石上優はやり直す   作:石神

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石上優は見つけたい

11月に入り、肌寒さを強く感じる季節になった今日……石上優は文化祭に向けた風紀委員の会議に参加していた。

 

「……以上が文化祭の風紀委員の主な業務になります。当日は高等部から数名風紀委員の助っ人が借りられるので、そのつもりでお願いします。」

 

「……人手不足だよなぁ。」

 

伊井野の発言を聞きながら言葉を洩らすと、隣に座る大仏と目が合う。

 

「まぁ、風紀委員はあんまり人気ないし……これでも石上が事務処理してくれてるから、かなり時間に余裕が出来てるんだよ?」

 

「そんなもんか……」

 

「質問がない様ならコレで解散とします。誰か、高等部の風紀委員にこの申請書を……」

 

「あ、じゃあ僕が持って行くよ。」

 

「……石上が良いなら頼むけど、無理しなくてもいいのよ? 本来は風紀委員の仕事なんだから。」

 

「大丈夫だよ。それに僕なら高等部に知り合いがいるし……行きづらい人が行くよりは、僕が行った方がいいだろ?」

 

「石上先輩あざーす!」

 

後輩の言葉に、別にいいよと返して書類を受け取る。

 

「じゃあ行ってくる。」

 

「石上、待ってようか?」

 

「大丈夫。時間掛かるかもしれないし、先帰ってていいよ。じゃ、皆お疲れ。」

 

大仏の言葉に答え教室を出る。

 

「……」

 

廊下を歩きながら思い出す。10月も終わりに近付いたある日、行方のわからなかった荻野が警察署に出頭したのだ。荻野が出頭する数日前、荻野の悪友達が全員自首したと噂で聞いていたけど……何があったのかは相変わらず不明のままだ。

 

その翌日……僕は伊井野と大仏に呼び出された。

 

………

 

「その、もう大丈夫だと思うから。石上、その……あ、ありがとう……」

 

「気にするな、僕が勝手にやってた事だし。」

 

「そ、それでも!……石上に負担が掛かってたのは事実だし。」

 

「ホント、真面目だな伊井野は。」

 

「何よ、悪い?」

 

「いや、伊井野らしいよ。」

 

「そ、そう……」

 

「石上……」

 

大仏に袖を引かれたので振り返る。

 

「守ってくれて……ありがとね。」

 

「おぅ、大仏も気にするなよ。僕じゃ頼りにならないかもしれないけど、困った事があったら助けになるからさ。」

 

「うぅん……そんな事ない。頼りにしてるよ、ありがとう。」

 

その日は3人で寄り道をしながら帰った。伊井野が何か言うと思ったけど、やっぱり寄り先にバーガーショップを入れたのは正解だったらしい。友人と寄り道をして帰る……以前の僕では考えられない日々を過ごしながら、頭の中に妙な引っ掛かりを感じていた。

 

……その引っ掛かりの正体がわかったのは、高等部の風紀委員に申請書を提出した帰りだった。

 

………

 

「……」

(うーん、今日も会長達見掛けなかったな。まぁ殆ど生徒会室で仕事してるから仕方ないのか。)

 

未だに一目見る事すら叶っていない、現生徒会メンバーについて考えていると……何やら妙な声が聞こえて来た。

 

「ぐぅっ……うぇぇぇっ……」

 

「……ん?」

 

もしかしたら、誰かが急病で苦しんでるのかと思い声のする方へと移動する……どうやらその声は、中庭の茂みから聞こえて来る様だ。邪魔な草木を避け茂みを覗き込むと……

 

「グスッ…うぇぇっ……なんで私はぁっ…ぐぇうっ……いつも、いつもぉ…けぷっ……」エグエグッ

 

「」

(つ……ツンデレ先輩いいぃ!!?)

 

その瞬間、石上の脳内を衝撃が襲う!

 

「っ!!」

(あああっ! そうか! なんか引っ掛かってる気がしてたのはコレかぁっ!!)

 

四条眞妃! 約半年後……自分の親友と想い人が付き合うという地獄を味わう事になる、四宮家の血筋を引くお嬢様である。古いタイプのツンデレ発言が災いし、一向に彼との関係が進まない事に1人落ち込む少女……そんな場面に石上優は遭遇していた!

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「えぐぅっ……う?」

 

「……」

(絶対コレ、翼先輩の事で泣いてたよな……)

 

石上優は即座に状況を理解した。

 

かつての友人との再会、それが石上優にもたらすモノとは……

 


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