やっと生徒会メンバーが揃った( ;∀;)
あと最後に秀知院VIPメンバー柔道部部長が出てきますが、名前も学年もわからないので3年三國正道としますが、別に覚える必要はありません。
会長に連れられ生徒会室を訪れる。今日から僕も……生徒会役員会計、石上優として前回同様、会計処理に従事する事になる。
生徒会室の扉を開けると、頭にリボンを付けた少女……藤原先輩が近付いて来た。
「君が石上優くんですね? 私は2年B組、生徒会役員書記担当の藤原千花です。気軽に藤原先輩って呼んで下さい!」
「あ、はぁ……わかりました。」
(その呼び方、全然気軽じゃないんですけど。)
「その呼び方の何処が気軽なんだ、藤原書記。」
会長と脳内のツッコミが被った。久しぶりの藤原先輩だ……なんだかんだで見掛ける機会もなく、優に1年振りの再会となった。
「これからよろしくね、石上くん!」
「はい、よろしくお願いします……藤原先輩。」
しかし、この頃の藤原先輩は……フワフワしてるというか、雰囲気が柔らかく感じる。コレが1年も経たない内に……
うるさいなぁ、ぶっころすよ?
はいどーん! クソザコ極まれり〜!!
石上くんはチェリーボーイですしねぇ〜!
とか言って来たり、ハゲヅラ被ったりする様になるのか……時間の残酷さを垣間見た気分だ。
石上は自分の言動が少なからず影響を与えていたとは、少しも思っていなかった。
「ん? どうしました? 石上くん。」
「いえ、時間の残酷さに嘆いていただけです。」
「?」
「石上が妙な目で藤原を見てるんだが……」
「アレは加工前の家畜を見る目ですね。」
「どんな目だ……四宮、そろそろ自己紹介を。」
「えぇ……石上君、はじめまして。四宮かぐやです、生徒会副会長を務めています。これから……よろしくお願いしますね。」
「はい、よろしくお願いします四宮先輩。」
僕の言葉に、四宮先輩はニコリと笑ってくれたけど……どう見ても外面だけの笑顔だとわかる。まぁ、それも仕方が無い。今の僕はまだ一欠片の信用も得ていないのだから……これから少しずつ信用してもらえる様に頑張ろう。
「最後に……改めて自己紹介しよう。俺は生徒会長、白銀御行。石上、これからよろしく頼む。」
その言葉と共に差し出された……会長の手を掴み固く握手する。
「はい、これからよろしくお願いします!」
そして数日後……
「石上、昨日頼んでおいた部活動予算の前年度との比較データだが……」
「はい、昨日の内にまとめておきました。」
「ほう、仕事が早いな……助かるよ。」
「……」
「石上君、新入生を含んだ新しい委員会名簿の作成ですが、出来れば明日までにお願い出来る?」
「大丈夫です。今日中に終わらせて、データ送っておきますね。」
「あら、じゃあお願いね。」
「……」
「ん?どうした藤原。」
「藤原さん?」
「違ーーーう! 違うでしょ!?」
「うおっ……いきなり叫んでどうしたんですか、藤原先輩?」
「どうしたもこうしたもありません! なんで直ぐに仕事出来るようになっちゃうの!? こういう時は普通……」
藤原先輩、書類処理出来ました。
……石上くん、ココ間違えてるよ?
あっ、す、すいません! 僕っ……!
ふふ……間違えは誰にでもありますから、気にしないで下さいね?
藤原先輩……なんて器の大きい人なんだ! 滅茶苦茶尊敬します!
「……とかなる筈でしょう!?」
「……また藤原が珍妙な事を言い出したぞ。」
「新人が思っていた以上に有能だったので、焦っているんでしょうね。」
「全く、新人に妙な言い掛かりを付けおって……呆れられるぞ。」
「いいですか石上くん! 私が生徒会で3番目に偉いんですからねっ!」
「はい、藤原先輩。」
(あーコレコレ、この器の小さくて人として尊敬出来ない感じ……正しく藤原先輩だ。)
「また石上が妙な目で藤原を見ているな……」
「アレは幼稚園児の精一杯の虚勢に、ウンウン頷く大人の目ですね。」
「あー、その例えはなんかわかる。」
「石上くん、ちゃんと聞いてますかっ!?」
藤原、下衆な女の本領発揮。
〈4月某日剣道場〉
「脇が甘い!」バチーン
「うわっ!?」
「次!」
「……なんか最近荒れてるなぁ、小島部長。」
「なんかあったのかな?」
「其処! 何を無駄口叩いている!!」
「ひぃっ!? す、すいません!」
「失礼するよ、小島は居るかな?」ガラッ
「……何か用ですか?三國先輩。」
三國正道! 秀知院VIPに名を連ね、陸上自衛隊幕僚長の息子にして、柔道部部長を務める秀知院学園3年生である。その大柄な体躯とは対照的な、理知的な相貌を小島は真正面から睨み付ける。
「少し話がしたい、いいね?」
「……わかりました。」
有無を言わさぬその物言いに了承する。此処で嫌だと言っても……組み伏せられるだけだと俺は知っている。剣道三倍段……武器有りの剣道に、無手の空手や柔道などの武道をしているものが相対する時は、段位としては三倍の技量が必要というが……俺はこの人に未だに勝った事がない。普段の理知的な佇まいからは、想像が出来ない程この人は強い……
剣道場を出て三國先輩について行くと、先輩は木陰のベンチに腰掛けた。なんとなく隣には座りたくないと思い、ベンチの背凭れに体を預ける。
「……それで、話って何ですか?」
「……また龍珠君とやりあったそうだね? 中等部の頃からずっとだ。」
「……アイツはヤクザ、俺は警察。相容れないのは自明の理です。」
「全く……変わらないね、その視野の狭い所。生徒会長……白銀君から部活組合に正式な抗議書類も提出されたし、個人的に文句も言われたよ……ちゃんと手綱を握っておけと。」
「ふん……別に先輩に手綱を握られた覚えはありません。」
「やれやれ……小島、君はどうして各界を代表する重鎮や名家の子息令嬢が、こぞってこの学園に入学して来ると思う?」
「そんなの……只の箔付けでしょう。」
「まぁ、勿論それもあるだろうね……だけど俺の見解は違う。秀知院に在籍している生徒の多くは将来……国を背負う立場になる人間だ。」
俺は勿論……君もだ、と此方を見る先輩から視線を外し先を促す。
「……だが、どんなに財閥の御曹司で財力があろうと、名家のお嬢様で権力があろうと……1人で出来る事なんて大した事じゃないんだよ。あの4大財閥、四宮家のお嬢様であろうと、絶対に1人じゃ出来ない事は存在する。」
「……何が言いたいんですか?」
「だから俺は思うんだよ。この学園に集まる人間は……将来1人じゃ出来ない事や1人じゃ立ち向かえない敵と対面した時に、支えて助けてくれる仲間を探しているんじゃないかって。」
「……」
「……君はオセロを知っているね?」
「は?」
突如話題が切り替わり、思わず呆けた声が出た。
「オセロが人間の一生に例えられるのを聞いた事があるか?」
「まぁ、表と裏が入れ替わるのを寝返りや裏切りに例える話なら……」
「それ以外にも……4隅の石は絶対に裏切る事は無い……とかね。」
「……」
「……俺は思うんだよ。1人の人間が一生で手に入れる事の出来る……信頼出来て、自分を裏切らない存在もまた……4人程度しかいないんじゃないかと。」
「秀知院に居る奴は全員……信用出来る奴を探してると?」
「信用ではなく信頼だ……俺は龍珠君が羨ましいよ。」
何故……と言いかけて口を噤んだ。先輩の言いたい事が予想出来たからだ。
「彼女は……少なくとも既に1つ、絶対に裏返る事がない石を手に入れたんだから。」
「……」
「龍珠君の事を極道の娘としか見ていない内は、君がその石を手に入れる事は無いだろうね。」
「……言いたい事はそれだけですか?」
「あぁ、時間を取らせて悪かったね……今度は、時間がある時にでも仕合うとしよう。」
「……絶対嫌です。」
ベンチから立ち上がり歩いて行く先輩の姿が消えても、俺はその場から動く事が出来なかった。
「……」
龍珠君を只のヤクザの娘としか見ていない内は、君がその石を手に入れる事は無いだろうね
その言葉が鉛の様に俺の体を重くし続けていた。