石上優はやり直す   作:石神

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石上優は仕掛けたい②

 

そんな訳で、今日はこうしてかぐや様の文化祭デートを見守る事となったのだった。ちなみに……今の私は、対書記ちゃん用の男装に身を包んでいる。優君と一緒に行動する事になるので、四宮家に対しても必要な備えだし、何より……これならナンパをされる心配も無い。優君もプリムが広めの帽子を被り伊達メガネを付けているので、パッと見では優君とわからない筈だ。

 

「やっぱり……会長と四宮先輩が並んで歩くと、かなり目立ちますね。」

 

「ま、片方は学ランだしね。」

 

前を歩く2人とすれ違った人間は、3人に1人は振り返ったりチラチラと視線を送っている。学ラン姿の会長さんもその要因だろうけど、振り返る人間の殆どはかぐや様を見ている……まぁ、それも仕方の無い事だ。かぐや様は中身はアレだけど、人目を引く容姿をしているし……中身は本当にアレだけど。

 

大体1〜2クラス分程距離を取って監視しているので、会長さんが私達に気付く事は無い筈だ。かぐや様も会長さんとの文化祭デートという事実に、周りを気にする余裕は無いみたいだし……

 

「早坂先輩、コレ要ります?」

 

「え?」

 

2人の動向に気を配っていると……優君から目の前に何かを差し出された。私は直ぐに焦点を合わせて何かを確認する。

 

「あ、コレ……」

 

「……滅茶苦茶似てますよね? 先輩さえ良かったら貰って下さい。」

 

それは中庭でよく見掛ける、あの猫ちゃんそっくりのキーホルダーだった。私は手のひらにソレを乗せると、優君へと訊ねる。

 

「……良いの?」

 

「はい、四宮先輩の事が心配なのもわかりますけど……折角来たんですから、僕達も文化祭を見て回りませんか?」

 

「え、でも……」

 

「四宮先輩なら大丈夫です。会長が付いてますから、ナンパとかもされないでしょうし。」

 

「それは、そうかもだけど……」

 

「……少しだけです。会長達と鉢合わせしない様に気を付ければ、少しは見て回れると思うんです。このキーホルダーを売ってた出店、コレ以外にも色々あったんで見に行きませんか?」

 

「……」

 

優君の言う通り、かぐや様には会長さんが付いているから大丈夫だし、少しくらいなら優君と文化祭を見て回っても問題無いだろう……私は先程手渡された猫ちゃんキーホルダーを大切に仕舞うと、優君へと向き直った。

 

「もう……少しだけだよ?」

 

「はい!」

 


 

それから、私と優君は2人で出店を見て回った。目立たない様に、周囲に気を配る事には気を付けていたけど……それらの事を忘れそうになってしまう程、私は優君との文化祭を楽しんだ。

 

「あ……この猫ちゃんキーホルダーって色違いのもあるんだね?」

 

「あ、本当ですね。折角ですから、僕も買っておきます。」

 

「ふふ、お揃いだね?」

 

「ははは、そうっすね。」

 

「……」

(あれ? これって……)

 

「……」

(恋人同士がよくしてる、ペアキーホルダーというモノなんじゃ……?)

 

「……ッ!」

 

その事実に気付いた瞬間、カッと顔が熱くなった。私は動揺している事を悟られない様、すぐに別の話を振った。

 

「……つ、次は何処行こっか?」

 

「そ、そうですねっ……何か軽く食べられる物でも買いに行きましょうか!」

 

僅かに上擦った声で返事が来た。もしかして、優君も同じ事を考えてたのかな? だったら、良いな……

 

「先輩、あっちに綿菓子がありますよ。」

 

「へぇ、綿菓子か……普段食べる機会なんて無いし、折角だから食べようかな?」

 

「じゃ、行きましょう。」

 

………

 

「わぁ、この綿菓子大っきいね?」

 

「ははは、これで50円ですからね……儲け度外視の如何にも高校生らしい値段設定です。」

 

「誰目線なの?」

 

ちびちびと綿菓子を頬張りながら、隣を歩く優君へと視線を向ける。周囲の人からは、帽子が邪魔で顔が見え辛いだろうけど……隣を歩く私には、その優し気な空気を纏った顔がハッキリと見えている。

 

「ね、ねぇ優君……」

 

「ん、どうしました?」

 

「……ッ」

 

「先輩?」

 

「ゆ、優君も食べる?」

 

スッと優君の前に綿菓子を差し出して問い掛ける。

 

「え、いっ……良いんですか!? だってコレ、関節的にお互いの口が当たる事に……」

 

「ち、ちょっと! そういうのは、思っても口に出すモノじゃないでしょ!」

 

「す、すいません! じ、じゃあ……頂きます。」

 

「……うん。」

 

「……ん、美味いっす。」

 

「そっか、なら良かったかな……」

 

「……」

 

「……」

 

私は優君から視線を外して、黙って綿菓子を見つめる。優君も恥ずかしさに耐えられなくなったのか、そっぽを向いてしまった。暫くお互いに無言で歩いていると、優君が沈黙を破った。

 

「……次は何処行きましょうか?」

 

「んー、そうだね……」

 

次の行き先に悩んでいると、目の前を横切った2人から気になる会話が聞こえて来た……

 

「気の所為かもしれねぇけど、さっき白銀っぽい奴見たんだよな……」

 

「へぇ、服装は? 学ランなら100%白銀だけど。」

 

「チラっとしか見えなかったから、学ランなのか黒い服なのかわかんなかったんだよ。」

 

「へー、白銀だとしたら文化祭の視察とか? 」

 

「あー、有り得るな。」

 

良く見るとその2人は、会長さんを合コンに誘った友人達だった。今思えば……この2人が会長さんを合コンに誘わなければ、私が酷い目に遭う事もなかったのだ。その事に気付くと、恨みがましい視線が無意識に2人へと向かう。

 

「……」

 

「先輩? どうかしましたか?」

 

「うぅん、何でもっ……」

 

無いと答え様とした時、またしても2人の会話が耳に届いた。

 

「ん? アレって白銀じゃね?」

 

「……ッ!」

 

その言葉に視線を先へと向けると、僅かに会長さんの後ろ姿が見えた。隣を歩くかぐや様は、他の来場者の陰に隠れていて気付かれていないが、このままでは時間の問題だろう。

 

「え、マジで白銀居るの? 誰かと一緒?」

 

「んー……? こっからじゃよく見えねぇな、近付いて確かめてみようぜ!」

 

「優君!其処の空き教室のドア、開けておいて!」

 

「え? わかりました……」ガラッ

 

「ッ!」

 

私はすかさずポケットからスプレー缶を取り出すと、背後から手を回して2人の顔へと噴射した。

 

「……ッ!ッ!」シューシュー

 

「おーい、白がっ…z z z」バタッ

 

「え? 風祭、いきなりどうしっ…z z z」バタッ

 

倒れる2人を壁に凭れ掛からせて、そのまま壁沿いの空き教室へと引っ張り込んだ。咄嗟の対応にしては、中々の手際だったと自画自賛しておく。

 

「これで良しっと……」パタンッ

 

「」

(なんて容赦の無い……)

 

「……!」フフンッ

 

「いや、こんなもんですわって顔されても……」

 

「とりあえず……1時間は起きない筈だから、このまま此処に置いておこっか?」

 

「……そうですね。」

(身をもって知ってます……)

 

「はぁ、危なかった……」ガラッ

 

かぐや様の障害を排除した事に安堵し、軽く伸びをして空き教室を出る。

 

「すいません、ちょっと気を抜き過ぎましたね。」

 

「うぅん、気にしないで。結果的に間に合ったし、私も遊び過ぎちゃったしね。ただ、ここからはまた監視に戻らないとね。」

 

「……そうっすね。」

 


 

数時間後……私は優君と一緒に、空き教室から外を眺めていた。並んで校門から出て行く、かぐや様と会長さんの後ろ姿を見送ると……私は優君へと向き直る。

 

「優君、今日はありがとね。」

 

「いえ、此方こそっす。」

 

「でも、優君も物好きだよね……態々休日を潰してまで、あの2人の恋路をサポートするなんて。」

 

「普段から会長と四宮先輩にはお世話になってるので、恩返しみたいなモノです。」

 

「ふーん……?」

 

「……っていうのは、建前です。あの2人なら……僕が何かしなくても、そのうち付き合う事になるでしょうし。」

 

「え? だったらどうして?」

 

「少し前に……早坂先輩は、自分の事しか考えてないって言った事がありましたよね?」

 

「え? うん、言ったけど……」

 

「僕も……自分の事しか考えてないんですよ。今回、会長と四宮先輩の文化祭デートをお膳立てしたのは……それを利用して、早坂先輩と遊びたかったからです。」

 

「……え?」

 

「自分で言った《いつか》が待てなくて…… 会長と四宮先輩の2人を利用する事で、ほんの少しでも早坂先輩と遊ぶ時間を作りたかった……それが、僕が今回の件に関わった本当の理由なんですよ。」

 

「……ッ」

 

「早坂先輩はどうでした? 少しは楽しんでもらえたのなら、僕としては嬉しいんですけど……」

 

少しだけ自信無さ気に、私の答えを待つ優君を見て……色々な感情が湧き上がって来るのを感じた。私は必要以上に声に感情が乗らない様気を付けながら、言葉を紡ぐ。

 

「……楽しかったよ、本当に楽しかった。」

 

「……それなら良かったです。」

 

夕日が私達の居る教室を紅色に染める。これなら、例え顔が紅くなっても気付かれない筈だ……ホッと息を吐く優君を見つめながら、私は言葉を続ける。

 

「優君は……優しいよね。」

 

「え?」

 

「今回の事もそうだけど……私が嬉しいって思う事を言ってくれるし、私がして欲しいって事をしてくれるけど……どうして、そこまで私の為に色々してくれるの……?」

 

心臓が強く脈打つのに耐えながら、私は優君へと言葉を投げ掛ける。もしかしたら……なんて期待を抱かずにはいられない程、優君の行動や言葉には……そういう意味が含まれている気がしたから。

 

「……」

 

「……」

 

私は優君の言葉を黙って待つ……10秒程すると、優君が小さく息を吸ったのがわかった。

 

「……早坂先輩、奉心祭で先輩の時間を少しだけ僕にください。先輩に……言葉にして伝えたい事があります。」

 

「……ッ!? そ、それって……!?」

 

「……そろそろ帰りましょうか。」

 

「え、あ…そ、そうだねっ……!」

 

四宮家の事があるから、優君と一緒に帰る事は出来なかったけど……この時だけは、その事が少しだけ有り難かった。

 


 

〈四宮邸自室〉

 

「はぁ……」ポフン

 

その日の深夜……かぐや様の惚気話を聞き終えた私は、1つ息を吐くとベッドに身を投げた。

 

「今日は本当に色んな事があったなぁ……」

 

かぐや様と会長さんの文化祭デートを見守って、私もちょっとだけ優君と文化祭を回って、邪魔者を排除して、そして……

 

……早坂先輩、奉心祭で先輩の時間を少しだけ僕にください

 

「……ッ」

 

先輩に……言葉にして伝えたい事があります

 

「~~~~~っ!!」パタパタパタ

 

結局その日は……顔の火照りが治らなかったので、中々寝付く事が出来なかった。

 

 

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