石上優はやり直す   作:石神

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評価ありがとうございます(゚ω゚)
多分、次で終わります。
エタらせてはいけない(戒め)


北高文化祭を回りたい

週末……北高の校門前に着くと、門壁に体を預けて周囲を見渡す……藤原先輩はまだ来てないみたいだ。派手に飾られた校門を多くの人が通り抜けて行く。北高の文化祭は9時開始だから、既に開門してから2時間近く経っているにも関わらず、校門付近は依然として人の流れが多い。藤原先輩と待ち合わせした11時まで残り15分……まぁ、時間的には遅過ぎず早過ぎずの時間だと思う。

 

「石上くーん!」

 

その声に周囲を見渡すと、此方に駆け寄って来る藤原先輩が見えた。

 

「遅れてごめんなさい! 待ちましたか!?」

 

「いえ、僕も今来た所なんで……」

(……ナチュラルにデートのテンプレ台詞を言ってしまった……)

 

「ど、どうですか?」

 

「……どう、とは?」

 

「だ、だから、その……うーっ!」

 

藤原先輩は胸の前で指を突き合わせながら、困った様な表情を浮かべて唸っている……幾ら僕でも流石にわかる。藤原先輩は自分の私服についての感想を求めているんだ。気恥ずかしいとか、藤原先輩が相手だからとか、くだらない理由で誤魔化していいものでも……ない。

 

「その……に、似合ってますよ?」

 

「っ!? あ、あはは……な、何言ってるんですか、石上くん!!」バシバシッ

 

「……藤原先輩、痛いっす。」

(恥っずい! 藤原先輩相手だと、また違った恥ずかしさがあるぞコレ!)

 

「ほらほらっ、早く入りますよ!」

(えへへー、石上くんに似合ってるって言われちゃいました!)

 

バシバシと背中を叩き続ける藤原先輩に促されながら、校舎内へと入った。

 


 

〈校舎内〉

 

校舎内に入ると早速、各教室でやっている出し物や屋台の看板が視界に入る。秀知院の文化祭を体験した僕でも、圧倒されそうになる熱気と規模だが……奉心祭の方が凄いと思ってしまうのは、僕が秀知院の生徒だからだろうか?

 

「わー! 凄い熱気ですねー!」

 

「っすね……藤原先輩、何処から回りますか?」

 

「決まってるじゃないですか……気になる所は全部回るんですよ!」

 

………

 

〈綿菓子屋台〉

 

「見て下さい、石上くん! 綿菓子がこの大きさで50円ですよ!」

 

「デカイですけど1人で食べ……られますね、藤原先輩なら。」

 

「どういう意味ですか、コラー!」

 

………

 

〈輪投げ屋〉

 

「ふふふ、TG部のリーサルウェポンとは実は私の事です! 石上くん、輪投げで勝負しましょう!」

 

「……いいっすよ。玩具屋次男坊の実力、見せてあげます。」

 

「じゃあ、負けた方は罰ゲーム有りにしましょう! 罰ゲームはそうですね……あ! あの景品の犬耳カチューシャを今日一日付け続けるって事でどうですか!?」

 

「犬耳って辺りがフラグな気がしますが、別にいいですよ。」

 

「……フラグ?」

 

10分後……

 

「……」

 

「……」

 

「藤原先輩、お手。」スッ

 

「……わん。」ポスッ

 

「じゃ、行きましょうか……犬原先輩。」

 

「うあーん!? 全然勝てなかったんですけどー!? 石上くん、チートしましたね!? ずっこい! ずっこいです!!」

 

「輪投げでどうやってチートするんですか……」

 

………

 

〈体育館〉

 

〈燃え上がるHeat!声枯らすBeat!!〉

 

「……っ!」ソワソワ

 

「藤原先輩、何をそわそわしてるんですか?」

 

「い、いえ、ちょっと……ラッパーの血が騒ぐと言いますか……」

 

「……お願いですから、舞台に乱入とかやめて下さいね?」

 

「し、しませんよ?」プイッ

 

「僕の目を見て言って下さい。」

 


 

文化祭を楽しむ事数時間……ある程度回った僕と藤原先輩は、来場者の休憩用に用意された椅子に腰掛けていた。

 

「藤原先輩、僕ちょっとトイレ行って来ますね。」

 

「あ、じゃあ此処で待ってますね。」

 

「うす、すぐ戻るんで。」

 

………

 

「ふぅ……ん?」

 

トイレから戻ると、藤原先輩は知らない男と話をしていた。……知り合いだろうか? 藤原先輩に近付いて、お待たせしましたと声を掛ける。

 

「あ、石上くん!」

 

藤原先輩はパッと安心した笑みを浮かべると、駆け寄り僕の背中に隠れた……なるほど、ナンパか。ナンパ男は値踏みする様な視線で僕を見て、フンと鼻を鳴らした。

 

「へえー? こんな陰キャ相手じゃつまんないんじゃない? 絶対オレと遊んだ方が楽しいって!」

 

……どうやら、格下とでも認識されたらしい。さり気なく藤原先輩の体の前に腕を伸ばし、ナンパ男からガードする。

 

「……見ての通り、先輩は嫌がってるので諦めてくれませんか?」

 

「先輩? お前年下かよ……年下じゃエスコートなんて無理無理! ね? オレと一緒に回ろうよ?」

 

「……」

 

ナンパ男の言葉が聞こえていないとでも言うように、藤原先輩は俯いて無言を貫いている。

 

「……嫌だそうですよ?」

 

「お前には聞いてねぇんだよ!!」

 

無視された苛立ちを隠そうともせずに、ナンパ男は声を荒げた……というか、北高の教師や風紀委員は何をしてるんだ? さっさと来て欲しいんだけど……

 

「大体、お前みたいな陰キャには釣り合ってねぇんだよ! こんなつまんなさそうな奴と回っても絶対楽しめねぇって!」

 

「……」

(どうするかなぁ……他校であんまり問題は起こさない方がいいだろうし……とりあえず、さり気なく藤原先輩だけはなんとか逃がして……)

 

未だに続くナンパ男の罵詈雑言を聞き流しながら、対策を考えていると……

 

「この……ボッケナスー!!」

 

背中から藤原先輩の叫び声が聞こえて来た。

 

「さっきから石上くんの事、つまんないとか一緒に回っても楽しくないとか好き勝手言って! 私は楽しいから石上くんと一緒に居るんです! 私は石上くんの良い所、沢山知ってるもん! 石上くんの事、何も知らない人が勝手な事言わないで下さい!!……石上くん、行きますよ!!」

 

「ちょっ……藤原先輩!?」

 

ガシッと藤原先輩に手を握られ引っ張られる。藤原先輩と僕を避ける様に、周囲の人達は脇に寄って道を開けていく。チラリと後ろを確認すると、ナンパ男は周囲から向けられる視線に気まずさを感じている様な顔で立ち尽くしていた……多分、もう絡んで来る事はないだろう。

 

「もうっ……もう!」プンスカ

 

プンスカ……という擬音が聞こえて来そうな程、憤っている藤原先輩に腕を引かれながら廊下を足早に歩いて行く。

 

「……」

 

私は楽しいから石上くんと一緒に居るんです!

 

「……」

(あぁ、良かった……)

 

私は石上くんの良い所、沢山知ってるもん!

 

「……ッ」

(藤原先輩が前を向いていてくれて……)

 

石上くんの事、何も知らない人が勝手な事言わないで下さい!!

 

(今の赤くなった顔を見られるのは……流石に恥ずかしいから。)

 


 

〈中庭〉

 

暫く藤原先輩に手を引かれ歩いていると……気付けば中庭の小さな噴水の前に来ていた。

 

「……」

 

「……藤原先輩?」

 

「ふふーんだ! 言ってやりましたよ!!」

 

僕が声を掛けると、藤原先輩は此方を振り返りながら自信満々にそう言い放った。

 

「……えぇ、格好良かったっすよ。」

 

「えへへー! でも、石上くんも全然怖がってなかったですね?」

 

「まぁ……」

(そりゃあ、もっと怖くてドチャクソやべー人知ってるし……)

 

………

 

〈四条邸〉

 

「……」

 

「……渚? どうしたのよ?」

 

「ううん、なんでもないよ。なんでも、ね。」

 

「?」

 

………

 

「っ!?」ゾクッ

(何故か悪寒が……)

 

「石上くん? どうかしましたか?」

 

「あ、いえ……なんでもないっす。そろそろ、文化祭も閉幕の時間ですね。」

 

「そうですねー、最近は夜遅くまでやってる文化祭は減って来てるみたいですし……」

 

「じゃあ、調査はここら辺で終わりですね……」

 

「調査……そ、そうですねっ…調査、ですもんね……」ショボン

 

藤原先輩は、一瞬で気落ちした様なテンションになった……僕は間を空けずに言葉を続ける。

 

「まぁ、僕は……デートだと思ってましたけど。」

 

「っ! そ、そうですか! まぁ石上くんがそこまで言うならデートって事でも良いですよ!?」

 

「ははは、じゃあデート扱いでお願いします。」

 

「仕方ないですねー!」ニパー

 

その後、いつもの花が咲いた様な笑顔を浮かべた藤原先輩を家まで送り、帰路に着いた。

 

………

 

〈自室〉

 

「はー……参った。」

 

私は楽しいから石上くんと一緒に居るんです!

 

私は石上くんの良い所、沢山知ってるもん!

 

石上くんの事、何も知らない人が勝手な事言わないで下さい!!

 

「完全に……落とされた。」

 

本日の勝敗、石上の敗北。

 

 

 

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