石上優はやり直す   作:石神

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伊井野ミコは入れたい

 

〈生徒会選挙予測速報〉

 

白銀御行 60%

伊井野ミコ 35%

本郷勇人 5%

 

「おーっ!半数以上が会長に入れてますね! コレは当選確実ですよ!」

 

「いや……油断は禁物だ。」キリッ

(いやもうコレ、完全に勝ちだろ。)

 

「……」

(伊井野は35%か……前回の時よりも少しだけど高くなってるし、頑張ってるみたいだな。)

 

「次点は1年の伊井野ミコちゃん……ん?」

 

「何処かで見た名前だな。」

 

「……友達です。」

 

「あーっ! そうだ、石上くんと仲の良い女の子ですよ!」

 

「あぁ、あのゲームで見た名前だったか。」

 

「えぇ、丁度彼処でビラ配りしてるのがそうですよ……会って見ますか? 会長と同じ学年1位ですよ。」

 

「ほう……なら頼む。」

 

………

 

〈噴水広場〉

 

「よろしくお願いします!」

 

「是非ご覧になって下さい。」

 

「……2人共お疲れ。」

 

「石上?」

 

「どうしたの?」

 

「いや、ちょっと会長が伊井野と話しをしたいらしいからさ、顔繋ぎ役として来た。」

 

「……君が伊井野ミコか?」

 

「はい、初めまして……ですよね、白銀前会長。」

 

「前会長……まぁそうだな。聞いたぞ、学年1位らしいじゃないか。」

 

「はい、入学以来ずっと1位です。」

 

「ふ、ふーん……」

 

「……選挙の予測速報見たよ。伊井野、頑張ってるみたいだな。」

 

「うん、ミコちゃん毎日遅くまで選挙活動色々やってて……あんまり無理し過ぎないで欲しいけど。」

 

「大仏も無理はするなよ。」

 

「うん……でもミコちゃんも頑張ってるし、私だけ休んでられないよ。」

 

「まぁ、また何かあったら手伝うから言えよ。」

 

「……うん、ありがと。」

 

「……ッ!」

(コレは……なるほど、なるほど。石上くんはわかりませんが、この子はそれっぽいですね。)

 

「そして私が生徒会長になった暁には、藤原先輩に副会長として支えて頂きたいのです!」くわっ!

 

「えっ!? 私!?」

 

「えーーーっ!!?ちょっと待て! なんでよりによって藤原なんだ!?」

 

「伊井野、それは学園崩壊が起こるからマジでやめとけ。」

 

「失礼って言葉知ってますか男子共!!」

 

「ちょっとそこのマトモそうな人! これは流石に止めた方が良いんじゃないか!?」

 

「いえいえ……論理的に考えて、藤原先輩は副会長に相応しいかと。」

 

「論理的!?」

 

「……」

(まぁ、3ヶ月もすれば伊井野も藤原先輩の本性に気づき始めるんだけどな……)

 

わ、私は藤原先輩の事まだ尊敬してます!

 

……まだ?

 

「貴方は藤原先輩の何を知ってるんですか!! 藤原先輩程立派な人が居ますか!?」

 

「いや、居っむぐっ……」

 

「静かに! 人の話は最後まで聞きましょう!」

 

「いや、掃いて捨てるほど居るだろ。」

 

「石上くんこらぁ!!」

 

「藤原先輩は凄い人なんです! ピアノコンクールで金賞を取り、5カ国語を操るマルチリンガル! そして、秀知院学園で普通の成績を取る秀才!」

 

「最後だけ格下感ハンパないな。」

 

「石上くんは黙って! ううっ……最近はぞんざいな扱いをされる事も多かったので嬉しいです! この子凄く良い子です!」ギューッ

 

「……」

(藤原……瞬で懐柔されたな。)

 

「藤原先輩を副会長として招き入れ……そして、石上にもそのまま会計としてやってもらいます!」

 

「へ? 僕も?」

 

「今思えば……石上は、生徒会に入ってからおかしくなりました。」

 

「おい。」

 

「規則を破って校内でゲームをする様になったり、男女交際に現を抜かしたり……その原因は生徒会に入ったからだと私は思ってます!」

 

「生徒会は関係ありません! 石上くんは最初から(私に対する態度が)おかしかったです!」

 

「藤原先輩、人の事を頭おかしい奴みたいな言い方しないでくれます?」

 

「いいですか、前会長……確かに今は票数で遅れを取っています。しかし、私の理念はいつか皆に理解してもらえると思ってます! 藤原先輩と石上を救う為にも、この選挙勝たせてもらいます!!」

 

「絶対に負けません!」ビシィッ

 

「……なんでナチュラルに寝返ってるんだよ。」

 

「……裏切リボン先輩は放っておきましょう。」

 

「裏切リボンっ!?」ガビーン

 

………

 

「しかし……伊井野ミコか。コレは対策を講じる必要があるな……」

 

「その心配はないかと思いますよ……只、会長にお願いがあります。」

 


 

〈中庭〉

 

数日後、昼休みに中庭を通り掛かった時の事だ。

 

「ね、いいでしょ?」

 

「……いえ、私は興味ないので。」

 

「そう言わずにさー。」

 

「……?」

(敷地内でナンパか? 良くやるよ……)

 

「遠慮します、じゃあ私はコレで。」ガサッ

 

「……あれ、大仏?」

 

「い、石上!? こんな所でどうしたの?」

 

「いや、通り掛かっただけ。それより……さっき誰かと話してなかったか?」

 

「その……」

 

「待ってよ、ツレないなぁ。」ガササッ

 

「ッ!」

 

「……」

 

茂みから出て来た男子を見た瞬間、大仏の顔が曇った。僕は身体をズラして大仏を背中に庇う。

 

「……ナンパにしても、しつこ過ぎるのは問題だと思いますよ?」

 

「ナンパだなんて心外だなぁ……そもそも、君には関係無い話だろ?」

 

「関係大アリです、大仏は友達なので。」

 

「あれ……君、もしかして石上君?」

 

「そうですけど……」

 

「俺は君にも用があるんだよ……ちょっと話をしようか?」

 

「……」

 

「俺は本郷勇人……言ってしまえば、君が応援する大将の競争相手だよ。」

 

「あぁ、確か予測速報で最下位だった……」

 

「へぇっ……言ってくれるね? でも……それは今の所だよ。石上君、取引をしないかい?」

 

「取引……?」

 

「あぁ、君が僕に力を貸してくれるなら……僕が生徒会長になった暁には、君に副会長の地位を与えると約束しよう。」

 

「……なるほど、大仏にもその取引を持ち掛けたって事ですか。」

 

「いいや? 伊井野さんはあの公約内容的に勝手に自滅するだろうから、大仏さんを誘ったのは……男としてさ。」

 

「心外とか言っといて、結局ナンパだったんじゃねぇか!」

 

「ははは、当然だろ。それに、あの龍珠さんや背中に隠れてる大仏さん、マスメディア部とも懇意にしている君が手を貸してくれるなら、白銀君を蹴落とす事は難しくない筈だ。生徒会という権力と副会長の座、どうだい? 悪い話じゃないだろう?」

 

「はぁ……器じゃないですね、お断りします。」

 

「いやいや、君ならきっと副会長も問題無く熟せる筈だよ。」

 

「あぁ……違いますよ。器じゃないって言うのは、本郷先輩の事です。」

 

「なんだって……?」

 

「貴方は生徒会長の器じゃない……生徒会長所か、生徒会役員さえ務まらないでしょうね。」

 

「言ってくれるじゃないかっ……!」

 

「もういいですか? それじゃ僕達はコレで……大仏、行くぞ。」グイッ

 

「あ、うん。」タッタッタ

 

「……チッ! 彼さえ仲間に引き込めれば、選挙戦も楽に勝てると思ったが……マスメディア部も不発だったし、次はどうするか……」

 

「……」ジーッ

 

………

 

「はぁ、大仏も面倒な相手に捕まってたな。」

 

「まぁね……でも、あーいう事は良くあるし。」

 

「大変だな、大仏は。」

 

「慣れてるけどね……でも困ってる所を助けてもらって、背中に庇ってもらえるなんて……凄く熱いシチュだった。」ボソッ

 

「ん、なんて?」

 

「な、なんでもない! それよりもありがとね、助かったよ。」

 

「おう、昼休みももう終わるし教室行くか。」

 

「そうだね。」

 

………

 

「……」

(マスメディア部を利用しようとしただけでは飽き足らず、石上君も利用しようとするなんて……やり過ぎましたね、本郷君。)

 


 

〈生徒会室〉

 

「淹れ終わりましたよ。さぁ……温かい内に頂いて下さい。」チャポ、チャポ、チャポン

 

「お、俺、選挙辞退するっ…から!」ガタガタッ

 

「いやだわ……別に私は、そんな事を強いている訳じゃないんですよ? 安心して下さい、此処に貴方の敵は居ませんから……ね?」

 

「ひっ……」ガタガタッ

 

「あらあら……そんなに怯えてどうしたんですか? 私は只……教えて欲しいだけなんですよ? マスメディア部、石上君……次は何を利用するつもりなんですか?」

 

「ひっ、ひぃぃっ!?」ガクガクッ

 

本郷勇人、生徒会選挙リタイア。

 


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