石上優はやり直す   作:石神

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感想ありがとうございます(`・∀・´)
毎日更新が出来ずに止まる事もあるかもしれませんが、完結までよろしくお願いします。(_ _).


√A.仏の小鉢編
二学期突入


〈石上優は女々しくない〉

 

9月に入り新学期が始まったが……僕の心には、未だに多少の動揺が残っていた。1週間前、桃先輩に誘われて行った夏祭りで……つばめ先輩と出会ってから、胸にザワザワとした妙な感覚が芽生えていたからだ。

 

それはそうである……逆行という奇異な体験をしたとはいえ、中身は精々が高校生レベルの少年である。そんな簡単に自分の恋愛に折り合いをつけられる程、成熟した精神を獲得してはいない。無論石上も、あの卒業式の日に子安つばめにフられた事で、一応の気持ちの落とし所は見つけているし、吹っ切れてもいる。しかし……

 

「……」

(だってまさか、あんなタイミングで会うとは誰も思わないじゃん……射的勝負は負けるし、桃先輩には……)

 

勝負は私の勝ちだな、楽しみにしてな。

 

「はぁ……」

(……とかメッチャ良い顔で言われるし。いや、なんだかんだ言ってもとっくに吹っ切れてるし、それを何をグチグチと……僕だけが気まずいだけだし、大体フられてから1年と半年近く経ってるんだから、何を動揺してるんだよ。これじゃまるで、僕が凄い女々しい奴みたいじゃないか!)

 

普通に女々しかった。

 

………

 

〈秀知院学園某所〉

 

「……それで、新学期早々私達を集めるなんてどうしたの?」

 

「なんかあったの?」

 

「……ギガ子ちゃん! マッキーちゃん! 私に2人の力を貸して欲しいの!」

 


 

〈藤原千花は侮れない〉

 

新学期に入り数日が過ぎ、いつもの日常を過ごしていた生徒会の面々だが……

 

「TG部で双六ゲームを作りました! 皆でやりましょう!」

 

という藤原千花の提案により、なし崩し的にプレイする事になったハッピーライフゲーム……

 

「……」

 

しかし、記憶のある石上は知っている……コレがどういうゲームかを。

 

「……」ニヤリ

 

そして、藤原千花はほくそ笑む。この後輩男子に舐められっぱなしだった日々は、今日で終わりにするのだと。

 

この数日、既に完成していたハッピーライフゲームに追加で手を加え、部員の意見や交流関係から得た情報を追加し《新ハッピーライフゲーム》として、自分を一切尊敬していない後輩に一泡吹かせる為に生徒会室へと持ち込んだのだ。

 

「じゃあ石上くんからどうぞ!」

 

「……」

 

ココで石上も思い出す。自分が前回、何のマスを踏みどうなったのかを……

 

あ!交通事故イベントですね!もう一度サイコロを振って1が出ると……

 

1が出ました。

 

はい、石上くん死にました。

 

はい、石上くん死にました。

 

はい、石上くん死にました。

 

交通事故で死亡、奇しくも自分が逆行する原因となった事象である。ただの偶然……そう言い切るのは簡単だが、当の本人は……

 

「……」

(え? まさか……ただの偶然だよな? でも藤原先輩が所属するTG部が作ったゲームだし、変な呪いくらい掛かっててもおかしくは……うーん。)

 

石上はTG部の事をあまり信用していなかった。

 

「石上くん? 早く振って下さいよ。」

 

「……わかりました。」コロッ

(まぁ、そんな話ないか、偶然偶然。)

 

「5……えーと、放課後イベントですね。」

 

「……ッ!」

(しゃああああっ! 死亡フラグ回避!!)

 

ガチ安堵である。

 

「放課後イベントは、放課後に遊ぶか勉強するかが選べます! どっちが良いですか?」

 

「じゃあ遊ぶで。」

(死なないなら、なんでもいいや。)

 

「ふふふ〜、更にタイプも選べますよ? アウトドアとインドアから選んで下さい!」

 

「じゃあ、インドアで。」

 

「それじゃ! 石上くんには、このアニオタカードをあげます!」

 

「……ケンカ売ってます?」

 

そしてゲームは進行する。

 

白銀はガリ勉カード効果で、高学歴を獲得。かぐやはラッキーマスを多数獲得し、現在所持金トップ! 藤原、石上はゲーム慣れにより、効率良く自身のステータスを上げていく。

 

そして局面は、子供ゾーンから大人ゾーンへと移行する……

 

「あっ、石上くん結婚マスですね。この中から結婚する子を選んで下さい!」サッ

 

「……わかりました。」

(あれ? 一番近いプレイヤーじゃないのか。)

 

1、大仏こばち

2、龍珠桃

3、伊井野ミコ

4、小野寺麗

5、大友京子

6、四条眞妃

7、柏木渚

8、四宮かぐや

9、藤原千花

10、紀かれん

 

「全員知り合いっ!?」

 

「……」

(女子の知り合い多いな、石上……)

 

「……」

(人は見かけに寄らぬものとは言いますが……それにしても多いですね。)

 

「それぞれステータスが違うので、よく考えて下さいね。」

 

「知り合いの時点で滅茶苦茶選びづらいんですけど……っていうかよく調べましたね?」

 

「ふふふ、私はラブ探偵チカですよ? 石上くんと仲の良い女子くらい、直ぐに調べられますよ。」

(ふふ、知ってる人だと意識しちゃうでしょう? 冷静さを失った石上くんに大差で勝つ。そして、この中に好きな子がいるなら……イジリまくった後で、このラブ探偵チカが導いてあげましょう!!)

 

かなりタチが悪かった。

 

「うーん……」

(人数多いし、ステータスもバラバラか……誰を選ぶかな?)

 

「い、石上は誰を選ぶんだ?」ソワソワ

 

「うぅん、そうですね……」

(あれ? もしかして会長、四宮先輩が選ばれたらどうしようとか考えてる? いやいや、たかがゲームだし……そんな訳ないよな。)

 

「……ッ」

(些細なきっかけで異性を意識するのは良くある事だ……石上は成績も良く、内面的にも秀でた人間だ……四宮が結婚相手に選ばれたら、意識してしまう可能性もゼロではない。)

 

滅茶苦茶考えていた。

 

「……」

(でも結婚相手か……僕もいつか、そういう相手に出逢う時が来るのかな……僕みたいな奴を好きになってくれて、お互いを支えて尊重し合える様な女性が……)

 

 

石上……守ってくれて、ありがとね。

 

 

「……」

 

「石上くん! いつまで悩んでるんですかっ!?」

 

「あっ、すいません。じゃあ……大仏で。」

 

「……へー、ふーん?」ニマニマ

 

「藤原先輩、どうしたんですか? 顔が引き攣ってますよ?」

 

「それを言うなら緩んでますよでしょっ!? 本当に石上くんは上級生を敬いませんね!!」

 

「何度も言いますが、こんな扱いをしてるのは藤原先輩だけですよ。」ニコッ

 

「テメーコラーッ!!」

 

「ふ、藤原抑えろっ! 石上もあんまり煽るな!」

 

「すいません。」

 

「ふぅふぅっ、いいでしょう。このゲームで勝ってどちらが上か教えてあげます!」

 

(コレそういうゲームだっけ?)

「つ、次は俺だな。」コロッ

 

「あ、会長も結婚マスですね。」

 

「ッ!?」

(か、会長が結婚っ!?)

 

「結婚相手はこの中から選んで下さい。」

 

「俺も選択式なのか……」

 

1、四宮かぐや

2、藤原千花

 

「少ないなおいっ!?」

 

「だって会長が普段話す女子なんて、私とかぐやさんくらいですよね?」

 

「ぐぅっ! た、確かに……」

(石上の後だと、滅茶苦茶モテないやつみたいに見えるな俺……)

 

「さぁさぁ! 私とかぐやさん、どっちを選ぶんですか?」

 

「……」

(そんなもん四宮に決まって……いや、ちょっと待て! もし此処で、四宮を指名したら……)

 

あらあら、ゲームとはいえ私を結婚相手に選ぶなんて……会長、そういう事なんですね? ふふ、お可愛いこと。

 

(そんな事したら告白したも同然! くっ、仕方ないが此処はっ……)

「ふ、藤原書記だ。」

 

「へー、私ですかぁ……えへへへ、私会長と結婚しちゃいましたー。」テレッ

 

「」

 

「……」

(あれ? 四宮先輩じゃないのか……まぁ所詮ゲームだし、誰を選んだ所で現実とごっちゃにする人なんている訳ないか。)

 

「」

(か、会長が藤原さんと結婚!? なんで私じゃないのっ!? も、もしかして……会長は藤原さんの事がっ!?)

 

いた。

 

「会長、コレお祝い金です……四宮先輩、ゲームなので現実のお金は仕舞って下さい。」

 

「……ッ」プルプルッ

 

そして……

 

「あっ、また出産マスですねー。」

 

「お祝い金です。随分お盛んな様で……」ボソッ

 

「ゲームの話だからなっ!? ボソッとマジっぽく言うのやめろ!」

 

「……ッ」プルプルッ

 

「だから、リアルマネーは仕舞って下さい。」

 

新ハッピーライフゲームの……

 

「あ、石上くんはラッキーマスですね。アニメ好きが高じて、二次元空間からお嫁さんを召喚出来る機械を手に入れました! アニオタ冥利につきますねー。」

 

「やっぱりケンカ売ってますよね?」

 

勝者が……

 

「あ、かぐやさんも結婚マスですね。」

 

「四宮先輩は男性不信カードを持っているので、強制的に藤原先輩と結婚となります。」

 

「」

 

「っ!?」

(四宮の目が死んだっ!?)

 

決まったのだった……

 

「……という事で結果発表です!!」

 

1位、四宮かぐや(➕13億7500万円)

2位、藤原千花(➕4億3000万円)

3位、石上優(➕3億5000万円)

4位、白銀御行(➕9500万円)

 

「滅茶苦茶疲れた……」

 

「会長……一時期は1億8000万の負債があったのに、よく➕収支に出来ましたよね。」

 

「ハッピーライフゲームの勝者はかぐやさんでしたー!」

(石上くんに大差をつけられなかったのは悔しいですが、まぁ良しとしましょう。)

 

「……」

(1位なのに嬉しくないし、全然ハッピーじゃない……)

 

 


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