石上優はやり直す   作:石神

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龍珠桃は無二を得る

「つまり……龍珠先輩の家がヤクザだから、もう関わるなと……そう言いたいのか?」

 

「そうだ。龍珠の家について今まで知らなかったみたいだからな、これからは気を付けろ。」

 

余りにも龍珠先輩を軽視するその言葉に、流石の僕もカチンと来た。

 

「は? 普通に嫌だけど?」

 

「……何?」

 

「だから、お前の言う事は聞かないって言ってるんだよ。」

 

「お前……俺の言葉の意味を理解していないのか? アイツは龍珠組の愛娘、付き合いをやめたほうが賢明だと……」

 

「はあーっ? 何そのクソ理論……警視総監の息子がそんな程度の低い事しか言えねぇの?」

 

「……なんだと?」

 

「龍珠先輩の家がヤクザとか言ってるけどさぁ、警察官の犯罪率知った上で言ってんの? 少なくてもここ数年は暴力団よりも上なんだぞ? そもそも警察官が罪を犯しても、平気で不起訴になったり軽い処罰で済んだりしてるだろ。他人の家について偉そうな事言う前に、自分トコしっかり管理するべきなんじゃないの?」

 

「こ、このっ……!」

 

「大体お前は親の職業でしか他人を見てないのかよ? 僕から見た龍珠先輩は……そりゃ目付きは悪いし、偶に口も悪いけど優しいし、ゲームで負ければ悔しがるし、勝てば得意気に笑う……普通の女の子なんだよ! お前は親とか関係無く、自分の目で龍珠先輩をちゃんと見た上で判断出来ないのかよ!」

 

………

 

「……ッ」

 

私の為に……あそこまで怒る奴は初めて見た。恥ずかしい奴、あんなに熱くなりやがって……

 

「貴様っ……!」

 

小島は石上に一歩踏み出すと、そのまま流れるような動きで石上を床に組み伏せた。

 

「ぐっ!? な、何をっ……!?」

 

「警察を侮辱した事、今すぐ謝罪しろ。」

 

「くっ……お前が先に龍珠先輩に謝れよ!」

 

「……この状況下で、まだそんな事が言えるのか? 大したものだ……」

 

小島は掴んだ石上の左腕へ……徐々に圧力を掛けていく。

 

「ぐっ…痛ぅ……!」

 

「早く謝ったほうが身の為だぞ。」

 

「ハッ……うるせえ、バァカ。」

 

「……ならば、仕方が無いな。」

 

小島は掴んだ腕に体重を掛け始めたが、結末を静観するつもりは……私には微塵も無い。

 

「やめろ。」

 

「っ!?」

 

小島は首筋に当てられた感触に動きを止めた。

 

「お前っ……」

 

「り、龍珠…先輩……!?」

 

「そいつを離せ。」

 

「龍珠、貴様っ……」

 

「聞こえなかったのか? そいつを離せ。」

 

グイッと首筋に当たる感覚が強くなったのを感じた小島は、掴んだ腕を離し石上から離れた。

 

「……石上、大丈夫か?」

 

石上を助け起こすと、ジッと先程まで組み伏せられていた身体を観察する……余計な怪我はしていないみたいだ。その事実に、ホッと安堵する。

 

「はい、ありがとうございます……助けてくれて。」

 

「……気にすんな。」

 

「ふん、随分と飼い慣らしたものだな龍珠。」

 

「……」

 

「お前っ……まだそんな事を!」

 

「そこまでだ。」

 

その言葉に私達は動きを止めた。

 

「良い後輩を持ったな龍珠……いや友達か?」

 

「お前……何しに来た。」

 

声の主は生徒会長の白銀御行だった。私は顔を隠すように帽子を深く被りながら問い掛ける。

 

「いや、下駄箱で1年生が争っていると報告を受けてな……まさか、石上と小島だとは思わなかったが……」

 

「……なんでお前がコイツを知ってんだよ。」

 

「少し用があってな……やはり石上は、俺が思った通りの人間の様だ。」

 

徐々に周囲には生徒の数が増えて行き、皆が一定の距離を空けて事の成り行きを見守っている。

 

白銀は2人に近づくと、お得意の理路整然とした物言いで熱くなった後輩2人をすぐに落ち着かせた。小島は何か言いたそうだったが、白銀の諭すような語り掛けに平静を取り戻し、自分の落ち度も認識した様だ。白銀と一言二言の言葉を交わすと、此方を見もせずに去って行った。

 

石上も……少し落ち着きを取り戻した様で、先程までの強張った表情は消えている。

 

「フゥ……」

 

いつの間にか……握り締めていた掌から定規が抜け落ちたのを感じて、初めて私は……柄にもなく緊張していたのだと気付いた。

 


 

「しかし、彼相手に啖呵を切るとは……中々度胸がある様だ。」

 

「……そんなのじゃありません。友人が悪く言われてカチンと来て……言い返しただけです。」

 

「ふむ……相手を選ばずにそれが出来る事を度胸があると言うのだと思うが……君は彼の事を知っているか?」

 

「え? まぁ親が警視総監とか、1年で剣道部の部長とか……それくらいです。」

 

「そうか……」

(全く……それを知った上で彼に歯向かえる人間がこの学園にどれ程いるか……君は知らないのだろうな。)

 

「あの……?」

 

会長は僕を視界に捉えたまま動かない。……問題児と認識されたら嫌だな。

 

「1年B組石上優、君を会計として生徒会にスカウトしたい。」

 

周囲に散らばった生徒達から響めきが広がった。

 

「せ、生徒会……僕で良いんですかっ!?」

 

「あぁ、君じゃなければ誘わない。……返事を聞かせてくれ。」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

「此方こそよろしく頼むよ。では生徒会室で詳しい話を……」

 

「あっ、すいません。今日はこれから用事が……」

 

「……いいから行って来い!」

 

バシッと背中を叩かれる……振り向くと、帽子を目深に被った龍珠先輩が目に映った。

 

「え、でも……」

 

「うるさいこのバカッ!……ったく、私との約束はいいからさっさと行って来い。」

 

「……いいんですか?」

 

「あぁ、次の呼び出しはちゃんと来いよ……優。」

 

プイと顔を背けながらそう言った龍珠先輩の言葉の裏に隠れた意味は、流石の僕でも理解出来た。

 

「はい、わかりました……桃先輩。」

 

「……おぅ。」

 

桃先輩は小さく返事をすると、黙って去って行った。

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