石上優はやり直す   作:石神

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感想ありがとうございます(`・ω・´)
とりあえずはコレで終わりです……また思い付いたらafter書きます。


柏鬼の角折りafter①

〈1年B組〉

 

「うーっ……」ジー

 

「……」

(伊井野からの視線が痛い……)

 

生徒会室で柏木先輩とキスしてる所を見られた所為か、ここ最近は伊井野からよく見られている……風紀委員の伊井野からすれば怒って当然なんだろうけど、だったらなんで注意もせずに見て来るだけなのか謎だ。

 

「ミコちゃん、どうしたの?」

 

「さっきから石上の事見てるけど、何かあんの?」

 

「こばちゃん、麗ちゃん……そ、そのぉ……」

 

「何かあるなら相談乗るよ?」

 

「話せば楽になる事もあるし言ってみなよ。」

 

「う、うん、実は……」ゴニョゴニョ

 

伊井野は口元を隠すと、大仏と小野寺にしか聞こえない声量で話し始めた。

 

「……」

(まぁいくら伊井野でも、ある事ない事吹聴したりはしないだろう……)

 

「「せ、生徒会室でっ……セッ!?」」

 

「伊井野、ちょっとストップ。」ガタッ

 

一方その頃……

 

〈2年B組〉

 

「柏木さん! 今の会長は壁にぶち当たってる真っ最中なんですよ!? 先ずは信じてあげる!! 別の道を示すのはそれからです! そんなやり方じゃ、会長は簡単に楽な方へ流れる様な子になっちゃうんですよ!?」

 

「なんかウチのお母さんみたいな事言い出した……そこまで言うなら、藤原さんが教えてあげたら良いじゃない。私は子供の教育方針とかよくわからないし……」

 

「生徒会室で石上くんと子供作ろうとしてた癖に……」ボソッ

 

「何か言いました!?」

 


 

〈中庭〉

 

生徒会室で起きた一幕から数日が経過した。その後の僕と先輩はと言うと……

 

「石上君、はい……あーん。」

 

「あ、あの、先輩! こういうのは流石に恥ずかしいんですけどっ……」

 

「石上君は……こういうのは、嫌?」

 

「いえ、嫌とかじゃなくてですね……」

 

「だったら……させてくれると嬉しいな。」

 

「うっ……わかりました、お願いします。」

 

上目遣いで懇願して来る先輩を拒否出来る筈も無く、僕は大人しく口を開けた。

 

「うん♪ はい、あーん……」

 

「あー……んむっ。」

 

「……美味しい?」

 

「……はい、滅茶苦茶美味いです。」

 

……と、こんな感じになっている。どうやら……僕の我慢しなくていい、という言葉が先輩の琴線に触れた様で、付き合う前とは比べ物にならない程の状態になっている。何というか……こんな感じで女の人に尽くされるのは初めてだから、戸惑いの方が大きい訳だけど……

 

「ふふ、良かったぁ。」

 

にこやかに笑ってくれる柏木先輩を見れば、そんな事は些細なモノだと心底思う。先輩と本当の意味で恋人関係になった次の日から、先輩は僕の分のお弁当も作って来てくれる様になった。

 

「じゃあ今度は、石上君が食べさせて?」

 

先輩はそう言うと、控えめに口を開けて目を閉じた。

 

「……ッ!」

 

あーんと目を瞑り口を開けて待つ先輩を見ると、小さく心臓が跳ねた。

 

「せ、先輩、あーん……」

 

「ンムッ……ふふ、美味しいね?」

 

「そ、そうですねっ……」

(なんかエロい……)

 

あの日は自室に帰り冷静さを取り戻した瞬間、先輩の諸々の感触を思い出してしまい、悶々とベッドの上をのたうち回ったのは記憶に新しい……

 

「じゃあ、次は石上君の番ね。」

 

「……はい。」

(コレ、平凡な男子高校生には生殺しに近いな。)

 

………

 

「ご馳走様でした。」

 

「うん、お粗末様。」

 

「……」

 

「……」

 

昼食を食べ終わると……少しの間、僕と先輩は無言になった。こういう時は、男が何か話題を提供するべきなんだろうけど……

 

「ま、まだ昼休みが終わるまで時間ありますね……どうしましょうか?」

 

変に意識してしまい、話題の提供なんて高度な事は言えなかった。

 

「石上君は……どうしたい?」

 

「えっ!?」

 

艶かしい雰囲気を漂わせ、先輩は僕の手に自分の手を重ねながら問い掛ける……正に妖艶という言葉がピッタリなその姿に、先程よりも心臓が高鳴る。

 

「え、えぇと、ですね……」

 

「うん、なぁに?」

 

「……ぼ、僕っ、飲み物買って来ます!」ダッ

 

「あ……」

 

妖しい雰囲気に耐えられなくなった僕は、堪らずその場から離脱した。

 

「……ッ!」ダダダッ

(落ち着け、学校では色々マズイから落ち着け! いや、何がとは言えないけど落ち着け僕っていうか、もう1人の僕!)

 

………

 

「フフ……石上君は可愛いなぁ♪」

(でも、ちょっとイジワルし過ぎちゃったかな?)

 

中庭のベンチに残された私は、先程の石上君の様子を思い出して悦に入っていた。すると……

 

「あ……ど、どうも。」

 

「こんにちは、伊井野さん。」

 

中庭を通り掛かった伊井野さんに挨拶をする。伊井野さんは生徒会室の一件を見ているからか、微妙に気まずそうな雰囲気をしている。

 

「伊井野さんは、風紀委員の見回り? 大変だね?」

 

「い、いえ、そんな事はないです……そ、それよりも、石上は……」

 

「石上君? 今は飲み物を買いに行ってくれてるよ。」

 

「そ、そうですか……」

 

伊井野さんの纏う雰囲気に、少しだけ警戒心が上がる。これは……ちょっとだけ、牽制しておいた方が良いかもしれない。

 

「……石上君て、意外と積極的なんだよね。」

 

「えっ!? せ、積極的!?」

 

「やっぱり男の子だからかな?」

 

「えぅっ…そ、それって……!」

 

「いっぱい(あーん)してくれたから、お腹いっぱいになっちゃったし……」サスサス

 

「お、お腹いっぱい!? それってどういう……」

 

「……フフ、どういう意味だと思う?」

 

私は意味深にお腹を摩りながら笑い掛ける。とりあえずはコレくらいにしておこうと、此方に走って来る石上君を見ながら思った。

 

………

 

「おう、伊井野。どうかしたか?」

 

「う、ううん、なんでもない……」

 

スッと伊井野の視線が、柏木先輩の腹部へと向いた……うん? 何か様子がおかしいな……伊井野は僕と先輩を交互に見つめて来る。

 

「……石上君、あんなに沢山食べさせて来るんだもん。困っちゃった……」

 

「いや、先輩が(あーん)してって言うからじゃないっすか。」

 

「た、沢山して……や、やっぱり! い、石上! 学校でえ、エッチな事するとか何考えてんの!?」

 

「お前が何考えてんの!? 学校でなんてする訳ないだろ!」

 

「だ、だって柏木先輩がお腹いっぱい(意味深)とか、沢山食べさせて来る(意味深)とか言うし……ほ、本当にしてないの?」

 

「してねぇわ! 伊井野は先輩の言葉に満腹以外の意味があると思ってんの!?」

 

「だ、だってお腹いっぱいなんて意味深な言葉、そういう意味としか……」

 

「何処が意味深!? それに、そういう意味って何が!? 風紀委員が風紀を乱す様な事言うなっていつも言ってるだろ!」

(伊井野の奴、変な事言って意識させるなよ! こっちは死ぬ気で耐えてんのに……)

 

「だ、だってぇ……」

 

「……石上君、行こっか?」ギュッ

 

「え? あ、はい……じゃあな、伊井野。」

 

「あ、うーっ……」

 

何か言いたげな伊井野を残して中庭を出ると、先輩に訊ねる。

 

「先輩……なんで伊井野の前で、あんな紛らわしい言い方したんですか?」

 

「他の女の子に対する牽制……かな?」

 

「牽制って……僕にはそんな心配しなくても良いんじゃないですか?」

 

だって僕ですよ? という意味を込めて言う。

 

「……うん、そうだよね。石上君は浮気なんてしないもんね?」

 

「ははは、勿論ですよ。」

 


 

〈ボランティア部〉

 

そして、その日の放課後……僕はボランティア部の椅子に座った状態で縛り付けられていた。

 

「……」

 

「……」

 

……なんて事は無い。生徒会室に演し物についての話をしに来ていたつばめ先輩に頭を撫でられている所を、偶々生徒会室を訪れた柏木先輩に見られてしまい、そのままボランティア部へと連行されただけだ……いや、なんて事有るなコレ。

 

「石上君……子安先輩とはどういう関係なの?」

 

「お、応援団の関係でちょっと……」

 

「ちょっと? ちょっとって何? そういう事は、はっきり言わないとわからないよ?」

 

「ちょっとだけ話す様になっただけで、別に変な関係じゃありません!」

 

「ふーん……でも、頭撫でられてたよね?」

 

「あ、アレは何というか……つばめ先輩流のスキンシップ? みたいな……」

 

「へぇ……知り合って2ヶ月くらいしか経ってないのに、名前で呼んでるんだ? 私の事は、まだ名字呼びなのにね……」

 

「せ、先輩……怒ってます?」

 

「別に? そんな風に見える?」

 

「……」

(そういう風にしか見えない……)

 

「石上君て、意外とプレイボーイ?」

 

「違います! いやホント、全然そんな気は一切無いです! 信じて下さい!!」

 

「浮気は男の甲斐性って言葉もあるらしいよね?」

 

「僕はそんな甲斐性持ってないですから! ちなみにですけど……先輩にとっては、何をしたら浮気になるんですか?」

 

「……それ、ギリギリの境目を狙うつもりで聞いてる?」

 

「違います!!」ブンブン

 

先輩の言葉に全力で首を左右に振る。恋人は些細な勘違いがキッカケで別れる事もあるという……先輩にこんな事で勘違いされては堪らないので全力で否定する。

 

「ふーん……見てたけどさ、ちょっと距離が近いかな? とは思ったんだけど……」

 

「い、いや、言う程近くなっ……」

 

「あと……石上君、私以外の女の子の手も握ったんだよね?」

 

「え、なんですかそれ!?」

 

「藤原さんが言ってたの。つい最近、石上君が女の子の手を握ってたって……」

 

「つい最近……もしかして、腕相撲の事言ってます!? あれはそんなんじゃ無いですから!」

(っていうか藤原先輩、何紛らわしい言い方してくれてんの!? 腕相撲で負けた腹いせ!?)

 

「石上君は……私っていう彼女が居る自覚がないんだよね? あったらもっと他の女の子との距離感に気を付けてる筈だよね?」

 

「え、あのっ、すいませっ……」

 

「別に謝って欲しい訳じゃないの。石上君が周りの人に……アイツは彼女が居るのに他の女の子との距離感に気を付ける事もしない人間なんだな……とか思われて欲しくないから言ってるの。……ね? 君の為を思って言ってるんだよ? わかる? ねぇ、わかってくれるよね? ね? わかる……わかるよね?」

 

「」

 

………

 

〈部室前〉

 

「……」←覗きに来た藤原

(うわっ、湿度高っ……)

 

………

 

「……ごめんね、私って凄く嫉妬深いみたいなの。」ガチャンッ

 

「いえ、気にしないで下さい。嫉妬されるなんて、男からしたら嬉しいモノですし……それはそうと、今鍵締めました?」

 

「そう言ってくれると嬉しいな……うん、また邪魔が入ったら嫌だから。」

 

「そ、それってどういう……」

 

「フフ、わからないの?」

 

「せ、先輩? 何をっ……」

 

「大丈夫、ちゃんとわからせてあげるから……」

 

「」

(あ、僕が大丈夫じゃ無くなる奴だコレ……)

 

………

 

〈生徒会室〉

 

「……」ガチャッ

 

「あら、おかえりなさい。どうでした? 藤原さんの考え過ぎだったでしょう?」

 

「……とりあえず、湿度が凄かったですね。」

 

「……湿度?」

 

本日の勝敗、石上の敗北

わからせられた結果、生徒会を欠席する事になってしまった為。

 

 


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