〈校舎内〉
「……」
(全く、早坂ったら……理由は言えませんが任務遂行が不可能になりました……とか言って仕事を放棄するなんて、何を考えているのかしら。)
「〜〜〜!!」ハッハッハッハッ
(もうぉぉぉっ!!)←理由
「さて、石上君は何処かしら……」
(あら? あの子……)
先程すれ違った女子生徒を振り返る。その生徒は顔を隠す程の高さまでダンボール箱を積み上げ、よろよろとバランスを取りながら歩いている。
「……」
(危ないわね、大丈夫かしら?)
なんとなく目で追っていると、探していた男子がその少女へと近付き話し掛けていた。
「伊井野、危ないから手伝うよ。」
「石上……じ、じゃあお願い。」
「1人で運ばずに誰かに手伝ってもらえば良いのに、相変わらず1人で無理する奴だな。」
「だって……」
「ま、僕の手が空いてる時は遠慮すんなよ?」
「……うん、ありがと。」
「おう、じゃあ行くか。」
私は2人の様子を怪しまれない程度に盗み見る。
(……打算なく他人に優しくするなんて、変わってるわね。まるで会長みたい……は、流石に言い過ぎかしらね。)
〈生徒会室〉
「ーー森へお帰り。」
「……はい、藤原先輩オッケーです。」
「えへへー、皆さんどうでした?」
「あぁ、中々上手く踊れてたな。」
「えぇ、本当に……やはり、こういう事は藤原さんに限りますね。」
「まぁ……藤原先輩のアホっぽさは良く出てましたよ。」
「なんで石上くんは、私に対してそんな辛辣なのっ!?」
「しかし、生徒会のPR動画とは……校長も変わった提案をするものですね。」
「まぁ、そう言うな四宮。生徒会のお堅いイメージが少しでも払拭されるなら悪い話じゃない。」
「そうですよ! 会長やかぐやさんは他の生徒達から距離を置かれ気味なんですから、これくらいのおふざけは寧ろ必要な事です!」
「距離を置かれ気味とかバッサリ言うな!」
「……そういう藤原先輩はどうなんですか?」
「私は皆の人気者、藤原千花ですよ? 逆に距離詰められ過ぎなくらいです!」
「そういう事は自分で言う事ではないわよ、藤原さん。」
「同感ですね。」
「あぁ、全くだ。」
「私にそんな態度取ってる男子は、会長と石上くんくらいですよ!?」
「……皆さん内面に目を向けてないんですね。」
「どういう意味ですかっ!?」
「……」
(そういえば、石上君は藤原さんに割と冷めた接し方をしていますね……なるほど、人の本質を見る目はあるみたいね。)
かぐやは中等部からの親友の内面を全く評価していなかった。
「……そういえば藤原先輩、最後に何かしてましたね。何してたんですか?」
「最後?」
「森へお帰りとかなんとか言ってた所です。」
「あーアレは、
「なるほど……とりあえず、近付かないでくれますか?」
「なんでですかっ!
「素手でゴキブリ触った時点で大問題です。ドチャクソヤベー奴認定確実です。たった今、僕の恋愛対象者の条件にゴキブリを素手で触らないが追加されました。」
「そこまで言うのっ!?」ガビーンッ
「俺もゴキブリを素手で触るのはどうかと……」
「会長までっ!?」ガビーンッ
「……」
(とりあえず、石上君は信用に足る人間の様ですから、少しは信用しても良いでしょう。)
「うわあぁん、かぐやさーん! 石上くんと会長が酷い事言いますー!」
「藤原さん、近付く前にちゃんと手を洗って来て。」
「ええっ!?」ガビーンッ
〈手洗い場〉
「うええぇぇん、どぼぢでぇー!」バシャバシャ