石上優はやり直す   作:石神

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早坂愛は気付かれたい

〈都内某所〉

 

「早坂、早くして! 売り切れてたらどうするの!」

 

「そんな直ぐには売り切れませんよ。」

 

先を急かすかぐや様にそう答え、私はとある店の前で立ち止まった。ピンク色に塗装された派手な外装を一瞥し、放たれる煌びやかな光をその身に受けながら……私は女性下着専門店へと足を踏み入れた。

 

「はぁ……」

 

事の発端は昼休み、かぐや様が偶々立ち聞きした女子生徒2人の会話が原因だった……

 

………

 

〈中庭〉

 

「ねー、ちょっと聞いてよ! コレ着けてるだけで、彼氏がメロメロになっちゃってさー!」

 

「っ!?」ササッ

 

「あ、もしかしてそれって、最近人気の?」

 

「そそ、男を魅了する魅惑の悩殺ブラ!」

 

「っ!?」

(悩殺ブラ!? 今時ってそんなのもあるの!?)

 

「いいなー、私が買いに行った時は売り切れてたから、買えてないんだよねぇ……」

 

「じゃあ、今度一緒に買いに行こうよ! 私ももう一着欲しいし!」

 

「あ、良いねー! 行こう、行こう!」

 

「……っ!」

(男を魅了する魅惑の悩殺ブラ……コレよ!!)

 

………

 

かぐや様から話を聞きネットで調べると、この店が新しく入荷した悩殺ブラを展示するらしい……その情報を掴んだ私とかぐや様は、学校が終わると直ぐにタクシーに飛び乗って此処まで来た……という訳だ。

 

「はぁ……態々放課後の貴重な時間を利用しなくても、ネットで注文すれば直ぐ届くのに……」

 

「早坂! 早く!!」

 

「はいはい、わかりました。」ムー

(かぐや様が今すぐ欲しいだなんて子供みたいな事を言わなければ、少しは優君と会う時間もあったのに……)

 

………

 

その頃の石上……

 

「い、石上編集は……同性愛について、どう思ってまして!?」

 

「ナマ先輩……ナマモノで同性愛に手を出したら、二度と戻って来れなくなりますよ。」

 

………

 

「かぐや様と同じ日にお泊まり会をしたんだけど、これは実質……かぐや様とお泊まりをしたと言っても過言じゃないよね!? ね!?」

 

「過言ですねー。」

 

やべー奴らの相手をしていた。

 


 

かぐや様と悩殺ブラを捜索していると、あるブラが私の興味を引いた。私はそのブラを持つと、かぐや様へと話し掛ける。

 

「かぐや様、かぐや様。」

 

「何よ? 目当ての物は見つかったの?」

 

「見て下さい、書記ちゃんサーイズ……」バンッ

 

「っ!!?」

 

「コレ、凄いですよねぇ……スイカのボールネットくらいありますよ。」ユサユサ

 

「す、スイカ……」

 

「因みに、コレが監査ちゃんサイズです。」スッ

 

「えっ!? そ、そうなの!?」

(……え? 伊井野さん大きくない? もしかして、生徒会の中で私が1番……)

 

「えーと、かぐや様のサイズは……」ガサゴソ

 

「態々探す必要があるかしら?っていうか、貴女は知ってるでしょ?」ガシッ

 

「そうでしたね、すみません。」

 

「もう! バカな事やってないで、早く目当てのモノを探して!」

 

「怒りました?」

 

「怒ってない!」

 

………

 

「ねぇ早坂……やっぱり会長も、胸が大きい方が好みなのかしら……」

 

「まぁ……男性は生物学的に、本能で胸が大きい方を好むと言われていますからね。」

 

「うっ、やっぱり……」

 

「でも会長さんは、胸の大きさで優劣を決める様な人じゃないと思いますけどね。多分、好きになった人のサイズがそのまま好みになるタイプかと。」

 

「ほ、本当? 本当にそう思う!? べ、別に私は、そこまで気にしてる訳じゃ無いけどね? ただ会長には、見た目に惑わされる様な価値観を持ってもらいたく無いと思ってるだけでっ……!」

 

「はい、勿論です。かぐや様みたいなペチャでも、きっと愛してくれますよ。」

 

「」

 

「……あ、ありましたよ。かぐや様、念の為試着して来て下さい。」

 

「ウン、シテクル……」

(ペチャ……)

 

「かぐや様、サイズはちゃんと合ってますか?」

 

「ウン、アッテル……」

(ペチャ……)

 

「買われるのなら、レジに持って行きますが?」

 

「ウン、カウ……」

(ペチャ……)

 

「では私は会計を済ませて来ますので、着替えて待っていて下さい。」

 

「ウン、マッテル……」

(ペチャ……)

 

かぐや様からブラを受け取ると、私は会計をしにレジへと向かった。その途中、悩殺ブラを展示している棚が目に入った。人気というのは本当らしく……展示棚には既に一着しか残っておらず、完売するのも時間の問題なのがわかった。

 

「悩殺ブラか……」スッ

 

無意識にブラのサイズを確認すると、私のサイズとピッタリ一致していた。その事実が最後の後押しとなり、私はブラを手に取るとそのままレジへと向かった。

 

………

 

〈四宮邸〉

 

帰宅後……かぐや様は素早く袋からブラを取り出すと、ウキウキ顔で眺めている。

 

「コレで会長を悩殺出来るのねっ! ふふ、会長が悩殺される姿……楽しみだわ!」

 

「……かぐや様、1つ確認しておきたい事があるのですが?」

 

「えぇ、何?」

 

「先程かぐや様は、その悩殺ブラで会長を悩殺すると言っていましたが……実際に見せつけて、性的に誘惑するという事で間違いないですか?」

 

「あ……」

 

かぐや様はそう指摘されて、初めてその考えに至ったという表情で固まった。

 

「はぁ……本当にかぐや様は、情け無い程ポンコツになられて……」

 

「ポ、ポンコツ!?」

 

「悩殺ブラなんですから、実際に見せないと効果が無いなんてわかりきってるじゃないですか……もしかして、本当に着けているだけで会長を悩殺出来ると思ってたんですか? 多分そのブラは、勝負下着の一種だと……」

 

「つ、着けてるだけで悩殺出来るもん! 私くらいになると、態々見せなくても悩殺出来るんだもん!」

 

「やばいフェロモンでも出るんですか?」

 

「もう! そんな事言うなら、早坂には貸してあげないから!!」

 

「かぐや様……その心遣いは大変嬉しいのですが、私がかぐや様のブラを身に着けるのはサイズ的に無理があるかと。」

 

「」

 

本日の勝敗、かぐやの敗北

折角、悩殺ブラを買ったのにお蔵入りする事になるし、従者の遠慮の無い発言に精神的ダメージを食らうなど、踏んだり蹴ったりだった為。

 


 

次の日……

 

「この最新機種が気になってて……」チラ

 

「あー、わかります。僕もちょっと機種変しようか迷ってて……」

 

「でもこの機種の方が機能自体は上だから、どうしようか迷ってるんだよねー……」チラチラ

 

「……あの、僕の顔に何か付いてます?」

 

「んーん、何でもないから気にしないで?」

(まぁ、わかってたけどね……念の為着けて来ただけで、本気で着けただけで魅力が上がるとか思ってた訳じゃ無いし……)

 

「そうですか……あの、先輩? 何か怒ってます?」

 

「別にー!」プクー

(……っていうか優君は私の変装を見破ったり、普段から細かい事に気付いたりしてるんだから、今回も気付くべきじゃないの? あ、早坂先輩、今日は何か色っぽいですね? みたいな!)

 

「……?」

 

石上は理不尽な怒りを向けられた。

 

………

 

「そういえば……2年は進路相談があったんですよね? 早坂先輩はどんな感じだったんですか?」

 

「とりあえず、転職希望は出しといた。」

 

「転職希望て……」

 

「優君も来年は進路相談だけど、何か将来的な希望とかあったりする?」

 

「え、僕ですか? そうですね……進路に関しては、特に展望がある訳じゃ無いんですけど……」

 

私が優君にこの話題を振ったのに、大した理由があった訳ではない。会話の流れで何気なく振った、ありきたりな質問のつもりだった。でも……

 

「来年は……また早坂先輩と遊びに行ける様になってたら良いな、とは思ってます。」

 

「……え?」

 

「早坂先輩が何にも気兼ねなく過ごせる様になってたら、色々な所へ遊びに行きたいじゃないですか。バッティングセンターも良いですけど……早坂先輩は最新機器に詳しいですから、大手家電量販店やPC専門店、ジャンク店巡りなんて面白そうじゃないですか?」

 

優君はなんでも無い様に……そう答えるのが当たり前の様な表情でそう言った。

 

「来年が無理なら再来年……それが無理だったら、更に次の年に必ず遊びに行きましょう。」

 

「……ッ」

 

トクンと心臓が跳ねて、カッと顔が熱くなった……そんな事を言ってくれるなんて、思っていなかったから……優君は今年だけじゃなく、来年も再来年も……私の側に居てくれるつもりなんだ。私が四宮家から解放されるまで、一緒に頑張ってくれるつもりなんだ……その考えに至った瞬間、胸の奥からよくわからない感情が込み上げて来た。

 

「……ッ!」

 

この感情に従ってはダメだと直感で理解した私は、話を逸らす話題を口にする。

 

「……もう、優君てば気が早いよ? それより知ってる? 再来年の次って、明明後年て言うんだって。」

 

「へー、そうなんですか? 僕はてっきり、再々来年とかと思ってました。」

 

「まぁ、あまり使う機会なんてないからねー。」

 

………

 

「あ、僕そろそろ生徒会なんで……」

 

「うん、またね。」ヒラヒラ

 

優君が去って行くのを見送り、周囲に誰も居ない事を確認すると……

 

「……ッ! ッ!」パタパタッ

 

私は顔を伏せると、両膝を抱えてパタパタと足先を跳ねさせる。何故かはわからないけど、胸の辺りがムズムズする……優君を揶揄った時に感じた感覚とは、また別のむず痒さ……嬉しいとか、恥ずかしいとか、そんな感情が混ざり合った……

 

「」ガサッ

 

「誰っ!?」

 

「……ンニャ!」

 

「なんだ、君か……今の見た?」

 

「ニャゥ……?」

 

「……誰にも言わないでね?」ナデナデ

 

「ニャ!」

 

「ふふ、ありがとね。はぁ、熱い……」パタパタ

 

「ナゥ?」

 

初めて感じる不思議な感情に……暫くの間、私の顔の熱は取れないままだった。

 

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