〈生徒会室〉
「1年てあっという間でしたねー。」
「僕は実質半年も居なかったので、余計に短く感じますね……」
「この1年間、皆には色々と支えてもらったな……感謝してるよ。」
「もう、やめて下さいよ会長。私達は望んで生徒会に居たんですから。」
(楽しい時間は短く感じるというけど、本当にその通りね……)
「ゲーム類も持って行かなきゃですね。」
「あぁ、あのイカサマトランプ。」
「うぐっ!? いいですか、石上くん! 世の中バレなきゃ何してもいいんですよ!」
「藤原……バレたからあんな目に遭ったんだろ。」
「あんな目……?」
「四宮が風邪で休んでいた日に、誰が見舞いに行くかを決める勝負をしてな。」
「藤原先輩が行くのを阻止する為に、僕と会長が立ち塞がった訳です。」
「かぐやさん! 2人ったら酷いんですよ!? 私が行ったら風邪が悪化するとか言って、お見舞いの邪魔してきたんですから!」
「そうだったんですか。」
(藤原さんが来なくて助かったわ。)
「はい、その勝負で藤原先輩がイカサマして来たので……コレを首に提げて、校内一周の罰ゲームやらせたんですよ。」ゴソゴソ
「まだあったのソレ!!? さっさと捨てちゃって下さいよ!!」
「いえ、藤原先輩の事だから、また使う事になると思います。」
「なんだとコラー!」
「2人共さっさと片付けますよ。」パンパン
「全く、最後まで賑やかなものだな。」
「……」
(最後……そっか、最後なのよね。)
………
「もう忘れ物はないな?」ギィ
「ファミレスでも行って打ち上げします?」
「それもいいかもな……」バタン
「……」
「藤原さん?」
「ゔぅっ…ぐすっ、えぐっ……!」ポロポロ
「藤原……」
「……藤原先輩。」ポンッ
「うぅっ…グスッ、石上くん……?」
「藤原先輩のそういう……自分の感情に素直な所、僕は好きですよ。」
「ううぅっ!!ごんな時だげっ……ひくっ、優しい事言うのズルいですぅ!」
「……そうっすね、すいません。」
第67期秀知院生徒会、全活動終了。
〈ファミレス〉
「「「「かんぱーい!」」」」
「さっきも言ったが、全員お疲れ様。生徒会の激務に、弱音を吐かずによくついて来てくれた。」
「まぁ、1番の激務は会長ですけどね。」
「僕達はあくまで補助的な役目ですしね……会議や集会は、会長が先頭に立って色々やってくれてましたから。」
「本当、1番大変な人が頑張ってたんですから……私達が弱音なんて吐けませんよ。」
「確かに大変だったな、こんなの1年やれば十分だ。後は優秀なのが後を継いでくれるのを待つばかり……どうだ石上、立候補してみないか?」
「ふふ、確かに石上君ならなれそうですね。」
「いえ、僕は生徒会長の器じゃないですよ。」
「そんな事はないだろう? 現に……」
「それに、僕にとっての生徒会長は……会長だけですから。」
「石上……」
「石上君……」
「……石上くんは、生徒会に入るより前に会長と会った事あるんですか?」
「え? どうしてです?」
「だってなんか、偶に会長を見る時に懐かしさ? みたいな感じの目をしてる事があるので。」
「そうなの? 藤原さん。」
「なんとなくですけどねー。」
「俺には身に覚えがないが……石上、以前に何処かで会ったか?」
「……藤原先輩の気のせいですよ、高等部で会ったのが最初です。」
(そういえば、藤原先輩が謎のミラクル属性持ちなの忘れてた。)
「そうか、そうだよな。」
………
「じゃあ、俺と四宮はこっちだから……2人共気をつけて帰れよ。」
「はい、会長達も気をつけて。」
「また明日ー!」
「えぇ、また明日。」
「……2人共行っちゃいましたね。」
「……そうですね。」
「私、あの生徒会が大好きでした。会長が居てかぐやさんが居て石上くんが居る、あの生徒会が……でも、もう終わっちゃったんですよね。」
「……そうとは限らないんじゃないですか。」
「え?」
「……帰りましょうか、送って行きますよ。」
「ふふ♪ 今日の石上くんは、優しいですね。」
「今日だけですよ。」
「なんで!? いつも優しくして下さいよ!」
「藤原先輩がやらかさなければいい話でしょう?」
「私が原因みたいな言い方やめて下さい!」
「無自覚とは、恐れ入りますね。」
「んだこらーっ!」
「はいはい、帰りますよ藤原先輩。」
「石上くんには次こそ、キツイお灸を据えてやりますからね!」
「……次ですか。」
「そうです、次こそです!」
そう言った藤原先輩は、いつもと変わらない……満面の笑みを浮かべていた。
〈職員室〉
「白銀……お前もう生徒会は、やるつもり無いって言ってなかったか?」
「最初はそのつもりでした。だけど……」
僕にとっての生徒会長は……会長だけですから。
一生に一度のわがままです、私は……
「……」
(あそこまで言われたんだ……応えなきゃ男じゃないだろ。)
会長は、会長がいい……
「……一生に一度、根性見せる時が来てしまったみたいで。」