石上優はやり直す   作:石神

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藤原千花は応援したい

期末テストも無事終わり、残されたイベントは奉心祭のみとなった秀知院学園……とは言え期末テストは終了したばかり。久々に週末は羽を伸ばそうと、休日の予定を友人と話し合う秀知院生達。それは、生徒会役員も例外では無く……

 

〈中庭〉

 

テスト明けの放課後……僕はいつもの様に、誰にも見つからない中庭の隅で早坂先輩と駄弁っていた。テスト明けという事もあり、今日は生徒会の仕事も無いので時間に余裕はある……とは言っても、2人で何処かへ遊びに行く訳にはいかないので、此処が僕と先輩のお決まりの場所になっていた。暫く他愛の無い話をしていると……

 

「あ、ちょっとごめん。」ブーブー

 

先輩はスマホを取り出してポチポチと操作した後、小さな溜め息を吐いた。

 

「はぁ、また面倒な……」

 

「何かあったんですか?」

 

「うん……今日の夜、書記ちゃんが泊まりに来る事になったみたい。」

 

「へー……ん? もしかして、藤原先輩が泊まりに来るのって初めてだったりします?」

 

「え? 何回か泊まりに来てるけど、どうして?」

 

「いや、藤原先輩は早坂先輩が四宮先輩のお付きって知らないみたいですけど……何回か泊まりに来てるんなら、その時に鉢合わせして知っててもおかしくないのになと思って……」

 

「あぁ、そういう事。私、書記ちゃんが来てる時は男装してるから鉢合わせしても大丈夫なの。」

 

「男装!? えー、そこまでしてるんですか……っていうか、男装ってバレないもんなんですね。」

 

「意外とね。優君相手なら、多分通用しないと思うけど……私の演技って凄い滑稽らしいから!」

 

「もしかして……この前言った事、根に持ってます?」

 

「別に〜?」グリグリ

 

「……」

(コレ絶対根に持ってるな……)

 


 

〈四宮邸〉

 

「……でね! 最近、男子達が怪しいの!」

 

「なるほどぉ……」

 

「……」ポチポチ

 

その日の夜……恋話に講じるかぐや様と書記ちゃんの傍らで、私は優君とメッセージの遣り取りをしたり、一緒に撮った写真を眺めたりしていた。

 

「最近の石上くんは、昼休みとか放課後に1人で何処かへ行ってるみたいなの! 誰かと逢い引きしてるんじゃないかと思ってるんですけど……何処に行ってるのかも、誰と逢ってるかもわからないんですよねぇ……」

 

「大変ねぇ……」ウトウト

 

「……」ポチ、ススッ

 

「会長も誰かに恋してそうですけど、誰かがわからないんですよね〜。」

 

「ですねぇ……」フラフラ

 

「あ……」ポロッ

 

「あ、ハーサカ君、スマホ落としまっ……!?」

 

少し写真を拡大しようと指で操作した時に、誤ってスマホを落としてしまった。私が拾うよりも早く、書記ちゃんがスマホへと手を伸ばす。

 

「ええっ!? な、なんで石上くんの写真が!?」

 

「あっ! そ、それは違うんです!」バッ

(危なかった……優君をアップにしてたからバレて無いみたいだけど、優君の隣には私も写ってるし、あまり長い時間見られる訳にはいかない。)

 

(っ!? は、ハーサカ君のこの過剰な反応……さっきまで嬉しそうにスマホを眺めていた表情……そのスマホ画面には、石上くんの写真……更には、ハーサカ君の男性にしか恋愛感情を抱かない発言! ま、まさか、これって…これって……!)

「ウッ!? せ、洗面所行って来ます……」ポタポタ

 

「……はぁ、危なかった。」

 

「はれぇ? 早坂ぁ、藤原さんはぁ……?」

 

「書記ちゃんなら、お手洗いに行ってますよ。かぐや様もそろそろお休みになって下さい。」

 

「ぅん、やすむぅ……」ウトウト

 

………

 

「かぐやさん、お待たせしま…ってアレ?」

 

「スゥ…スゥ……」

 

「あちゃー、かぐやさん寝ちゃってますね。もっと恋バナとかしたかったんですけど……」

 

「……千花お嬢様も、そろそろお休みになってはいかがでしょう? テスト明けとはいえ、夜更かしをしてはお身体に障ります。この通り、かぐや様も眠ってしまいましたし……」

 

「……」

 

「千花お嬢様?」

 

「ハーサカ君は、男の人が好きなんですよね?」

 

「はい、勿論です。」

 

(そ、そんな当然みたいに……!)

「じ、じゃあ! 今、好きな人とか……居たりするんですか!?」

 

「好きな人……ですか? あまりそういった話題には、馴染みがないのですが……」

 

「じゃあ質問を変えます!! 一緒に居るだけで楽しいと思ったり、会う時間が待ち遠しく感じたり……そういう人は居ないんですか!?」

 

「そんな事を言われても……」

 

それはズルいですってぇー!

 

「……」

 

……どうですか、猫って可愛いでしょ?

 

「……」

 

よく頑張りましたね、先輩は偉いです

 

「……ッ」

 

何故かはわからない……だけど、その記憶を思い出した瞬間……カッと顔が熱くなるのを感じた。

 

「い、居ませんよ、そんな人……」プイッ

 

「っ!?」

(居る人の反応!?)

 

「も、もう良いでしょう? 千花お嬢様も、そろそろお休みになって下さい。」

 

「こ、これって……そういう事?」ボソッ

 

……何やら妙な勘違いをしていそうな書記ちゃんをかぐや様の隣に押し付けると、私は直ぐに自室へと引き上げた。随分とハーサカ()と優君の関係について、興味がありそうだったけど……

 

「ふぁっ……」

 

私自身も眠気を感じ始めた為、先程までの思考を隅に追いやる。まぁ男装した状態で優君と会ってる所を見られでもしない限り、今日限りの興味で終わる筈だと……この時はそう思っていた。

 


 

数日後……

 

〈秀知院学園校舎裏〉

 

「ハァ…ハァ……」

 

「いい感じです……このラップなら、きっと会長の想いは伝えられると思います!」

 

「あぁ……ありがとな、藤原。」

 

「最初は会長のラップを聞かされる人が気の毒で仕方なかったですけど、コレなら問題ないですね!」

 

「言葉を選べ。」

 

「早速相手の人に連絡しましょう!」ウキウキ

 

「あぁ、挑戦状を叩きつけてやる!」ピッ

 

「……!」ワクワク

 

「急で悪いんだが、明日とか時間作れるか?……ハーサカに大事な話がある。」

 

「えっ!?」

(会長が想いを届けたい相手って、ハーサカ君なの!?)

 

〈学校終わって4時とかなら……〉

 

「あぁ、それで良い……じゃあ、芝公園で待ってる。」ピッ

 

「か、会長! もしかして、電話の相手ってかぐやさんの所のハーサカくっ……!?」

 

「なんだ、知ってたのか? まぁ、そうだ……四宮には内緒で頼む。俺とハーサカはほら……一応男と女な訳だし。」

 

「男と女!? え、じゃあどっち!? 一体どっちが女(側)なんですか!?」

 

「そんなもんハーサカに決まってるだろ。」

 

「決まってるんだ!? じゃあ会長は、ハーサカ君の事を1人の女として見てるって事ですか!?」

 

「それはそうだろ。」

 

「それはそうなんだ!?」ガビーン

 

………

 

「……と言う訳で、会長さんにお呼ばれされちゃったので、明日の放課後はお暇を頂きますね。」

(……電話越しに書記ちゃんの声も聞こえて来たから、用心の為に男装して行きますか。)

 

「」ゴゴゴゴゴッ

 

妙な圧を感じて振り返ると、かぐや様が凄まじい圧を発しながら私を凝視していた。はぁ……かぐや様がさっさと会長さんに告白して付き合っていれば、こんな事で嫉妬する事も無いのに……

 

「かぐや様、大丈夫ですから安心して下さい。仮に会長さんが告白して来たとしても……ちゃんと振りますから。」

 

「早坂は会長の何処が不満なの!」くわっ!

 

「振って良いのか悪いのか、どっちなんすか。」

 

「だ、だって……もし会長が早坂に告白して振られてしまったら、きっと傷付いてっ……」

 

「……傷心状態の会長さんなら、簡単に落ちるかもしれませんよ?」

 

「そ、それは流石に会長が可哀想というか……」

 

「そうですか……残念です。個人的には、これ以上無いってレベルでこっ酷く振るのも、吝かではなかったのですが……」

 

「早坂は会長に何か恨みでもあるの!?」ガビーン

 

………

 

〈藤原邸〉

 

「……ん?」

(あれ? でもハーサカ君は石上くんの写真を持ってたんですから、気持ち自体は石上くん寄りな筈……つ、つまり、会長と石上くんがハーサカ君を取り合う泥沼展開になる可能性もある!? ど、どうしたら良いんでしょう!? ハーサカ君の気持ちを大事にするべきか、会長の頑張りを応援するべきか……うわぁーん! 悩まし過ぎますー!?)

 

本日の勝敗、藤原の敗北

加速する勘違いに、終始悩まされてしまった為。

 


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