〈生徒会室〉
「邪魔するわよ!」バターンッ
「うわ、びっくりした……ってマキ先輩ですか。いきなりどうしたんですか?」
「アンタが生徒会でちゃんと仕事が出来てるか、見に来てあげたのよ!」ドヤァッ
「……本当は?」
「そ、その、いつもの相談を……」モジモジ
「……わかりました、どうぞ座って下さい。」
(急に可愛くなるんだよなぁ、この人。)
「……今日は優しかいないの?」
「えーと、四宮先輩と藤原先輩は部活で……会長は野球部とサッカー部がグラウンドの使用面積で揉めているので、それの仲裁に……」
「ふーん、まぁ優1人だけなら都合が良いわ。」
「それで、相談というのは?」コトッ
僕は紅茶を先輩の前に置きながら尋ねた。
「そ、その……ね? 優がバレンタインの時にアドバイスしてくれた様に、翼君を水族館に誘ったんだけど……」
「おぉ! 誘えたんですか、良かったですね!」
(アドバイスしてから2ヶ月以上経ってるんだけど、ツンデレ先輩が自分から誘えただけマシと思うべきか……)
「うん……それでね、流石に2人っきりは恥ずかしいから……」ガチャッ
「ふぅ、やっと片付いた。」
「あ、会長。」
「ん、来客か……って四条か、なんか用か?」
「……優に相談があって来てたのよ。」
「相談? お前達知り合いだったのか?」
「あ、はい……去年の11月くらいから。」
「……また日を改めるわ。」
先輩が立ち上がろうとするのを慌てて制する。
「待って下さいマキ先輩! 会長ならきっと力になってくれますし、他の男子の意見も聞いとくべきですって。」
「あぁ、クラスメイトだし、生徒の悩みに答えるのも生徒会長の務めだからな。」
「……アンタ達がそこまで言うなら。」
………
「……なるほどな。つまり、四条は田沼翼が好きで恋人になりたいと。」
「はーっ? 違うわよ、そんな訳ないでしょ!」
「えっ!? 違うの!?」
「ま、まぁ? 向こうがどうしてもって言って来たら考えてあげても……」
「会長、見てて下さい。マキ先輩……ツンツンするのはやめて、素直になった方が良いって言いましたよね?」
「うっ……」
「そうやって相手が告白して来るのを待ってるだけじゃ、知らない内に好きな人が横取りされる事になっちゃいますよ?」
「うぅっ……」グサッ
四条眞妃に40のダメージ
「グハッ……」グササッ
白銀御行に100のダメージ
「うえぇっ…ごめんなさいぃ……」
「……とまぁ、マキ先輩はこういう人なんです……あれ? 会長、どうしました?」
「い、いや……なんでもない。」
「それで、話の続きですけど……水族館には誘えたんですよね? それからどうしたんですか?」
「うん、流石に2人っきりは恥ずかしいから、友達も誘って3人でってなったんだけど……」
「なるほど……」
(あぁ、誘った直後に日和っちゃったのか。)
「だけどね……誘っておいてなんだけど、やっぱり翼君と2人で少しは見て回りたくて、だから……そのぉ……」
そこまで聞き、僕は全てを察した。
「なるほど……僕も誘って4人で行き、さり気なくマキ先輩と翼先輩を2人っきりにして欲しいと?」
「……うん、そうなの。」
「石上、よくわかったな……」
「まぁ慣れてますから。」
「しかし、それなら当日はその友人に遠慮してもらうとかでも良くないか?」
「私から誘っておいてそういうのは……申し訳ないし、仲間外れみたいで可哀想でしょ。」
「む、それもそうだが……」
「……良いと思いますよ。好きな人と2人でデートする事と同じくらい……友達も大事なんですよね? 僕は先輩らしいと思います。」
「優……」
「デートだからって、友達を蔑ろにする奴なんてダメですよ……マキ先輩、僕で力になれるなら喜んで手伝いますよ。」
「ほ、ホント?」
「えぇ、任せて下さい。」
「あ、ありがとぅ……じゃあ、渚にも後で連絡しておくわね!」
「」
(…………え?)
「どうしたのよ?」
「ま、マキ先輩? その誘った友達って……」
「何回か会った事あるでしょ? 柏木渚、中等部の文化祭でも仲良さそうに話してたじゃない。」