石上優はやり直す   作:石神

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お久です(`・ω・´)
ダークネス要素有りですが、全年齢対象な筈です。


柏鬼の角折りafter③

GWを目前に控えたある日の午後、とある教室で密着している2人の男女が居た。それは……

 

「〜〜〜♪」ナデナデ

 

「……」

 

鼻歌混じりに後ろから抱き着き、頭を撫で続けている渚先輩と……されるがままの僕。早いモノで……昨年の12月に渚先輩と付き合う事になってから、来月で半年を迎えるという時期になっていた。

 

「あの……先輩?」

 

「ん、なぁに?」ギュッ

 

「その、僕の頭なんか撫でて楽しいですか?」

 

「うん♪」

 

「あ、そうすか……」

 

そう断言されてしまっては、やめて下さいとは言えない……いや、別に嫌な訳じゃ無い。寧ろ嬉しいくらいなんだけど……

 

「〜〜〜♪」スリスリ

 

「……」

(猫のマーキングみたいだな……)

 

あの日……渚先輩と一線を越えてから、こんな感じのスキンシップが増えた気がする。女性は一線を越えると、男性よりも愛が深まる傾向にあると何かで読んだ記憶がある。渚先輩が学内学外に関わらず、隙あらばこういったスキンシップをして来る様になったのも、当たり前の事なのかもしれないけど……今日みたいに生徒会に行く直前まで、こんな感じのスキンシップをするのは控えてほしいと思う。

 

「ん〜〜〜♪」ナデナデ

 

「……」

 

何故かと言えば……伊井野に凄い目で見られるからだ。伊井野は随分と鼻が効くらしく、僕の身体から渚先輩の匂いがするのを嗅ぎつけると変な勘違いをした挙句、滅茶苦茶怒って来るのだ。そういう事もあり生徒会のある日は控えてくれないかと、渚先輩に懇願したのだが……

 

ふふ、ダーメ♪ だって……それが狙いだもん♪

 

と、あっさり断られた。これでも3学期の頃と比べると随分マシ……というか、柔らかくなった方だと思う。3学期は2年の修学旅行というイベントがあったのだが、側に居なかった渚先輩が……僕が生徒会室で伊井野とした会話の内容を何故か把握していたり、スマホにダウンロードした覚えの無いアプリが入っていたり……(削除したら、それはそれで問題が起こりそうなので放置してる)その頃から比べると、最近の渚先輩の言動は柔らかくなったと思うのも当然だろう。

 

「先輩、そろそろ……」

 

「うん、また後でね?」ギュッ

 

「……はい、また後で」

 

まぁ機嫌が良い分には何も問題は無いので、別に良いかと楽観的に過ごす。数日後、あんな事になるとはこの時の僕は想像もしていなかった訳だけど……

 


 

5月に入り数日……世間はGW期間という事もあり、普段の連休よりも盛り上がりを見せていた。当然、秀知院に籍を置く僕達もGWの恩恵を受けている訳なのだが……

 

「すいませんでした!」ゴンッ

 

「……」

 

僕は自室の床に頭を打ち付け、彼女(渚先輩)に向かって全力の土下座を披露していた。何故こんな状況になっているのか? その理由はただ一つ、僕の油断が招いたのだ……

 

………

 

〈石上家〉

 

「どうぞ、入って下さい」

 

「うん、お邪魔します」

 

GW初日、僕は渚先輩を自宅へと招いていた。両親がGW期間中は旅行に行くという話を渚先輩にした所、その間の食事を世話をしてくれると言ってくれたのだ。最初は断ったのだが……僕1人だと栄養が偏るなどの理由から押し切られてしまった。

 

「ふーん、結構片付いてるんだね」

 

とりあえず自室に案内すると、先輩は意外そうに部屋を見渡しながらそう言った。その反応に……部屋の掃除を頑張った甲斐があったと、内心安堵する。

 

「イメージと違いました?」

 

「うん、少し……男の子の部屋って、もっと散らかってるモノだって思ってたから」

 

「ははは、それは偏見ですよ」

(いやいやいや……初めて彼女を部屋に招くのに、掃除しない男なんている訳ないし)

 

「ふふ、みたいだね?」ギシ

 

渚先輩は妖しく微笑みながら、ベッドへと腰を下ろす。ベッドの軋む音と、自分の部屋に彼女が居るという状況に……小さく心臓が跳ねる。

 

「……ッ」

 

「優君? どうしたの?」

 

「い、いえ! 何か飲み物持って来ますね!」

 

先輩を部屋に残し、階下へ降りて2人分の飲み物を用意する。普段は学校で会っている時間が多いし、自室に彼女が居るという見慣れない状況に妙に緊張してしまう……先輩とやる事はやっていても、緊張する時は緊張するモノなんだと、1人納得する。

 

「お待たせしました」ガチャ

 

「……」

 

「先輩? どうし……」

 

ドアを開け2人分の飲み物をテーブルに置こうと視線を落とすと、其処には……部屋を出る前には置いていなかったモノがあった。それは半年前……駐車場に落ちていたのを秘密裏に拾って持ち帰り、誰にも見つからない様に隠していたモノ……

 

「優君、これは何かな?」

 

「」

 

エ○本だった。

 

………

 

やらかした……前回は拾えなかった事に未練があったとはいえ、持ち帰るなんて馬鹿な真似するんじゃなかった!

 

「あーあ、ショックだなぁ……優君が私に隠れて、こんな物を買ってたなんて」

 

「……買ってません」

 

殆ど意味なんて無いだろうけど、一応は事実に沿った否定をしておく。僕は件の本を買ってはいない、拾っただけだ。捨てられていたゴミを拾ったのだから、寧ろボランティア部の部員として当然の行いをしただけなのだ。拾った場所は小学校の通学路にもなっているから、子供に悪影響のあるモノは排除しなきゃいけないなぁという善意の行動であって……決して! 決して下心があって拾った訳じゃない!!

 

「ふーん? じゃあ、その事は見逃してあげてもいいけど……ねぇ優君、私の気の所為かな? この本に出てくる女の子、生徒会の人達に似てる気がするんだけど?」

 

「……ソンナコトナイデスヨ」

 

「でも……このリボンした子とか、藤原さんに似てると思わない?」

 

渚先輩はペラペラとページを捲ると、その場面を広げて見せて来た……認めてしまえばどうなるかわからないので、全力で否定する。

 

「いやいやいやいや! 藤原先輩はこんな賢そうな顔なんてしてませんて!」

 

「他にも、この子は伊井野さんに似て……」

 

「ません! 先輩の気の所為です!!」

 

「……」

 

「……」

 

「じゃあ、最後に聞くけど……どうして四宮さん似の女の子のページだけ、切り抜いてファイリングしてるの?」

 

「」

 

ここまで過去の自分の行動を呪った事はなかった。確かに……僕は四宮先輩に似たキャラのページを切り抜いてファイリングした。だけど、それは四宮先輩似のキャラが1番好みだったから……なんて理由ではない。僕の趣味では無いけど、会長の趣味にはハマってそうだったから、会長に渡すつもりでファイリングしたんだ。だけど、ページを切り抜いてファイルにまとめた所で……

 

(いや、友達からエ○本の切り抜きしたファイル貰うって何?……気持ち悪っ!?)

 

冷静になって考えてみると、滅茶苦茶気色の悪い行動をしようとしていた事に気付いたのだ。仮に帝先輩が同じ事をして来たら、僕なら間違いなくドン引きする。そんな事情も有り……会長に渡す事も出来ず、かと言って捨てる事も出来ずに仕方なく保管していたまま今に至る……という事なのだ。

 

「優君は……本当は四宮さんみたいな女の子がタイプなの?」ハイライトオフ

 

そんな事を考えていると……渚先輩が光を失った瞳で、僕を見下ろしながら問い掛けて来た。この誤解は早々に解かなくてはいけない! 僕は反射的に否定の言葉を口にする。

 

「ち、違います! いや、マジで! なんだったら、四宮先輩は1番タイプじゃ無いレベルです!! 全く何とも思ってませんし、ピクリともしません!!」

 

「……それはそれで失礼じゃない?」

 

「信じて下さい! 本当に他意は無いんです!」

 

「うん、もういいよ」

 

「し、信じてくれるんですか?」

 

「ううん、そうじゃなくてね……優君が私以外の女の子に、興奮出来ない様にすれば良いだけだから」

 

「え?」

 

目の前には、妖艶な笑みを浮かべる渚先輩が……

 

「優君……」ギシ

 

「せ、先輩?」

 

「私しか見られない様にしてあげるから」

 

「……ッ」

 

家族は旅行に出掛けていて不在、GW期間中に誰かが訪ねて来る予定も無し。そんな状況で先輩と2人っきり……!? や、ヤバいヤバいヤバい! 先輩は完全にスイッチが入ってるし、理由が理由なだけに逆らえないこの状況……

 

「覚悟してね?」ギュッ

 

「……ッ!?」

 

もしかして、コレって結構ヤバッ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「」アー

 


 

GW明け初日……

 

「渚ちゃん、おはよー!」

 

「渚さん、おはようございます」

 

「あ、2人共おはよう」フワ

 

「あれ? 渚ちゃん、シャンプー変えた?」

 

「え? あ……うん、そうなの。ちょっと気分を変えようかなって思って……」

 

「ふーん?」

 

「……?」

(あら? この香り……何処かで?)

 

………

 

〈2年A組〉

 

「」

 

連休が明け……力が入らない身体になんとか鞭を打ち教室に入ると、崩れる様に机へと突っ伏す。GW期間中の5日間……僕は只々堕落した生活を送る羽目になった。渚先輩は最初から泊まるつもりだったらしく、マキ先輩やナマ先輩達の家に泊まると偽装工作をしてから僕の家に来たらしかった。

 

だから、このGW期間中はずっと一緒だからね?

 

渚先輩は妖艶な雰囲気を纏いながら、そう言って僕の身体に触れた……5日間という時間は、他者には短く感じるかもしれないが……僕にはとても長く感じた。それこそ、一生分の……!? その時の光景が浮かびそうになるのを目を強く閉じて振り払う……マヂ無理、もぅ渚先輩以外のお婿に行けない身体にされた。ちょォ怖かったんだけど……

 

「あ、石上おはー……って、どしたん お前?」

 

「おぅ……」ゲッソリ

 

頭上から降って来た小野寺の声に、顔を上げて返事をする……ダメだ、声にも力が入らない。

 

「ちょっ!? なんでそんなにやつれてんの!?」

 

「ハハハ、ナンデモナイヨ……」ゲッソリ

 

「声小っさ!?」ガビーン

 


 

そして、朝の挨拶をしに近付いて来た伊井野が石上から漂って来る匂いに気付き……

 

「ア…ア……」プルプル

 

脳が破壊された様な表情を浮かべるのは……10分後の事である。

 

完!

 




何がとは言いませんが、この√が1番早く○○が出来る√でしょうね。まぁ、何がとは言いませんが……
あと、この√のミコちゃんはインド行きそう……
可哀想なのは可愛いからね、仕方ないね(゚∀゚)

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