石上優はやり直す   作:石神

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全3話の予定です。
SF的な要素があります。
生徒会メンバー+各√ヒロインがワチャワチャする話が書きたかったので、特殊設定になるのは仕方ない……仕方ないんや。



石上優の女難①(番外編)

 

桜の花が舞い散り、別れの季節から出逢いの季節へと移行する時期……周囲にはポツポツと見慣れない顔が目立つ。今年の春から秀知院学園に通う事になった1年生だろう。その表情は新しい環境に対する期待と不安に彩られている。

 

斯く言う僕も……多少の期待や不安を感じながら、新たな環境に想いを馳せている。前回の僕は2年生に進級する事も無く、中等部時代に逆戻りする事になった。今までは既に体験した記憶や知識を使い、上手く立ち回る事が出来ていたけど、此処から先は今までの様に前回の記憶を使った対応が取れない為、多少の不安は感じている。

 

「ま、なんとかなるか」

 

やり直す機会に恵まれ、自分としては最良の結果を得る事が出来たと思う。これから先も、たとえ何があっても大丈夫だと思えるし、何かが起きてもその結果を受け入れるだけのメンタルだってある。そうやって自分の考えを再確認すると、僕は新しく在籍する事になる……2年A組を目指して歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2年A組 生徒会役員 会計 石上優

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

備考……彼女無し

 


 

〈3年A組〉

 

「ほう、随分と珍しいモノを見たな」

 

俺は先程の光景を思い浮かべながらそう呟いた。その光景は本日最後の授業が終わり、身支度を整えながら何気なく外に視線を向けた瞬間にやって来た。雲の隙間から幾筋の太陽光が射す〈天使の梯子〉と云われる神々しい光景。天上から降り注ぎ地上を照らす、光り輝く6つの梯子……教室内の誰もが、その光景に目を奪われていた。

 

「うわー! アレ撮ってネットに載せてたら絶対バズってたのに、勿体ねぇ事したぁ!」

 

「安心しろ、俺が撮った」

 

「流石神童!」

 

「頼りになるぜ!」

 

「……」

 

「会長、そろそろ……」

 

「あぁ、行くか」

 

騒ぐクラスメイトを横目に見ていると、四宮に話し掛けられたので生徒会室へと向かう。生徒会室までの道中、話題は先程見た神秘的な光景が主題だ。

 

「しかし、さっきのは凄かったな」

 

「えぇ、とても神秘的な光景でしたね」

(まるで……私と会長が同じクラスになった事を祝福するみたいじゃない! やっぱり、私と会長は祝福されるべきカップリングなのね! ふふ♪今度御参りに行った時は、お賽銭奮発しちゃおうかしら!)

 

「そういえば、藤原は教室に居なかったな。何処かで見ているといいが……」

 

「言われてみれば……愛さんと柏木さんも居ませんでしたね。あの子達も運が悪いわ」

 

「まぁ神童がスマホで撮っていたらしいから、その内見る事も出来るだろう。皆があの光景に目を奪われていたのにな……流石は神童だ」

 

「……」

(いやだから、その神童さんに対する皆さんの評価の高さなんなんですか!? 私全然知らなかったんですけど!?)

 

「石上達も見れていたらいいが」

 

「ふふ、そうですね」

 

天上から降り注ぐ6つの〈天使の梯子〉……その神々しい光景に誰もが目を奪われ、友人達とその話題を楽しむ秀知院生達。しかし……ある特定の条件を満たした6人の少女達だけは、美しい光景を見たという感動以外のモノが去来していた。

 

「わ、なんか凄い……っ!?」

 

眼鏡を掛けた隠れ美少女は……風紀委員の仕事に向かう道中、その光景を見た。

 

「ん? へぇ、珍しい光景……っ!?」

 

帽子を被った目付きの鋭い少女は……屋上で携帯ゲームに興じている最中、その光景を見た。

 

「あ、綺麗……っ!?」

 

小柄で真面目なムッツリ少女は……生徒会室に向かう道中、その光景を見た。

 

「おー! なんか凄っ……!?」

 

アホでピンク髪のリボンをした少女は……自身が所属するTG部に向かう道中、その光景を見た。

 

「綺麗、マキちゃんも見たかな……っ!?」

 

ヤンデレ気質の黒髪少女は……友人との待ち合わせ場所に向かう道中、その光景を見た。

 

「わ、凄い光景……っ!?」

 

元使用人の金髪クォーター少女は……校内をブラついている最中、その光景を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その神々しい光景が少女達の視界に飛び込んだ瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、少女達の脳内に溢れ出した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()

 


 

〈生徒会室〉

 

「こんちゃー……す?」

 

放課後……生徒会室に入ると、室内の人口密度に面食らい足が止まる。普段なら会長、四宮先輩、藤原先輩、伊井野の4人程度の筈なのだが……室内には6人の女子達が居て、入って来た僕を凝視していた。

 

「えーと?」

 

全員が知った顔だし、何かの用で此処に来ていてもおかしくない面子ではあるのだが、女子から黙って見られると流石に居心地の悪さを感じてしまう……あれ? なんで無言で近付いて来んの? 変な圧もあってちょっと怖っ……

 

………

 

「そういえば……会長はもう新居には引っ越されてるんですよね? 住み心地は如何ですか?」

 

「あぁ、間取りやら何やらが以前住んでいた部屋と全然違うから、戸惑っている部分もあるがかなり快適だぞ。四宮も今度……」ガチャッ

 

「会長! 四宮先輩! 助けて下さい!!」

 

「は?」

 

「え?」

 

生徒会室に入った瞬間に飛び込んで来たのは、何故か椅子に縛り付けられている石上とそれを取り囲む6人の女子達……という状況だった。

 

「いや、どういう状況!?」

 

「何があったの!?」

 


 

「……」

 

僕は両手を後ろ手に縛られ身体を椅子に固定された状態で、この状況に至るまでの理由を聞く羽目になった。大仏や伊井野、柏木先輩が主な説明役を担っていて、桃先輩と早坂先輩は黙ったまま壁に身を預けている。そして、こんな摩訶不思議な状況になっているのに、1番場を掻き乱しそうな藤原先輩は大人しくしている。

 

「なるほど……話は大体わかった。つまり、今此処にいる大仏達には別世界の記憶と人格が宿っていて、全員が石上と交際関係にあると? 俄には信じられないが……パラレルワールドの様なモノか?」

 

「そうですね、記憶に関しては去年の9月からの記憶が2つ同時にある……みたいな感じでしょうか? 優と付き合っている私は生徒会に入ってますけど、この世界の私は入ってないみたいですし」

 

と、大仏が会長に進言する。なんというか……大仏に名前呼びされると妙に気恥ずかしく感じる。他の人達にも確認すると、概ね大仏の言葉と合致するらしく、僕と話す為に生徒会室に来たところ鉢合わせした……という事らしい。大仏以外にも僕への呼び方が変わっている人が居るので、それも信じる理由になりそうなんだけど……パラレルワールドとは云え、僕に彼女が居るというのが1番信じられない。

 

「……」ジト

 

「え、えぇと……桃先輩、どうかしました?」

 

「……別に? ただ、スケコマシスケベ前髪は随分とモテるんだなと思っただけだ」ゲシゲシ

 

「ちょ、変な渾名付けないで下さいよ!?」

 

「うるせぇバカ!」ゲシィ

 

桃先輩が椅子に蹴りを入れながらとんでもない渾名で呼んで来たので、思わず抗議の言葉を口にする。僕には女性陣と違って別世界の記憶が無いので、殆ど言い掛かりだ。

 

「しかし、龍珠も石上の彼女とはな……」

 

「あ? 白銀、何か文句でもあんのか?」

 

「いや、文句とかじゃないが……」

(正直、意外過ぎる……)

 

「会長、私も! 私も石上くんの彼女ですよ!?」

 

「え、お前も!? マジか藤原……」

 

「当ー然です! だって私と石上くんはっ……」

 

「いやいや、流石にそれは嘘でしょ!」

 

「ッ!?」

 

「勘弁して下さいよ、藤原先輩。今はふざけて良いタイミングじゃなっ……」

 

「ウッ…ウゥッ……!」

 

「え、藤原先輩?」

 

「うあああぁん!? 石上くんのばかあああっ!! 酷いぃ! 悪魔あぁっ! 冷徹人間!! もてあそばれたあああっ!!!」ビャー

 

「マジ泣き!? うっそ、マジだったんですか!? すいません! すいません!!」ペコペコ

 

「これは酷い」

(収拾つかないだろコレ……)

 

「はぁ、大変な事になっちゃったね……」

 

「えぇ、本当にそうみたいね……というか、どうして愛さんまで居るの?」

 

「……」

 

「……?」

 

「……ッ」ポッ、プイッ

 

「」

(えええぇぇっ!!!? もしかして愛さんまで!? 石上君たら、とんだ食いしん坊じゃない!?)

 

「ねぇ優君……知らんぷりしてるとかじゃなくて、本当に知らないんだよね?」

 

「は、はい! 柏木先輩と僕が付き合ってる世界線があるって聞いて、ビックリしてるくらいです!」

 

「柏木先輩……ね」スススッ

 

「え、あの……か、柏木先輩?」

 

「ふふ♪じゃあ、私が教えてあげる。私と優君がどんな風に愛し合って、どんな事をしてたのか……骨の髄まで、ね?」ギュムッ

 

「」

 

柏木先輩はそう言うと、僕の太腿に跨りながら身体を押し付けて来た。太腿や胸に感じるその柔らかな感触は、あまりにも刺激が強く……

 

「か、会長ー! 会長ー!!」ジタバタッ

 

「柏木ストーップ! 此処学校! 学校だからな!? 頼むから落ち着いてくれ!」

 

「優君……どうして私を拒絶するの? 私は優君じゃないとダメなのに……」

 

「そ、そんな事言われても……本当に僕は知らないんです! 柏木先輩と付き合ってた記憶も、他の皆との記憶も僕には無いんですから!」

 

「そっか……うん、ごめんね? 困らせちゃって……でも面と向かって言われると……やっぱり、ちょっと悲しいかな」

 

「」グサササッ

 

石上の心に100のダメージ。

 

「優……」

 

「チッ……」

 

「石上……」

 

「石上くん……」

 

「優君……」

 

柏木先輩の言動を目の当たりにした、四宮先輩を除く女性陣からの視線が突き刺さる……

 

「か、会長!? なんか今の僕って、色んな女子に手を出した挙句知らんぷりしてる、凄いヤリチンみたいな感じになってません!?」

 

「まんまそんな感じだぞ!?」

 

「いや、だから違うんですって! 少なくともこの世界の僕は誰とも付き合ってないんですから、言う程僕自身に責任はっ……ん?」クィ

 

「い、石上……私、捨てられちゃうの?」ウルウル

 

「だからそういうー!?」

 

「石上くん、早く思い出して下さい! あれだけ私とイチャイチャしておいて忘れたなんて言わせませんよ!?」

 

「それに関しては僕からしたら存在しない記憶なので、何とも言えませんけどね……」

 

「なんで私にだけ当たり強いの!?」ガビーン

 

「それで……もう私達以外には居ないよね?」

 

「い、いや、僕に聞かれても……」

 

「いっその事……校内放送で呼んでみましょうか? 2年A組石上優と関係を持っている女子生徒は、至急生徒会室まで来て下さい……とか? 1つ1つの問題をしっかりと終わらせて行きましょう」

 

「大仏ぃ!? それやられたら、僕の学園生活も同時に終わるんだけど!?」

 

「引っ叩いたら思い出すんじゃねぇの?」

 

「龍珠、昔のテレビじゃないんだから……」

 

「もしかしたら……距離の近い同級生と一緒に居れば、思い出すかもしれませんね」

 

「う、うん、私もそう思う!」

 

大仏の言葉に伊井野が同調する。いや、思い出すも何も記憶自体が無いから思い出せないと思うんだけど……

 

「そ、それを言ったら、ずっと同じ生徒会で過ごして来た私こそ一緒に居るべきだと思いますよ!?」

 

「んな訳ないだろ。優、いつもの喫茶店行くぞ」

 

「ふふ……時間さえ貰えれば、私が思い出させて(意味深)あげられるよ?」

 

「柏木さんは絶対違う事考えてるでしょ!? 優君! バッティングセンター行こ!」

 

「え、えぇと……」

 

「……かぐやさん! かぐやさんは、石上くんは私と一緒に居た方が良いと思いますよね!?」

 

「え?」

 

「かぐや、私だよね?」

 

「え? そ、それは……」

 

「かぐやさん?」ズイッ

 

「かぐや?」ズズイッ

 

「…ッ……ッ!」オロオロ

 

「……」

(四宮……藤原と早坂との友情の板挟みでオロオロしてるな、可愛い)

 

「か、会長ぉ……」オロオロ

 

「……2人共、四宮が困ってるからそこまでにしてやってくれ」

 

「はぁ……仕方ないね」

 

「うぅ……わかりました」

 

「……」

 

ど、どうすれば良いんだ……こんな僕を取り合う様な事をされても、無い記憶は湧いてこない。湧いて来るのは、途轍もない罪悪感だけ……ハッ!

 

「か、会長はどうなんですか!?」

 

「は? 石上、一体何を……」

 

「だって世界線はそれぞれ違えど、僕には6人の彼女が居たんですよ!? 会長はモテますから、僕以上に彼女が居てもおかしくないでしょう!?」

 

「石上てめぇ!?」

 

石上は白銀を巻き込んで事態が有耶無耶になる事を期待した。

 

「なるほど、確かにそうですね……皆さん、他の世界線での会長は何方とお付き合いをされているのでしょう?」ゴゴゴッ

 

「四宮!?」

 

「石上君の言う通り、会長はとてもおモテになりますから……確認はしておいて損はないかと」

(もし万が一、いえ億に一、会長が私以外の人とお付き合いをしていた場合、その泥棒猫には注意をしておかないといけませんしね)

 

「そんな事無いから! 俺は四宮一筋だから!!」

 

「それで……貴女達の世界線では、会長は何方とお付き合いをしているかご存じですか?」

 

「四宮先輩ですね」

 

「お前」

 

「四宮副会長です」

 

「メチャクチャ不本意ですが、かぐやさんです」

 

「四宮さんです」

 

「かぐや」

 

「……ッ!」

 

「言っただろ、俺は四宮一筋だからな……たとえ世界が変わっても、何度だって好きになるさ」

(良かったーーー!!)

 

「会長ぉ…好きぃ

 

「か、会長!? なんかコレ相対的に僕が凄い浮気性みたいな感じになってません!?」

 

「そうだよ(断言)」

 

「もおおおっ! 巻き込もうとしたのは謝りますから見捨てないで下さいってえええ!!」

 

こんな状況で会長に見捨てられたらどうなるかわからないので、全力で謝る。そうしていると、藤原先輩が皆の前に一歩踏み出して発言した。

 

「こうなったら……やるしかないみたいですね」

 

「……藤原?」

 

「藤原さん? 何をやるんですか?」

 

「誰が石上くんの1番の彼女か……恋バナ恋愛ポイント王決定戦で決めましょう!!」

 

 




存在しない記憶って便利だよね(錯乱)
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