僕の様子に?マークを浮かべる大友をなんとか躱し、逃げるように自室に逃げ込んだ。
なんなんだコレは!? 事故って過去に戻るとか……ラノベかよ!!
いや、そりゃ逆行モノのラノベとかも読んでたし、少しはいいなぁとか思ったよ? 思ったけど!!
……まさか自分が直に体験するとは思わなかった。
自室を見渡すと当たり前の様に高校の制服は無く、部屋に置いてある漫画やゲームのラインナップも中学時代のモノだった。
今更過去に戻った事を疑いはしない……僕が死んだのが夢で、それ以外が壮大なドッキリだったとしても……大友が僕に笑いかけたという事実がソレを否定する。
過去に戻ったのは間違いない……
壁に掛けられたカレンダーに目をやると4月と表示されている。
ポケットに手を入れ、スマホを取り出し確認する。
中学だから少し型の古い機種だ……入学式から1週間経った頃か。
「ふぅー……」
息を吐きながら思い出す。
自分を暗闇から引っ張り出してくれた会長の言葉と自分の思考が交互に浮かんで来る。
正しい正しくないを論じるつもりはない
今はあの事件の半年前……
もっとスマートなやり方があったのは事実だ
もしかしたら、やり直す事が……出来るかもしれない?
頑張ったな石上……
……違う、やり直すんだ。
よく耐えたな
会長は言ってくれた……
お前はおかしくなんてないと!
やり直すんだ、大友を荻野から救う!
もし、あの事件がなければ会長達と僕との接点は消えるだろう……
生徒会役員が生徒会長の指名制である以上、高等部に進学しても僕が再度生徒会に入れる保証はない。
……まぁもし生徒会に入れなくても、さり気なく会長と四宮先輩のフォローをしよう。
今思えば……あの2人は僕が生徒会に入った頃から既にお互いを意識していた様な気がする。
巻き戻ったこの人生では、あの言葉を会長から言われる事はないだろう……
だからといって会長や……皆に対する恩がなくなる訳じゃない!
「すぅ、はぁー……」
深呼吸をしてこれからやるべき事を頭の中でまとめる。
先ずは僕自身が変わる事。
荻野の件にどう関わるにしても、僕自身が周りから信用されないんじゃ同じ結末にしかならない。
信用されるには実績が必要だ。先ずは7月の期末テストの成績で上位……出来ればトップ10入りする。
部活動も、陸上部に入り直して最後の大会で結果を出す!
それ以外でも色々やろう。
……不意に、目が覚める直前まで目の前に居た少女を思い出す。
伊井野には悪い事したな……お前は悪くないとは言ったけど、伊井野の性格上絶対気にするよなぁ……
「罪滅ぼしじゃないけど、アイツにも何か……」
無意識に呟いた言葉は夕陽に染まった部屋に吸い込まれるように消えていった。