3期は4月8日24時からですね(゚∀゚)
〈四宮邸〉
「……かぐや様、この惨状はどういう事ですか?」
使用人としての仕事を終わらせてかぐや様の寝室を訪れると、部屋は酷く散らかっていた……私は部屋を散らかした張本人に、理由を問い質す。
「無いの……」
「はい?」
「……ベルマークが無いの!」
詳しく話を聞くと、
「なるほど、それでベルマークですか。まぁ
「ううぅっ、一体どうすれば……このままじゃ、また会長の私に対する評価が落ちて……」
「そんな事じゃ落ちないと思いますが……まぁ会長さんみたいな一般家庭には、それこそ山程あるでしょうが……あっ。」
「どうかしたの、早坂?」
「いえ、少々思い当たる所が……」
会長さんの様に、ベルマークが家にあっても不思議じゃない一般家庭……ふと1人の人間に思い当たった。私はスマホを取り出すと、トーク画面を開きメッセージを送っ……ろうとした所で思い止まる。メッセージを送ろうとした相手は、かぐや様と同じ生徒会に所属している男子だ。生徒会でベルマークが話題に出て直ぐに私がベルマークが欲しいなどと言ってしまえば、かぐや様と私の関係性に気付かれるかもしれない……私はスマホの電源を切ると、かぐや様を自室へと案内した。
………
部屋に入ると、少し埃を被った箱を取り出して開ける。……小等部時代の宝物ボックスだ。玩具の指輪やネックレスを隅に転がすと、〈れんらくちょう〉と表記されたノートを取り出した。
「……早坂、それは?」
「子供の頃の宝物ボックスです。」
暫し思い出に耽る様にじっとノートを見つめる……仕事で忙しい母が寂しがり屋な私に残してくれていた書き置き。これがあったから、母とあまり会えなくても悲しくはなかった……小さい頃の子供らしい思い出話、それをかぐや様に話しながらハサミを手に取る。
「この連絡帳にもベルマークは付いています。10冊程あるので10点には……」
「駄目よ、宝物なんでしょ……? そんな思い出の品にハサミを入れる事なんて出来ないわ……」
「……」
全く
「……構いません。かぐや様は私にとって、主人である前に妹みたいなモノなんですから……姉に遠慮なんていりません。」
「は、早坂……」ウルッ
チョキチョキとベルマーク部分を切り取ると、封筒に入れてかぐや様へと渡す。
「あ、ありがとう、早坂……」
「……良かったですね、これで会長さんの役に立てますよ。」
「ほ、本当!? これで会長から、使えない女だ……とか言われずに済む!?」
「だから、会長さんはそういう事言わないでしょ。そもそもの話、かぐや様はそんな事を言う人を好きになったんですか? 違いますよね?」
「べ、別に好きとかじゃ無いから!」くわっ!
「……」
「わ、私はただ……副会長として、他の役員よりも結果を求められる立場に居るから焦っていただけでっ……もう、早坂ったら! 藤原さんみたいな事言わないでよ!」
「……は?」ピキッ
普段から
「全く、馬鹿な事ばっかり言って……」
「……失礼しました。そうですよね、例えかぐや様が会長さんの事を好きだったとしても……向こうもそうだとは限りませんからね。」
「な、何を言ってるの? 貴女の告白を断った時に会長も言ってたじゃない! 好きな人がいるって!」
「えぇ、確かに言ってましたね。」
ごめん……
俺、好きな人がいるから。
「それがかぐや様だとは……一言も言ってませんでしたけど。」
「」
「でも別に問題ありませんよね? かぐや様は副会長として会長さんの期待に応えたいだけですもんね? 副会長として支えたいとは思っていても、恋人として支えたい訳じゃ無いんですよね? まぁその役目は、かぐや様よりも気立てが良くて優しい女性が担う事になるんでしょうけど……」
「……なんでそんな事を言うの?」じわっ
「あーはいはい、もう言いませんから。はぁ……泣くくらいなら、好きじゃないとか言わなきゃいいのに……」
本日の勝敗、早坂の負け
なんだかんだで、かぐやには甘かった為。
〈生徒会室〉
生徒会長選挙から1週間が経過した。来月になれば体育祭に向けた準備が本格化するし、それが終われば期末テストや奉心祭の準備に追われる事になる。だが、今の僕が抱えている懸念事項は別にあった。それは……
「四宮先輩、体調は大丈夫ですか?」
「え? えぇ、特に問題無いけど……どうして?」
「あーいえ、問題無いならいいっす。」
「?」
「……」
(四宮先輩が生徒会室で倒れる事になるの……そろそろだった様な気がするんだよなぁ。具体的な日付けは覚えてないけど、時期的にそろそろだった様な気が……)
数日後の放課後……そう懸念していた通り、四宮先輩は倒れて病院へと運ばれた。
………
四宮先輩が病院へと運ばれた次の日……僕はある事について頭を悩ませていた。それは……
「早坂先輩に聞ければなぁ……」
早坂先輩は四宮先輩のお付きらしいから、四宮先輩が本当に大丈夫かどうかを知っている筈だ。でも、聞いてしまったら……なんで早坂先輩が四宮先輩のお付きだって事を僕が知ってるんだって話になってしまうし、もし聞いて早坂先輩に気味悪がられたら……そう思うと中々行動に移す勇気が出ない。
「……」
聞くべきか、聞かざるべきかに頭を悩ませながら歩いていると、ベンチに腰掛けて話すナマ先輩とガチ勢先輩を見掛けた。2人は此方には気付いていない様子で、話を続けている。
「うぅ、かぐや様がご無事で良かった……」グスッ
「登校前にかぐや様の回復祈願をした甲斐がありましたわね。」ナデナデ
「無力な私達には、祈る事しか出来ないから……」
「私……初めて賽銭箱に財布の中身を全部ぶち撒ける光景を目の当たりにしましたわ。」
「そう言うかれんだって、滅茶苦茶真剣に祈ってたじゃない!」
「当然です! もしかぐや様に何かあれば、会長の闇堕ちは必至……私はハッピーエンド以外は解釈違いですので!」くあっ!
「でも、どういう理由で倒れたんだろ……もしかして、持病の病気があったりするんじゃ……」
心配無い、綺麗で健康な心臓をしている。
「私達が気を揉んでも仕方ありませんわ。それに、どんな困難があろうとも……かぐや様には会長が付いていますから!」
(この困難を機に、2人の距離感もより一層縮まる事になるでしょうし!)
それが原因で運ばれている。
「……」
(この人達って2人っきりだとこんな会話をしてたのか、発言を戒めるツッコミ役が居ないからボケとボケがセッションしてる様にしか見えない……)
酷い言われ様である。
「あ、会計君!」
「あら、石上会計。」
「どもっす、四宮先輩の話ですか?」
「あら、聞いてましたのね。えぇ、とても心配していまして……登校前にエリカと一緒にかぐや様の回復祈願もしましたし、大丈夫とは思ってるんですけど……」
「かぐや様が登校されてなかったら、明日もやるつもりだったしね。」
「……お詣りするくらいなら、お見舞いに行けば良いんじゃ?」
「お見舞い!? したいに決まってるでしょ! 行きたいに決まってるでしょ!? でもっ……! かぐや様を見ると尊さが溢れ出しちゃって、頭がぐわんぐわんするの!!」
「……ガチ勢先輩って、もしかしてそっちの方なんですか?」
「そっち?」
「あー……いや、なんでもないです。」
「石上会計は考え過ぎですわ。エリカは別に、かぐや様に対して恋慕の情がある訳では……」
無い、と言い切ろうとしたかれんだったが……
………
〈1学期某日〉
「ご覧になって!」
「白銀会長とかぐや様ですわ!……あぁ、会長にだったら私……」
「私はかぐや様でも……」ポッ
「」
(……え?)
私はかぐや様でも……
私はかぐや様でも……
私はかぐや様でも……
「……え?」
………
「いや、んーーー?……無いとは言い切れませんが、概ね大丈夫ですので!」
普段から隣で見ている
「そこは言い切って欲しかったですね……」
「何の話かわからないけど……とりあえず、エアかぐや様と一緒に居ても平気になったら考えるわ!」
「なんですか、エア四宮先輩って?」
「ほら、此処に居るでしょ?」
そう言うとガチ勢先輩は、何も無い隣の空間を両手で覆う様に動かし始めた。これは……救急車を呼ばないとダメか?
「はわぁっ!? す、すみません、かぐや様っ……私ったら、幻だからってつい馴れ馴れしく……」
「救急車呼びますね。」
「私が救急隊員に説明する羽目になりますので、それだけはやめて下さい!」
数日後、四宮邸……
「……で、どうして逃げ出しちゃったんですか?」
「私だって逃げたくて逃げてる訳じゃないのよ! でも……っ!! 会長の顔を見ると、体育倉庫の件を思い出しちゃって……頭がぐわんぐわんするの!!」
「あー……」
「……多分脳の病気よ、血栓とか出来てたらどうしよう……」
「心臓病の次は頭の病気ですか。まぁ、図らずも正解に近付いてはいますが……」
かぐやがルーティーンを獲得する……3日前の出来事である。