石上優はやり直す   作:石神

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バレンタインを贈りたい②(番外編)

〈伊井野邸〉

 

「来といてから言うのもアレなんだけどさぁ……私、石上には普通に売ってる奴を義理チョコとして渡すつもりだったんだけど……」

 

「まぁまぁ、おのちゃん。みんなでチョコ作りとか絶対楽しいよ!」

 

「ん、まぁそうかもね……伊井野は場所提供してくれてありがとね。」

 

「ううん、私の家にこばちゃん以外の友達が来るなんて初めてだから……嬉しい。」

 

「伊井野……」ポンポン

 

「伊井野ちゃん……」ナデナデ

 

「な、なんで撫でるの?」

 

「良かったねー、ミコちゃん。」

 

「まぁとりあえず、それぞれ違う種類のチョコにしよっか? 被ってもつまんないし。」

 

「おのちゃんの意見にさんせー!」

 

そして……

 

「大友さんっ!? チョコを溶かす時は直接鍋に入れるんじゃなくて湯煎しないと!」

 

「えっ、そうなの?」

 

女子達の……

 

「……アレ? 伊井野、此処に置いてあった業務用チョコ知らない?」

 

「えっ?」モグモグ

 

「なんで食べてんのっ!?」

 

「えぇと……先ずは素材の味を確かめてからじゃないとダメだと思って……」

 

「……もう半分なくなってるんだけど。」

 

バレンタインのチョコ作りが……

 

「……っ!? 大友さんストップ! それ薄力粉じゃなくて強力粉!」

 

「強いって書いてるからより美味しく……」

 

「ならないよっ!?」

 

2人の女子の苦労の元……

 

「……伊井野、何してんの?」

 

「砂糖をあと2g足そうと……」

 

「そこまでカッチリしなくていいからっ! 目分量でいいから!」

 

行われたのだった。

 


 

〈次の日〉

 

バレンタインが昨日だったせいか、今日は学校のそこかしこでチョコを渡す女子を見掛ける。因みに、僕の今日の戦果は0だ。廊下を歩きながら……朝方、大友に言われた事を思い出す。

 

石上君、放課後……風紀委員室に来てくれる?

 

そんな事を言われたら、多少の希望を持ってしまうのは仕方の無い事だと思う。僕は目的地である風紀委員室の扉を開けて中へと入った。

 

「おっす、石上。」

 

「小野寺?」

 

「遅いわよ。」

 

「ごめんね石上、呼び出したりして……」

 

「いや、それは構わないけど……」

 

教室には小野寺、伊井野、大仏が待っていた。

 

「もうちょっと待っててね、大友さんがそろそろ来るから……」ガチャッ

 

「お待たせー! あっ、石上君も来てるね! じゃあ皆やるよ!」

 

「……?」

 

「「「「いつも助けてくれてありがとう!」」」」

 

「な、なんっ!?」

 

目の前の4人からの言葉に、上手く言葉が出て来ない……

 

「進学出来たのは石上君のお陰だよー! あっ、モチロン伊井野ちゃんとおさちゃんにも感謝してるからね!」

 

「……風紀委員の仕事とか色々手伝ってもらってるし、その……ありがと。」

 

「石上、いつも助けてくれてありがとね。」

 

「あ、私は成り行きで言っただけだから。まぁ義理だけど、有り難く食べて。」

 

4人の言葉の後に大友から箱を手渡される。開けてみると10㌢程のホールケーキが入っている。

 

「……ありがとう。すげぇ嬉しい……」

 

ケーキを嬉しそうに見下ろす石上を見ながら小野寺は考える。

 

「……」

(まさか材料が足りなくなって、4人で1つのチョコを贈る事になるとは思わなかったなぁ……)

 

知らぬが仏とはこの事であった。

 


 

〈高等部〉

 

風紀委員室の一幕も終わり、石上は高等部へと呼び出されていた。

 

「……まだ来てないのかな?」ドドドッ

 

「うあああんっ! 石上ぃー! 水族館に誘えなかったぁー!」ガシィッ

 

「ダメでしたか……チョコはどうでした?」

 

「……チョコは渡せた。」

 

「それなら良かったですね。」

 

「うん、あとコレ……」

 

四条先輩は、ポケットから可愛らしくラッピングされた袋を取り出して僕に差し出してきた。

 

「え……くれるんですか?」

 

「なんだかんだで世話になってるしね……これでも、ちゃんと感謝してるのよ?」

 

「ありがとうございます、四条先輩。」

 

「……優は特別にマキ先輩って呼ぶ事を許してあげるわ。」

 

「……あざっす、マキ先輩。」

 

「それより聞いてよっ! 翼君を誘う時に……」

 

「はいはい、聞きますよ。」

 

〈自宅〉

 

「あれ? なんかメッセとアイテムが届いてる?」

 

僕は携帯ゲーム機の点滅を確認すると、メニュー画面から通知画面を開いた。

 

龍珠さんからメッセージとアイテムを受け取りました。

 

〈やる〉

 

カカオケーキ(体力全回復)を受け取りました。

 

 

「ははっ、龍珠先輩らしいな。」

(……でもコレ、ホワイトデーはどっちで返すべきなんだ?)

 


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