石上優はやり直す   作:石神

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柏木渚は見逃さない

〈生徒会〉

 

「学外で行うボランティア活動の申請?」

 

「はい……これが申請書です。」

 

会長へ1枚の書類を差し出しながら答える。つい先日……生徒会長の椅子を勝ち取ったばかりなのに、会長には様々な仕事が舞い込んで来ている。会長の仕事を増やす事に多少の引け目を感じてはいるが、コレに関してはしょうがない……

 

「石上君、コレお願いね?」

 

……と柏木先輩からお願いされては出さない訳にはいかない。断るとかは無理……いや、別に怖いとか思ってないけど。

 

「……なるほど、特に記入漏れや不備も無い。受理しておこう。」

 

「お願いします。」

 

「……ボランティア部創設の申請を受けた時は、まさか石上と柏木が付き合っているなんて知らなかったからな……順調に付き合いは続いている様で何よりだ。」

 

「ハハハ、だったら良いんですけどね……」

 

「なんだ、何か問題でもあるのか? そういう時は誰かに話すだけでも違うらしいからな、話してみると良い……俺で力になれるかはわからんがな。」

 

「問題……無い事もないんですが……」

 

………

 

〈中庭〉

 

選挙期間中のある日の昼休み、中庭を歩いていた時の事……

 

「……君。」

 

「……キ…ちゃん。」

 

「……ん?」

 

何処からか、微かな話し声が聞こえて来た。周囲を見渡すと、丁度人の背丈と同じくらいの高さのある茂みが目に映る。

 

「……」

 

物音を立てない様に気を付けながら、僕は茂みの中を覗き込んだ。

 

「マキちゃん……」ポンポン

 

「〜〜〜っ!」ギュッ

 

翼先輩は、マキ先輩の頭をポンポンと撫で続けている……なるほど、此処なら周囲の人間は覗き込まないと中の様子が見えないから、イチャつくには絶好の場所って事か……

 

「翼君……」ギューッ

 

「マキちゃん……」ギュッ

 

「……」

(マキ先輩、本当に良かったですね……)

 

幸せそうに抱き合う2人から目を逸らし、後ろへと下がろうと一歩引いた瞬間……

 

「……ッ!?」

 

ゾッする様な悪寒を感じた……なんだ? マキ先輩も翼先輩もこっちには気付いてないし、仮に気付かれたとしてもこんな悪寒を感じる事なんて……

 

「……」

 

そこまで考えて、違和感に気付く……いや、多分始めから気付いていたんだと思う。怖いから、怖過ぎるから……その事から目を逸らしたいから、態と気付かないフリをしていたんだ……だって、2人の背後にある草木の隙間から……見慣れた瞳が僕を凝視していたから。

 

「……」

 

「」

(中庭でレイドボスみたいな人とエンカウントイベント入っちゃった……)

 

僕はそのまま後ろへ身を引くと、マキ先輩達を囲っている草木を迂回して柏木先輩と合流した。正直言って……走って逃げたいけど、追いかけられるのもそれはそれで怖いし、逃げ切ったとしても後が怖いからしょうがない……

 

「……石上君、覗きなんて感心しないよ?」

 

「すいません……」

(先輩も覗いてたじゃないですか……)

 

「……何か言いたい事でもあるの?」

 

「……いえ、ありません。」

 

「ふーん……石上君、私が覗いてた事……言い触らしたりしないよね? もし喋ったら…… 」

 

「い、言いません!! 絶対言いません!!」

 

「……本当?」

 

「本当です!!」

 

「……そっか、良かったぁ。」ゴトッ

 

柏木先輩はそう言って安心した様な笑みを浮かべると、大きな石を……捨てた。

 

「」

 

………

 

「……すいません。何があったかは……脅されているので言えません……」

 

「脅っ!?」

 

「はぁ……身から出た錆とはいえ、なんでこんな事にっ……!」ダァン

 

僕はグシャグシャと髪を掻き乱すと、ダンッと拳を机に叩きつけた。

 

「石上!? 本当に何があった!?」

 

「なんと言うか……見てはいけないモノを見てしまったと言うか、知ってはいけない事を知ってしまったと言いますか……ハハハ、まぁ脅されているのでそれも言えないんですけどね……」

 

「今の所俺に入って来た情報ゼロなんだが!?」

 


 

〈生徒会室〉

 

「こんちゃーっす。」ガチャッ

 

「あ、石上くん。」

 

放課後になり生徒会室を訪れると、藤原先輩がソファに座っているだけだった。普段は会長か四宮先輩、どちらか1人は居る筈なんだけど……なんとなく気になった僕は、藤原先輩に訊ねた。

 

「藤原先輩だけですか?」

 

「会長は職員室、かぐやさんは弓道部に寄ってから来るそうですよ。石上くん、ミコちゃんは?」

 

「そうですか、伊井野は風紀委員の見回りが終わってから来るって言ってましたよ。」

 

「ふむふむ、しかしミコちゃんは将来有望ですよね! なんて言ったって、私を副会長に任命しようとする程の慧眼の持ち主ですしね!」

 

「それを言うなら節穴でしょ。」

 

「はー!? そんな訳無いでしょー!? 仮にかぐやさんが副会長じゃなかったら、1番副会長に相応しいのはこの私ですよ!?」

 

「ハハハハハハ!!」パンパンパンッ

 

「何も面白い事言ってないんですけど!?」

 

……といういつもの遣り取りを藤原先輩としていると、背中から扉の開く音が聞こえた。

 

「お邪魔します。」ガチャッ

 

「っ!? か、柏木先輩……どうしたんですか?」

 

「柏木さん、生徒会に何か用事ですか?」

 

「うん、ちょっとボランティア部の事で白銀君に用があって……それより藤原さん、どうしたの? 随分騒いでたみたいだけど……」

 

「あ、そうなんです! 柏木さん、聞いて下さいよー! 石上くんが私をイジメるんです!!」

 

「……石上君?」

 

藤原先輩の言葉に、柏木先輩は責める様な眼で僕を見た。

 

「いやいやいやいや! 藤原先輩が適当言ってるだけですから! ハハハ、やだなぁ藤原先輩は!」

 

「……っ!」

(コレは……普段の仕返しをするチャンス!?)

 

藤原先輩、柏木先輩を巻き込むのは卑怯ですよ!? 何考えてるんですか!

 

「……っ!」ニパー

 

「ッ!?」

(碌でも無い事考えてる顔!?)

 

「柏木さん、聞いて下さい! 石上くんはいつもいつも私を先輩扱いしませんし、直ぐに(正論で)殴って来るDV男なんですよ!」

 

「……石上君、そんな事してるの?」

 

「ウソに決まってるじゃないですか! 騙されちゃあいけません!!」

 

「罰ゲームと称して私を辱めて来ますし!」

 

「……石上君?」

 

「やってません!!」

 

「えーと、あとは…………柏木さんの事も色々愚痴ってました!」

 

「てめぇ藤原先輩(リボン女)ぁ!! 越えちゃいけないライン考えろや!」

 

「ふふーんだ! 普段から先輩を敬わない石上くんが悪いんですからね! 日頃の行いに対する罰ですよーだ!」

 

「くっ……」

(このアホリボン先輩は……)

 

「石上君、今の本当?」

 

「いやいやいや! そんな訳無いじゃないですか! ホラリボン先輩がテキトー言ってるだけですよ!!」

 

「ホラリボン!?」カッチーン

 

藤原先輩は、バッと手を挙げて宣誓する様に息を吸うと……

 

「……思い出しました! 石上くん、柏木さんじゃ満足出来ないって言って(た様な気がして来)ましたよ!」

 

最悪なホラを吹いた。

 

「はあああっ!!?」

 

「……ふーん?」

 

「いや、マジで違いますからね!? 藤原先輩が勝手にっ……あぁもう! 黙りやがれ、このホラ吹き女がぁ!」バリッ

 

「こんにち……」カチャッ

 

「むぐぐぅっー!?」

 

「これ以上声を出すんじゃねぇ!!(僕が)どうなっても良いんですか、あぁん!?」

 

(い、石上が藤原先輩を襲ってる!?)

「……っ!」バタン

 

藤原先輩の口をガムテープで塞ぐと、生徒会室がシンと静まり返った。

 

「石上君、何か弁明はある?」

 

「……」バリッ

 

………

 

「お、四宮は今から生徒会か?」

 

「えぇ、会長もですか?」

 

「あぁ、少し用があって遅れてしまってな……四宮もか?」

 

「はい、弓道部の用で少々遅れてしまいました。藤原さん達はもう集まってるでしょうね。」

 

「藤原が居るなら遊んでそうだがな……」

 

「ふふ、そうかもしれませんね。」

 

「スマン、遅くなった……!?」ガチャッ

 

「こんにちっ……!?」

 

「むぐぐうんっ!」

 

「んぐぐぅ……」

 

「石上君、そんなんじゃ誤魔化されてあげないからね?」

 

「どういう状況だコレ……」

 

「何をしてるの貴方達は……」

 

本日の勝敗、石上の敗北

藤原のホラにより被害を受けた為。

 

「藤原先輩!!」ガチャッ

 

「んぐぐぅっ!!」

 

「んぐぐ……」

 

「ってあれぇ!?」ガビーンッ

 

&伊井野の敗北

新しい環境(コント部屋)にまだ慣れていなかった為。

 


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