石上優はやり直す   作:石神

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四宮かぐやは絆されない①

〈5月某日生徒会室〉

 

「邪魔するわよ!」バターンッ

 

「……眞妃さん、何か御用ですか?」

 

「あら、おば様だけ? 優は?」

 

「石上君は、風紀委員の助っ人業務で遅れるそうです……あと、同い年でしょう? いい加減、その呼び方はやめて下さい。」

 

「あら、続柄上そうなっているのだから仕方ないでしょう?……目上の者は敬えと教育されてますので。」ゴゴゴッ

 

「……そうですね、分家は本家を敬うのが筋ですからね。」ゴゴゴッ

 

「はぁ……優が居ないならしょうがないわね、また来るわ。」

 

「眞妃さん、随分石上君と親しい様ですね?」

 

「友達なんだから当然でしょ?」

 

「去年から付き合いがあるそうですが……」

 

「態々調べたの? おば様も暇人ね……心配しなくても、優は良い奴よ。」

 

「……どうでしょうね。私にはまだ……なんとも言えません。」

 

「……生徒会に入って少しは丸くなったと思ったけど、相変わらず警戒心の強い事。」

 

「……財閥の娘ともなれば当然です。眞妃さんこそ、随分と簡単に彼を信用するんですね。」

 

「ま、私の恋愛相談に乗ってもらってるし……」

 

「れ、恋愛相談!?」

 

「優は恋愛マスターだから、良い案を提供してくれるし……」

 

「恋愛マスター!!?」

 

「そのお陰で今度……デートに行ける様になったのよ!」

 

「デート!!?!」

 

「おば様も恋愛に悩んでたら相談して見れば?」

 

「なっ!? べ、別に私は、誰にも恋い焦がれてなんていませんし!」

 

「ふーん? まぁおば様が良いならそれで良いけどね……じゃ、失礼するわね。」ガチャッ、バタン

 

「石上君が恋愛マスターだなんて……どうやら、調べる必要があるみたいですね。」

(あくまで生徒会に属する者として、健全な学生生活を送っているかを調べるだけです。別に石上君が本当に恋愛マスターだったとしても、相談なんてしないんだからっ!……ま、まぁ? 他人の意見から妙案が浮かぶ事もありますし……あまり邪険にするのもかわいそうよね。)

 

警戒心グラッグラであった。

 


 

〈中庭〉

 

「……」

(早坂にも調べるよう言っているけど、石上君は何処にいるのかしら……あら?この声は……)

 

かぐやは茂みの中から僅かに洩れ聞こえる声を辿り、草木の隙間から中を覗き込んだ。

 

「……優、やりづらいからもう少し腿上げろ。」

 

「うっす。」

 

「っ!?」

(えええーーーっ!? 膝枕しながらゲームしてるっ!? 貴方達付き合ってないのよねっ!? なのにその距離感……アウトじゃないっ!?)

 

「あっ、桃先輩そのアイテム僕が狙ってたんですけど……」

 

「フフ、早い者勝ちだバーカ。」

 

「だったらこっちも……」

 

「あっ! 優てめぇ、それは私のっ……」

 

「っ!!?」

(しかも名前で呼び合ってる!? なんなの!? 最近はそれが普通なの!? 私だって会長とはお互いに名字と会長呼びしか出来てないのに!!)

 


 

〈校舎内〉

 

(全く、眞妃様もかぐや様に妙な事を吹き込まれて。その分私の負担が増えるっていうのに……)

「……ッ!」サッ

 

早坂は素早く階段の影へと身を潜めると……

 

「ヤバッ……遅れる。」

 

小走りで廊下を移動する石上を視界に収めた。

 

「……」

(まぁ、都合良くそんな場面を目撃するとは思えないけど……)

 

石上が廊下の曲がり角に差し掛かると……

 

「うわっ!?」ドンッ

 

「キャッ!?」

 

「す、すいません! ……って大仏? 悪い急いでて……大丈夫か?」

 

「石上……うん、大丈っ……」グイッ

 

「ん?」

 

「あ……」

 

大仏が離れようとした時、石上は自身の制服のボタンに髪が絡まっているのを見つけた。髪を辿ると、その髪は大仏の頭部へと続いている。

 

「わ、悪いっ……」

 

「いや、こっちこそ……」

 

(あちゃー、あぁなると簡単には外せないんですよねぇ……彼はどうするんでしょうか。)

 

「う……くっ!」

 

「外れそうにないね……石上、コレ使って。」

 

大仏はポケットから小型の裁縫セットを取り出すと、ハサミを石上に手渡した。

 

「あぁ、じゃあ借りるよ。」

 

「……うん。」

 

(あー切っちゃうんだ、髪は女の命なのに……実際に私もあの場面で髪を切られたら地味にショックを受けるんだけど、まぁ男はそういう所に気が回りませんからね……)

 

「……コレでよし、解けた。」

 

「……えっ?」

 

石上の手にはボタンがあり、解けた髪がはらりと大仏の元へと戻って行く。

 

「い、石上……ボタンの方を切っちゃったの?」

 

「いや、それはそうだろ。悪かったな大仏……じゃ、またな。」

 

大仏は去って行く石上を見つめたまま動かない。

 

「もう! アッサリこういう事するんだから……」

 

一方早坂は……

 

「〜〜〜!!」ハッハッハッハッ

(もうぉぉぉっ!!)

 

だいぶ参っていた。

 

 


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