石上優はやり直す   作:石神

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文化祭を楽しみたい

文化祭当日……各々が担当する出し物や役割に準じて行動し、束の間のお祭り気分を楽しんでいた。

しかし……秀知院の文化祭は、高等部だけではなく外部からの訪問者(他校の生徒)も多い為、起きるトラブルは決して少なくないのである。

 

〈小野寺麗は回りたい〉

 

「うーん、ちょっと時間空いちゃったなぁ……」

 

午前中の仕事を済ませて校内を適当に見て回る。私のクラスはクレープ屋の出店をしていて、ジャムとクリームだけを使った簡素なモノだけど、それなりに忙しかった。今は他のクラスの友達に空き時間が出来るまで1人で時間を潰している。適当に他クラスを覗き見しながら歩いていると、複数の男子に囲まれている秀知院の女子が見えた。

 

「はぁ……」

(全く、男子ってホント……)

 

助け出そうと近付いて見ると……囲まれている女子は、風紀委員の伊井野ミコだった。

 

(伊井野か、だったら大丈夫かな? あの男子達もツイてないね、お堅い風紀委員で有名な伊井野をナンパするなんて。)

 

「なぁ、ちょっとでいいから付き合ってよ。」

 

「奢るからさー。」

 

「ちょっとだけお喋りしようよ!」

 

「お断りします。いい加減にしないと先生を呼んでっ……」

 

「ていうか君可愛いね!」

 

「……ッ」

 

「いやホント! マジ可愛だわ!」

 

「それな! こんな可愛い子と少しでも遊べたら、オレらメッチャ嬉しいっていうか……」

 

「真面目な話、休憩時間までどれくらいなの? 俺ら普通に待つよ?」

 

「ま、まぁ、後30分くらいですけど……」

 

(あれ……伊井野?)

 

「それくらいなら全然待つって!」

 

「ね? ちょっとだけ付き合ってよ。」

 

「……ちょっとだけなら。」

 

「っ!?」

(チョッロ!? 伊井野チョロ過ぎでしょ!?)

 

「ちょっとだけなら……じゃねぇよ。」パコーン

 

「痛あぁぁっ!?」

 

「すいません。コイツまだやる事あるんで、他当たって下さい。」

 

「こばちゃん、石上がまた叩いた! クズだよ!」

 

「ハイハイ。ミコちゃん、石上にちゃんとお礼言わないとダメだよ?」

 

「叩かれたのにっ!?」ガビーン

 

「……」

(えぇ……伊井野ってあんな感じなんだ、かなり印象変わったわ。アレじゃ、石上と大仏さんも大変だなぁ……)

 


 

〈大友京子は作りたい〉

 

「よーし、ジャンジャン作るよー!」

 

「ちょっ!? 京子タコ入れ過ぎじゃない!?」

 

「えー? そうかなぁ……?」

 

「京子……料理出来るから調理係に立候補したんじゃないの?」

 

「んーん? タコ焼きクルンってするのが楽しそうだったから。」

 

「そんな理由っ!?」ガビーン

 


 

〈石上優はもてなしたい〉

 

「石上、来てやったわよ。」

 

「あ、四条先輩どうも。」

 

「君がマキちゃんの言ってた石上君?」

 

「……はいそうです。先輩方、態々来てくれてありがとうございます。」

(うわぁ、チャラくない翼先輩とか凄い違和感ある……柏木神の影響エグい……)

 

「僕は田沼翼。マキちゃんと同じ高等部の一年だよ、よろしくね。」

 

「あ、どうも……石上優です。」

 

「眞妃に中等部の知り合いが居たなんて知らなかったなぁ……私は柏木渚、よろしくね?」ニコッ

 

「は、はい……」

(なんか怖い……)

 

「石上君、マキちゃんに出店に来てくれるよう泣きついたんだって?」

 

アハハと笑いながらそう言って来る翼先輩の後ろに佇むツンデレ先輩を一瞥する。

 

「……ッ」プイッ

 

(はぁ、しょうがない……)

「……えぇ、そうなんですよ。美味しいから是非食べに来て欲しくて、お願いしちゃいました。」

 

石上は大人の対応を取った。

 

「じゃ、人数分頂こうかな?」

 

「はい……タコ焼き3つになります。」

 

「じゃあ座って食べようか。」

 

3人がテーブルに座り、タコ焼きを頬張る様子を見ながら石上は仕事に精を出す。

 

「……」

(……ちゃんとツンデレ先輩が誘えるか不安だったけど、とりあえず良かった。まさか、柏木神も一緒に来るとは思わなかったけど……)

 

「……」ジーッ

 

「……」

(まぁ、一歩前進しただけマシかな……)

 

「……」ジーッ

 

「……」

(パッと見は翼先輩が二股掛けてるように見えるけど……)

 

「……」ジーッ

 

「……」

(いやぁ、でも……なんで柏木神ずっとこっち見てくんの? 死ぬ程怖いんだけど……)

 

………

 

〈石上優は考えたくない〉

 

「なかなか美味しかったね。」

 

「ふんっ、まあまあね。」

 

「眞妃ったら、そんな事言っちゃダメでしょ。」

 

「それじゃ、そろそろお暇しようか。」

 

翼先輩が立ち上がり2人に促す。

 

「そうね、それじゃ石上……私達は行くわよ。」

 

「御馳走様。」

 

「はい、先輩方ありがとうございました。」

 

「……」

 

去り際に柏木先輩が近付いて来た……

 

「君さ、何か隠してない?」

 

「……な、何をですか?」

 

「それはわからないけど……凄く大事な事。」

 

「……そんな訳ないじゃないですか。四条先輩以外とは、今日が初対面なんですよ?」

 

「うん、そうなんだよねぇ……」

 

「渚ー、何してんのよ? 置いて行くわよ?」

 

「あ、すぐ行く。ね、石上君、また今度ゆっくりお話しよっか?……じゃあね。」

 

「ハハハ、さよなら……」

 

柏木先輩が教室を出て行くのを黙って見届ける。

 

「」

(怖ええぇぇ!! サタン柏木メチャ怖えぇ! ……え? 実は僕と同じで逆行してるとかないよね? もしそうなら僕殺されるよね? あー考えちゃダメだ、恐怖で死ねる自信がある……)

 

何はともあれ中等部文化祭、無事終了。

 

 

 


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