻に違和感を感じた私は、鼻の根本を急いで摘みました。また鼻血が出てしまった様です。と、とりあえずトイレに行って血を止めないと……

 

〈女子トイレ〉

 

「……よし!」パチン

 

鼻血の止まった私は、鏡の前で軽く頬を叩いて気を引き締めます。とりあえず会長とハーサカ君の件については……見守る事にしましょう! 愛に年の差は関係無いって言いますし、きっと性別も関係ないんでしょう!……少なくとも、会長とハーサカ君にとっては!

 

其処の関係性は密であるべきではないだろうか。

 

……会長に内緒にされてた事は不本意ですが、内容が内容だけに仕方ない部分もありますから許してあげましょう! そのうち同性愛について調べて、さり気なくフォローもしてあげるつもりですし!

 

……そんな気の使われ方をされる白銀の方が不本意である。

 

それと……石上くんには、今まで通りラブ探偵の活動に付き添ってもらいましょう! きっとその内、前みたいに恥ずかしがらずに色々出来る様になる筈! 新たな決意を胸に、私は生徒会室のドアに指を掛けました。

 


 

〈生徒会室〉

 

「あー、眠い……」

 

期末テストが終わった解放感、テスト勉強のストレス、藤原先輩の様子がおかしい事に対するちょっとした悩みなど……それらを解消する為、この休みはゲーム三昧な自堕落生活を送っていた。昨日も日付けが変わる深夜までゲームをしていた為、強烈な眠気に襲われている。時計を見ると、まだ16時にもなっていない。

 

「まだ誰も来そうにないし……」

 

僕はソファに体を預けると……少しの間、仮眠を取る為に目を閉じた。

 


 

生徒会室に入ると、ソファに座る石上くんの後ろ姿が見えました。大丈夫、いつも通りに……ふぅ、と息を吐いて心を落ち着かせます。

 

「石上くん、こんにちは!」

 

「……」

 

意を決して挨拶をするも、返事は返って来ませんでした。もしやと思い回り込むと、石上くんは目を閉じて眠っていました。

 

「寝てる……」

 

折角の挨拶が不発に終わり、残念な気持ちになりましたが……石上くんと生徒会室に2人っきりという状況に別の感情が湧き上がって来ます。

 

「い、石上くーん?」

 

石上くんは、すぅすぅと規則正しく呼吸を繰り返していて、一向に起きる気配がありません……こんなにじっくりと、石上くんを見るのは初めてかもしれません。私は顔が熱くなり始めた事を誤魔化す様に、石上くんへと語り掛けます。

 

「お、起きないと……イタズラ、しちゃいますよー?」

 

「……」

 

「ほ、ホントにしちゃいますよー?」

 

そういえば……この状況は、少女漫画で読んだ展開に似ています。教室に忘れ物を取りに戻ったヒロインが、教室で居眠りをする片想いの男子を見つけてイタズラをするんです。そしてイタズラをしているうちに……

 

「……ハッ!?」

 

気付くと私は、無意識のうちに石上くんに近付いていました。さっきよりも短くなった2人の距離……石上くんは寝ていますから、私が近付けばその分石上くんとの距離は短くなります。

 

「寝てるから、大丈夫ですよね……」ナデナデ

 

私は自分にそう言い聞かせて、石上くんの頭へと手を伸ばしました……男子の頭なんて触った事も無い私ですけど、撫でるのは萌葉や圭ちゃんで慣れているので問題ありません。

 

「……」

(サラサラしてる……ちょっと意外です。)

 

なんとなく、男子の髪質は女子と違って硬いのかな? と思ってたんですが……石上くんの髪はサラサラしてて、撫で心地も悪くありません。

 

「石上くん、いつもお疲れ様です……な、なんちゃってっ……!」

 

普段はバリバリ生徒会の仕事もしてて、偶にSっ気を発揮して私にイジワルをする石上くんの無防備に寝ている所を見ていると、また無意識に近付いている自分に気付きました。

 

「……っ!」

 

そ、そう! これはゆっくり顔を近付けて、石上くんがいつ起きるかどうかを見極めるチキンレースゲームをしてるだけ!……別にキスとかする訳じゃないからセーフです!

 

「……んぉっ!?」グラッ

 

中腰の姿勢で近付いていた所為でバランスが崩れ、私の体は石上くんの方へと傾きました。

 

「……ん!?」チュッ

(……は、はあああっ!!? ほ、ほっぺにちゅーしちゃいました!? ほ、ほっぺだからセーフ!? あっ!? それよりもっ!?)

 

むにっとしたほっぺの感触を唇に感じた直後、我に返った私は、バッと石上くんの様子を急いで確認します……良かった、起きてないみたいです。石上くんの瞼は下りたまま、先程と同じ体勢を維持しています。

 

(ホッ……良かった、起きてない。)

「……こ、ここまでですね!」

 

き、今日は、生徒会はお休みさせてもらいましょう! 正直、石上くんの事を冷静に見れる自信が今の私にはありませんからっ……! 私はスマホで会長とかぐやさんに休みの意を伝えると、一目散に生徒会室を去りました。

 

「〜〜〜っ!!」タタタッ

(ほっぺ! ほっぺだからセーフです! 石上くんだって寝てて気付いてなかったし、私もちゅーするつもりは微塵もなかったのでノーカン!! 実質セーフ寄りのセーフです!!)

 

………

 

バタンッという音を響かせて、藤原が生徒会室を去った10秒後……

 

「……っ!!??!」ガバッ

(えええええぇぇっ !!?!?)

 

アウトだった。

 

「え、なんで藤原先輩がっ……!? え、ちょっ……えええっ!?」

 

本日の勝敗、石上の負け

この後の生徒会業務に支障が出まくった上、明日も寝不足が確定した為。


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