石上優はやり直す   作:石神

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生徒会は話したい

 

〈生徒会室〉

 

「折角新メンバーとして女子が2人も増えたので、女子会をしましょう!」

 

「女子会……ですか?」

 

「はい! 今日は男子が居なくて仕事もないですし、やっちゃいましょう!」

 

「女子会……やった事ありませんね。藤原さん、それはどういう事をするんですか?」

 

「お菓子食べながらお話しするんですよー! 2人は女子会、やった事ありますか?」

 

「女子会かどうかはわかりませんけど……ミコちゃんの家に、同級生の女子数人と集まった事なら何度かあります。」

 

「いいですねぇ! 話題はやっぱり恋バナですか? 恋バナですよね! 今日は私達も恋バナやっちゃいますよー!」

 

恋バナ! 文字通り「恋に関するお話(バナシ)」という意味である。今の彼氏や好きな人に関する話題だけでなく、元カレの話や今カレの元カノにまつわる話まで、恋愛に関係する話を広く「恋バナ」と表す場合が多い。しかし! 現在生徒会室に集まっている4人の秀知院女子全員が過去に異性と付き合った事実は皆無! 必然的に話題は、今好きな人へと集約される事となる。

 

「……」

(あんまりこういうの得意じゃないんだけどなー、とりあえず様子見に徹しよう。)

 

「恋バナ……藤原先輩は好きな人居るんですか?」

 

「えー、私ですかー? 実は……います!」

 

「えっ!? 一体誰ですか!?」

 

「ふふん、秘密です! ミコちゃんが好きな人を教えてくれたら、教えてあげますよ!」

 

「うぅん、好きな人……」

 

「……」

(藤原さんに好きな人? 嘘ね、そんな素振り今までなかったですし。)

 

「……」

(藤原先輩、お願いですからミコちゃんの本心を刺激する様な事言わないで……)

 

「平野○耀くん。」

 

「」

(ミコちゃーん! それあんまり言わない方がいいヤツ!)

 

「ほほう! 何処のクラスで何年生ですか!?」

 

「あ、クラスとかじゃなくて、アイドルの……」

 

「アイドル……」

 

「……」

(藤原先輩、ちょっと引いてる……)

 

「……いつも私の事を見ててくれて、私の気持ちをわかってくれて、困った時は颯爽と助けに来てくれる……そんな人がタイプです。」

 

「そんな都合の良い男性がいるとは、到底思えませんけど……」

 

「います、世界の何処かに必ずいます。」

 

「ミコちゃん……夢を見るのは良いけど、現実に戻った時辛いのは自分だよ?」

 

「いるもん……」グスッ

 

「現実が見えてない辺り心配になるわね……」

 

「四宮先輩……ミコちゃんは夢見がちで、想像力が豊かな思い込みの激しい子なだけですから、きっと大丈夫です。」

 

「何処に大丈夫な要素があるのかしら……」

 

「私は言いましたよ! 藤原先輩はどんな人が好きなんですか!?」

 

「んー、まぁ仕方ないですねー。えぇと、一見クールなんですけど、凄く優しくて……頭は良いのに結構可愛い所もある……そんな人です。」モジモジ

 

「……」

(あれ……? 藤原さん、本当っぽい?しかも、その特徴に合致する人なんて……)

 

「……」

(え? 藤原先輩の好きな人って……)

 

「ッ!?」

(会長しかいないじゃない!)

 

「ッ!?」

(まさか、石上!?)

 

無論コレは藤原千花の策略。恋バナをする際に、好きな人はいないなどと場が盛り下がる様な事を言ってしまえば、他のメンバーの口が重くなるのは必至! 故に藤原は小細工を弄する……四宮かぐやに対しては、本人をあたかも異性の様に話す事で好きな人を聞き出す狙い。大仏こばちに対しても、石上と勘違いする様な言い方をし本音を聞き出す狙いである。かぐやと石上、どちらとも取れる様な言い方をしたのは、只々恋バナをしたいという欲求に従った結果である。

 

「……ッ!」フフンッ

(まぁ私は、石上くんが凄く優しくて結構可愛い所があるとまでは思っていませんけどね! 精々が少し優しくて、ちょこっと可愛い部分がある程度でしょう。)

 

藤原は小狡かった。

 

「藤原先輩、イニシャルとか教えて下さい!」

 

「んー、イニシャルはちょっと……あ、でも名前にYが入ってる事は教えてあげます!」

(セーフ……石上くんもかぐやさんも、名前にYが入ってて助かりました!)

 

「ッ!?」

(Miyuki!? コレは確定だわ! )

 

「ッ!?」

(Yu!? 嘘、どうしよう……)

 

恋は盲目とはよく言ったモノである。

 


 

〈中庭〉

 

「態々ごめんね? ちょっと、大至急2人に聞きたい事があって……」

 

「まぁ、それは大丈夫だが……」

 

「翼先輩、何かあったんですか?」

 

「先ずは、コレを見て欲しいんだ。」スッ

 

翼先輩は、スマホのトークアプリのトップページを開くと……1番上に表示された〈マキちゃん〉という部分を指差した。

 

「四条のアカウントだな。」

 

「問題は表示されてる文章で……既読を付けない様に、トーク画面は開いていないんです……この言葉になんて返せばいいのかわかんなくて……」

 

〈ぎゅー〉

 

「なんだコレは?」

 

「……コレだけしか送られて来てないんですよ。」

 

「ふむ……牛乳を買って来て欲しい、とかではないのか?」

 

「うーん……マキちゃんは普段牛乳飲みませんし、牛乳の打ち間違いだったら直ぐに訂正文が来ると思うんです。」

 

「確かにな……そもそも四条は、彼氏をパシらせたりはしそうにないしな。」

 

「はい、それでどう返すのが正解かわからなくて困ってたんです……」

 

「……僕答えて良いですか?」

 

「石上、わかるのか?」

 

「教えて、石上君!」

 

「まぁ、合ってるかはわかりませんけど……恋人のいる人って友達と居る時にふざけてだったり、唆されたりして友達の考えた文章を恋人に送る事があるんですよ。」

 

「あー……」

 

「……なるほど。」

 

「で、そのぎゅーって……多分ですけど、ハグした時の擬音じゃないんですか?」

 

「「……それだー!!」」

 

「つまり、ここでの最適解は……」

 

〈ぎゅぎゅうっ〉

 

「コレですよ。」

 

「さ、早速送ってみるよ!」

 


 

〈2年教室〉

 

「……ッ」ピコン

(あぁ、かれんに唆されて翼君に変なメッセージ送っちゃった……こんなのわかる訳ないのに!)

 

「はっ! 来た、来ましたわ眞妃さん! 」

 

「うぅっ、もし面倒な女って思われたら……」

 

「早く見て下さい!」

 

「うー……」ポチポチ

 

〈ぎゅぎゅうっ〉

 

「つ、翼君っ……」キュンッ

 

「きゃー! アツアツですわね!バカップル此処に在りですわ!」ペシペシ

 

「バカップル!? アンタがやれって言ったんでしょうが!」

 

………

 

「……返信来ました!」

 

「どうだ!?」

 

「どんな返信ですか!?」

 

〈わかってくれて嬉しい! ありがと!〉

 

「正解でしたあああ!!」

 

「しゃあああああ!!」

 

「よっしゃあああ!!」

 

謎の一体感が生まれていた。

 

 




わかりづらい様なので補足。
恋バナで藤原は好きな人の特徴を言っていますが、かぐやと大仏に狙いを絞っての発言です。
かぐやに対しては、かぐや本人を異性の様に話しています。そもそも、藤原はかぐやが会長好きなの知りませんしね。
大仏に対しては、石上に対する態度からある程度察しているので、石上とも取れる様な言い方をしています。
決して会長のつもりで話しているのでは無い訳です。会長の事は、異性としては産業廃棄物だと思ってます。

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