石上優はやり直す   作:石神

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生徒会は出掛けたい

一学期の総決算である生徒総会も無事終わり、秀知院は明日からいよいよ夏休みへと突入する。

 

〈生徒会室〉

 

「うおらぁ! 生徒総会お疲れっ!!」

 

「明日から夏休みですよー!!」

 

「いえーい。」

 

「もう、石上くん! もっとテンション上げて言って下さい!」

 

「藤原先輩のテンションはいつもフルスロットルですね……夏休みだからといって、余り羽目を外し過ぎない様にして下さいね。」

 

「石上くんが先生みたいな事言う!!」

 

「藤原書記は夏休み、したい事とかあるのか?」

(藤原、わかってるよな?)

 

「勿論です! 旅行とか最高ですよねー!」

 

「あぁ、そうだな……日常から解放される時間ってのは必要だよな……」

(そうそう、その調子……)

 

「私も明日から1週間ハワイ行くんですよー!」

 

「」

(はーっ!? 前に生徒会で旅行行きたいっつった張本人が何先陣切ってハワイ行こうとしてんだよ!)

 

「そうですよね、旅行……いいですよね。」

(呼吸……楽しい……)

 

「……」

(普通に自分から誘えばいいのに、会長も四宮先輩も奥手なんだから……仕方無いな。)

 

「そういえば……会長、この前紹介した喫茶店はどうでした?」

 

「あぁ、中々良かったぞ……珈琲も俺好みの味と風味だったしな。なぁ四宮?」

 

「へ? あっ、そうですね……私は普段ああいった場所には行かないので、とても新鮮でした。」

 

「それは良かった。もし気に入ったのでしたら、5枚ずつ差し上げますからコレをどうぞ。」

 

石上は財布から束ねた紙を取り出し、白銀とかぐやに差し出した。

 

「コレは……あの喫茶店の珈琲無料券か。」

 

「どうしてこんなに?」

 

「あの喫茶店、3回利用すると一枚貰えるんですよ。夏休みは会長も四宮先輩も少しは時間もあるでしょうし、一緒に行ってみたらどうですか?」

 

「それはありがたいが、こんなに貰うのは……」

 

「それ、まだ余ってるくらいなんですよ。だから気にしないで下さい。」

 

「石上……ありがとな、ありがたく頂くよ。」

(お前マジで欲しい時にパスくれる良い奴だな。流石経験者、どっかのハワイアンとは大違いだ。)

 

「石上君、ありがとうございます。」

(ホンット良い子だわこの子っ! 頭の中ホノルルってる藤原さんとは大違いね。)

 

藤原の評価、また下がる。

 

「皆さんが夏休みはそれなりに忙しいのはわかってますけど、一度くらいは全員で何処かへ出掛けたいですよね。」

 

「石上?」

 

「僕は1年ですけど、会長達は2年……来年は受験勉強で遊ぶ所じゃないかもしれませんし。」

(事実会長は、前回と同じ様に進むなら来年は海外へ行くと言っていた……会長と四宮先輩の事も大事だけど、僕自身も会長達と思い出が作りたい。)

 

「石上君……」

 

「皆と一緒に遊べるのが今年だけかもしれないなら、一回くらいは……」

 

「そうだな……夏の終わりには大きな祭りがある。生徒会全員で集まって楽しもうじゃないか。」

 

「そうですね、可愛い後輩の頼みですし。」

 

「会長、四宮先輩……」

 

「石上くん! 私はっ!? 皆の中に私も入ってますよね!?」

 

「あ、はい、もちろんですよ。」

 

「なんか、ついで感が凄いっ!!」

 

「やだなぁ、藤原先輩……そんな事ある筈ないじゃないですか。」

 

「だからその目ええぇっ!!」

 

「やれやれ、夏祭りは8月20日だったな……全員予定を空けておいてくれ。」

 

「そうですね、わかりました。」

(夏祭り! 花火! 会長と花火!!)

 

「了解です。」

 

「あ……すいません。私その日は、トマト祭りでスペインでした……」

 

「……」

(この流れでそれ言うって凄いなコイツ。)

 

「……」

(藤原さん、少しは自己欲を優先する所を直した方がいいんじゃないかしら?)

 

「えっ、まさか私だけ除け者にしてみんなで夏祭りとか……そんな酷い事するんですか?」ウルウル

 

「うっ……」

(そういう言い方されると……)

 

「まぁ……」

(除け者にするのは、流石の私も……)

 

「はぁ……藤原先輩が来れないっていうなら仕方無いですね。」

 

「……っ!」

(石上!?)

 

「……っ!」

(石上君!?)

 

「夏祭りは僕達3人で楽しんで来るんで、藤原先輩は遠慮なくトマト塗れになって来て下さい。」

 

「」

 

「……」

(バッサリ切り捨て……いや、斬り捨てたな。)

 

「……」

(藤原さんにここまで言える男子なんて、石上君だけよね……)

 

「うぅぅぅっ、行きます! 夏祭り行きますよ! 行けばいいんでしょーっ!?」

 

「いえ、別に無理して来なくても……」

 

「ヤダヤダッ! 仲間外れは嫌ですぅっ! 私も夏祭り行きますーっ!!」

 

「まぁ、藤原先輩がそれで良いなら……」

 

「ううぅっ……鬼畜です、石上くんは鬼畜系男子です! うえぇぇっ……」エグエグッ

 

「人聞きの悪い事を言わないで下さいよ。」

 

「まぁまぁ、2人共それくらいにしておけ。」

(結果的に上手くまとまったな。)

 

「そうですよ。藤原さん、夏祭り楽しみですね?」

 

「ぐす……うん、楽しみ、わたあめ、タコ焼き、射的、いっぱいするの……」

 

「そ、そうですね……」

(精神年齢が退化してる……)

 

それぞれの夏休み編へ続く。

 


 

〈帰り道〉

 

「そういえば……さっき俺と四宮に5枚ずつ無料券くれたけど、そんなに喫茶店行ってるのか?」

 

「そうですね。殆どは、桃先輩と待ち合わせする時に使ってるだけですけどね。」

(殆どは喫茶店で待ち合わせして、そのままゲームしてるだけなんだけど……)

 

「そうなのか……」

(3回行ったら1枚貰える無料券、俺と四宮合わせて10枚、この前の2枚を足して12枚、12✖︎3………しかもまだ余ってるとか言ってたな。石上、龍珠とそんなにデートしてんのっ!?)

 

「会長、どうしました?」

 

「いや、流石だと思ってな……」

 

「?」

 

勘違いも続く。

 

 


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