〈小野寺麗は読ませたい〉
「お邪魔しまーす。」
「ミコちゃん、小野寺さん来たよ。」
「麗ちゃん、いらっしゃい。大友さんは?」
「ちょっとだけ遅れるってさ。」ガサゴソッ
「そっかぁ……って麗ちゃん何してるの?」
「ん? エッチな本は何処にあるのかなって。」
「ないよっ!? なんであると思ったの!?」
「だって……伊井野は学校であーいう本読む奴だし、持ってるかなって。」
「だからアレは誤解なの! そもそも、女子向けのああいう本は全年齢対象だったりするから、麗ちゃんが思ってるより健全なの!」
「アレが……健全?」←正気かよという目
「うわぁーん、こばちゃーん! 麗ちゃんがイジメるぅ!」ガシッ
「ヨシヨシ、小野寺さん……上から二段目の左の奥だよ。」
「こばちゃんっ!?」
「えーと、上から二段目の……左奥。」ガサゴソッ
「ああぁっ! 麗ちゃんダメーッ!!」
過激な少女漫画発見
「うわっ、キッツ……」ペラペラ
「」
「まぁミコちゃんは思春期だから……」
「思春期って言葉で片付けていいモノなの? はぁ……伊井野、エッチな本ばっかり読むんじゃなくて少しは違う本も読んだ方がいいよ?」
「うえぇっ、違うもん……ちょっと過激なだけの少女漫画だもん!」エグエグッ
「別に伊井野がムッツリスケベでも、私は気にしないよ?」
「私が気にするのぉ……」
「小野寺さん、それは?」
「女子高生向けの雑誌、ちょっと古いけどね。」
「どれどれ……初体験はいつだったアンケート、高校生までに34%……」
「そ、そんなっ……麗ちゃんっ!?」
「ちょっと待って! なんでそうなるのっ!?」
「だ、だって34%って事は、此処にいる内の1人が経験済みって事で、私とこばちゃんはずっと一緒だったからそういうのが無かったって知ってるし、残るのは麗ちゃんしか……」
「アンタ達2人が違うからって、次は確定って事にはならないからっ!」
「じ、じゃあ麗ちゃんもまだなの?」
「そ……そうだよ、悪い!?」
「良かったぁ……」
「え、なんで喜ぶの?」
「だって1人だけ経験済みって、なんか気まずいというか……」
「まぁ、ミコちゃんの言いたい事もちょっとわかる……」
「お邪魔しまーす! 伊井野ちゃん来たよー!!」
「あっ、大友さんいらっしゃい。」
「みんなもお待たせー。何してたの?」
「コレ読んで話してたの。」
「大友さんにはちょっと過激かもね。」
「へー、ちょっと見せて!……ふむふむ、高校生なら付き合ってから3ヶ月〜半年が彼との初体験第1位……皆は彼氏が出来たらどれくらいでするの?」
いきなりの爆弾投下である。
「ええっ!? わ、私はそんな……破廉恥な事なんてっ!」
「……なんか伊井野は、性に対する好奇心凄いから案外すぐ身体許しそう……」
酷い言われ様である。
「わ、私はそんなエッチな子じゃないもんっ!」
「いや、今更カマトトぶられても……」
小野寺の目は冷たかった。
「カマトトっ!?」ガーンッ
「おのちゃんは?」
「んー、正直わかんないんだよね……相手にも寄るだろうし。」
「そっかぁ、おさちゃんは?」
「私? うぅん、私もわからないなぁ……ちょっと草食系っぽいし。」ボソッ
「……大仏さん、草食系って誰の事?」ニマ
「えっ……わ、私そんな事言った!?」
「えっ? 何々、おさちゃんなんか言ったの?」
「な、なんでもないからっ! それより、大友さんはどうなのっ?」
「うーん、私はねぇ……」
「カマトト……」ズーン
女子達の集いは続く……
〈報道女子は想いを馳せたい〉
「はぁ、会長✖︎かぐや様不足ですわ……」
「かぐや様ぁ……」
「私達がこうしている間も、御二方は逢引などされているのでしょうね……」
その頃の白銀……
くっ、どうする? 喫茶店には俺から誘うか? いや、四宮から誘いの連絡が来るかもしれん。もう少し待つか……
「私みたいな雑草と違って、かぐや様は優雅な休日を過ごされているのかしら……」
その頃のかぐや……
もう! 会長は何をグズグズしているの? 折角、石上君が無料券を譲ってくれたのに! こうなったら、もう私から……いえ、もう少し待ってからにしましょうか……
「……それじゃ、今日の活動はここまで。次の活動日はまた連絡するから、忘れない様にね?」
「……エリカ、帰りますわよ。」
「うん……」
「もう、少しは元気出して下さい……そうですわ、帰りにスイーツでも如何です?」
「うん、食べる。」
「はぁ……長期の休みになる度に、こうなる様だと先が思いやられますわ。」
「……そういうかれんだって、さっき会長✖︎かぐや様不足って言ってたじゃない。」
「確かに、今生きる活力が不足しています。しかし、会えない時間が想いを募らせるのか……最近、筆の進みが捗って仕方ないのですわ。」ボソッ
かれんの妄想ノートは、二桁の大台に達し様としていた。
「……会えない時間が想いを募らせる。そうよね、そもそもかぐや様と同じ時代に生まれただけで充分恵まれてる訳だし!」
かぐやガチ勢復活である。
「そうですわ! それに、こうして街をぶらついていれば逢引をされる御二方を見掛けるかもしれませんし!」
「……あれ? 彼処にいるの会計君じゃない?」
「えっ、何処です?」
「ほら、あの喫茶店に……」
「あら、ホントですわね……向かいの席に誰かいますけど……っ!」
「あれ、龍珠さん……」
「龍珠さんですわ! やはり私の目は間違っていませんでしたわ! ラブな波動を感じますわ!」
「えぇ、そう? 只ゲームしてるだけにしか見えないけど……」
「エリカもまだまだですわね、年頃の男女が休日に逢う……この意味がわかりませんの?」
「その言い方だと、男女混合の部活動や委員会もそういう意味になっちゃうと思うんだけど……」
「もうっ! 相変わらずニブチンですわね! とにかくコレはスクープになりますわ! 早速記録しないとっ……」
「えー、スクープしちゃうの?龍珠さん怒ると思うけど……」
「大丈夫ですわ。記録すると言っても紙媒体にですし、会長✖︎かぐや様のシチュ妄想に転用する事にしか使いませんから。」
「その使い方もどうかと思うけど……」
「ついでに写真も撮って夏休み明けにでも、石上会計に見せてあげますわ!」カシャカシャ
「嫌がると思うけどなー。」ポンポン
「えっ?」クル
「おう、嬢ちゃん達……お嬢の写真撮ってどうするつもりか、説明してもらってええか?」
「」
「」
数分後……必死の説明が功を奏し、なんとか誤解は解けた。
「かれん、私埋められるかと思った……」ガクガクッ
「私は沈められると思いましたわぁ……」ブルブルッ
本日の教訓、好奇心は猫をも殺す。