石上優はやり直す   作:石神

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柏木渚は話したい

5月も半ばを過ぎたある日……僕と先輩3人は、都内の水族館へ訪れていた。

 

「晴れて良かったね、マキちゃん。」

 

「そ、そうね!ぜ、絶好のデート日和ね……」ゴニョゴニョ

 

「えっ? マキちゃんごめん、最後らへんなんて言ったの?」

 

「な、なんでもないわよ! ……ほらっ、さっさと入るわよ!」

 

「えっ、うん。」

 

「あっ、待ってよ眞妃!」

 

水族館の入り口へと走って行く先輩達に、視線を送りながら考える……

 

「……」

(大丈夫、そんな変な事になったりしない筈……幾ら柏木先輩でもこれだけ人目があったら妙な事はしないだろうし、それに……)

 

来年には兄貴の結婚式もあるし……

 

桃先輩とゲームの約束もあるし……

 

まだまだ会長と四宮先輩のフォローをしなくちゃいけないんだ!

 

フラグ盛り盛りであった。

 

「優何してんのよ、置いていくわよ?」

 

「あ、はいすぐ行きます。」タッタッタ

 

「「「……」」」コソコソッ

 

〈水族館内水中通路〉

 

「GWの時期からズラしたのは正解だったわね。」

 

「うん、GWに来てたら今より人一杯だっただろうね。」

 

「石上君の意見聞いて良かったね、眞妃。」

 

「ホントよね、助かったわ。」

 

「いえ、どうせなら人がごった返してる時じゃない方が楽しめますからね。」

 

「石上君は水族館に友達と来たりするの?」

 

「あ、いや……僕、男友達居ないんです。普段話すのは会長くらいですし、女友達はいますけど来た事はないですね。」

 

「そっか、じゃあ僕は会長に続いて男友達2号かな?」

 

「え?」

 

「あ、ゴメンね、石上君は年下だけど頼りになるし、こうして一緒に遊びに来たらもう友達かなって。」

 

「……謝らないで下さい、そう言ってくれて嬉しいっす。」

 

「そっか、良かった。」

 

「……」

(優しい人だな、あのツンデレ発言しまくりのマキ先輩と変わらずに接し続けているだけの事はある……もし、また翼先輩が彼女自慢して来てもトイレットペーパーを使うのはやめてあげよう。)

 

謎の思いやりである。

 

「……アンタら何恥ずかしい事言ってるのよ。」

 

「うっ、スルーして下さいよ。」

 

「あはは、気にしないで。」

 

「……」

 


 

「どう見てもダブルデートだね。」

 

「えっ……じゃあコレが終わったら、ホテルでよん……むぐっ!?」

 

「ミコちゃんホントやめて、こんな往来で。」

 

「……伊井野ってムッツリだよねー。エッチなのはいけません、みたいな感じで風紀委員やってる癖に……」

 

「れ、麗ちゃん! 私はそんなんじゃっ……」

 

「「しーっ!」」

 

「静かにしなよ伊井野、石上達にバレるじゃん。」

 

「ミコちゃん、ハウスする?」

 

「うっ、ごめん……」

 

………

 

〈3日前〉

 

(あ、石上と……2年生かな?)

 

「じゃあ、土曜日の10時に○○水族館に集合ね。」

 

「はい、わかりました。」

 

「へぇ……」

(石上やるじゃん、年上とデートか……)

 

「あっ、居た……麗ちゃん、ご飯食べよ。」

 

「うん、今日は中庭で食べようか。」

 

「え? 別に良いけど何かあるの?」

 

「ちょっとね……大仏さんもそれで良い?」

 

「大丈夫だけど……」

 

「じゃ、行こうか。」

 

〈中庭〉

 

「石上がデートッ!? 麗ちゃんそれ本当!?」

 

「……」

 

「うん、ホントホント。」

 

「小野寺さん、詳しく聞かせてくれる?」

 

「えー、私も詳しくは知らないんだけど……」

 

………

 

「……なるほど、土曜日に水族館デートを……」

 

「い、石上、そんなふしだらな……」

 

「……」

(ふしだらなのは伊井野の頭の中でしょ……ってツッコミたいけどやめとこう。)

 

「……小野寺さん、土曜日暇?」

 

「え? まぁ暇だけど……ってまさか?」

 

「水族館行きたくない?」

 

「え、後つける気なの? 大仏さんて意外と……」

 

「ミコちゃんも行くよね?」

 

「えっ!? わ、私はそんなっ……!」

 

「ふーん……じゃあ小野寺さんと2人で行って来るから、ミコちゃんはお留守番ね。」

 

「あっ行く! 行くからっ! 置いてかないで!」

 

((チョロい。))

 

………

 

〈水族館アシカショードーム〉

 

「ミコちゃん、あんまり近づいたらバレちゃうからね?」

 

「うん、でも人多い……」

 

「まぁ、此処の目玉イベントらしいし……どうせなら尾行なんかしないでゆっくり見て回りたかったけど……」

 

「うっ、ごめんね、麗ちゃん。」

 

「まぁ別の機会にまた来ようか……大仏さん、石上達は?」

 

「彼処に先輩2人が並んで見えるから……近くに居ると思うんだけど、此処からじゃ見えないね。」

 

「こばちゃん、麗ちゃん、アシカ出て来たよ!」

 

「うん、可愛いねー。」

 

「だねー。」

 


 

眼前に広がる巨大な水槽を眺める。周りに人気は無く、今日の目玉イベントであるアシカショーを観に行ったようだ……唯一、僕とその隣で佇む少女を除いては……

 

「石上君、やっと……2人っきりになれたね。」

 

柏木先輩は、チラリと此方に視線を投げ掛けながら……ニコリと笑った。

 

 

 

 


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