石上優はやり直す   作:石神

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石上優は準備する

中庭でツンデレ先輩と出会ってから、僕は月末に控えた文化祭の準備に追われていた。高等部の奉心祭は、予算も潤沢で大規模な催しがされるが、中等部はそれよりも規模が小さい……とはいえ、並みの高校レベルの文化祭規模はある為、各クラスも出し物の準備や買い出しに放課後遅くまで残っていた。

 

僕達のクラスはたこ焼き屋を営む為、(あらかじ)めたこ焼き機と千枚通しなどの道具を用意しておけば前日に材料を調達するだけで事足りる。当日も男子は裏方、女子はたこ焼き担当と分けられている為、それ程大変なものではなかった。

 

文化祭まで後3日と迫ったある日……自分のクラスの出し物の準備も終わり手持ち無沙汰になった僕は、風紀委員の見回りに同行していた。いつも通り伊井野、大仏と見回っているとすれ違い様に女子2人の会話が聞こえてきた。

 

「それで、高等部の七不思議が……」

 

「やだ、やめてよー。」

 

七不思議か……そういえば前回の2学期、体育祭を目前にした時期に秀知院学園七不思議……なんてモノに振り回された苦い記憶を思い出す。《骸骨》から始まり《指輪》で終わる6つの怪談と、その6つの怪談に遭遇する事で条件を満たす7つ目の怪談……もうあんな怖い思いは二度と御免だと強く思ったものだ。

 

「……そういえば、中等部には七不思議とかないのか?」

 

ふと疑問が湧き、隣を歩く大仏に聞いてみる。

 

「七不思議……? うーん、私は聞いた事ないなぁ……ミコちゃんは?」

 

「……私も聞いた事ない。」

 

「ふーん、じゃあ高等部だけなのか……」

 

「あっ、でも変な噂は聞いた事ある。」

 

「変な噂?」

 

伊井野の言葉に聞き返す。

 

「うん、えーと……秀知院学園には、絶対に敵対しちゃいけない人達がいるらしいんだけど、最近それが1人増えたって噂。」

 

「へーそんな噂があるのか……でも妙な時期に増えるんだな。」

 

「うん、確かにそうなのよね……新入生が入ってくる4月とかなら、まだわかるんだけど……」

 

「……」

(……それ多分、石上の事だ。)

 

大仏は首を傾げる2人を見ながら、その噂が立った原因を思い出していた。

 

石上が荻野に対して行った立ち回りは、嘘で固められた荻野の外皮を剥ぎ中学生にしては不釣り合いな策略で決行された。あの事件で、後ろ暗い事をしている人間は石上から必要以上に距離を取るようになった。もし、石上と敵対すれば自分も荻野の様に嵌められるのではないか……という警戒心が出来上がってしまった為だ。それに次いで、荻野の行方が一時的にだが不明になり、荻野の悪友達が次々と自首していったのは石上が裏で手を引いていたのでは? という考えになっても仕方ない状況だった……更に噂に尾鰭が付き、石上は3年になるまで本来の実力を隠していた。今まで目立っていなかったのは、中等部の問題児を調べて粛正する為だとか色々な憶測が囁かれている。

 

(……まぁ私は、石上はそういう人じゃないってわかってるけどね。人の噂も75日っていうし……変な噂話もそのうち消えるでしょ。)

「……ほらほら2人共、ボーっとしてたら見回りにならないよ?」

 

大仏は首を傾げる2人を促し、見回りを続けた。

 






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