石上優はやり直す   作:石神

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感想ありがとうございます(゚ω゚)
地の文はどれくらいの割合が普通なのか模索中です……書いててわかんなくなってきた(゜∀。)
色々気をつけながら更新してみます。(`・∀・´)


伊井野ミコは癒されたい

 

〈生徒会室〉

 

〈あぁ……君は偉いよ〉〈とても頑張ってる〉〈良い子だね〉〈大丈夫……僕がついてるから〉〈僕は君の味方だよ〉

 

「」

 

「」

 

体育祭が終わり数日が経過した。当時の熱気も徐々に霧散していったある日の午後……生徒会室の机でイヤホンをし、勉強に打ち込む1人の少女と扉の前で動けなくなっている2人の少年少女……時間はこの状況が出来上がる20分前まで遡る。

 

………

 

〈生徒会室〉

 

「お疲れ様です。」ガチャッ

 

「……あれ? ミコちゃん、先輩達居ないね?」

 

無人の生徒会室を見渡した大仏は、背後に佇む伊井野へと振り返りながら問い掛ける。

 

「こばちゃん、確か2年は今日学年集会だよ?」

 

「あ、そっか。そういえば言ってたね。」

 

「私、先輩達来るまで勉強してるね。」

 

「うん、私の事は気にしないで。」

 

「……」カリカリ

 

伊井野は勉強道具を取り出すと、真剣な表情でノートと向き合っている。

 

「……」

(ミコちゃんは真面目だなー。少ない時間でも暇を見つけては勉強してるし、一位の重圧とかストレスも凄いんだろうなぁ……)

 

「うぅん……ゴメンこばちゃん、集中したいからイヤホンしていい?」

 

「うん、いいよ……私はちょっとお手洗い行って来るね。」

 

「うん。」

 

………

 

「……ふぅ。」

 

「……」トコトコ

 

「……ッ!」

(……あ、石上だ。)

 

トイレから出ると、生徒会室へと向かう石上が見えた。石上の背中を追い掛けて話し掛ける。

 

「石上、今から生徒会?」

 

「あぁ、大仏だけか?」

 

「ミコちゃんは生徒会室に居るよ。先輩達が居ないから勉強してる。」

 

「へぇ、会長達居ないの?」

 

「学年集会だって。」

 

「……学年集会?」

 

その言葉に、ドアノブを回そうとした石上の手が止まった……

 

「石上、開けないの?」

 

「なんか……嫌な予感がするんだよ。」

(……なんだ? 何かを忘れている様な気がする……思い出せ、何かがあった筈だ……)

 

「……とりあえず、入ろうよ?」

 

固まり続ける石上に痺れを切らした私は、もう片方のドアを開いてしまった。

 

「大仏、待っ……!?」

 

………

 

〈あぁ……君は偉いよ〉〈とても頑張ってる〉〈良い子だね〉〈大丈夫……僕がついてるから〉〈僕は君の味方だよ〉

 

「」

 

「」

(あ、嫌な予感の正体はコレか……)

 

石上優……死ぬ寸前に縋るCDと二度目の邂逅である。

 

「」

(ミコちゃーん!? 何とんでもないCD聞いてるの!?)

 

〈辛いよね、でも大丈夫〉

 

「」

(辛いのは友達のこんな所を見ちゃったこっちだし、全然大丈夫じゃないよ!?)

 

〈泣きたい時には泣いていいんだよ?〉

 

「」

(友達のとんでもない秘密を知った私が泣きたいよ!……って、そういえば石上は……)

 

「……」ソー

 

「……ッ!」ガシッ

 

黙って生徒会室から出ようとしていた所を、大仏に腕を掴まれて阻止される。

 

「ちょっ!? 大仏、離してくれ!」

 

「なんで出て行こうとしてるの!?」

 

「いや、こういうのは同性の方が言い易いだろうし……」

 

「私が言うの!?」

 

「だって、僕は言いたくないし……」

 

「私も嫌なんだけど……」

 

「まだ女友達に言われた方がダメージは少ないと思うんだ。」

 

「私には荷が重いよ……」

 

「いや、でも急がないと……」

 

大仏と小声で言い争う僕の背後から、ガチャリとドアノブを回す音が僅かに聞こえた。

 

「こんにちはー!」ガチャッ

 

「あー! あー! あー!」

 

「あ……藤原先輩!あれ? こばちゃんと石上も居たの?」ピッ

 

「う、うん。勉強の邪魔しちゃ悪いと思って。」

 

「もう、気を遣わなくてもいいのに。」

 

「……」

(いや、かなり気ぃ遣ったよ……)

 

「あのー……さっき入って来た時、変な声しませんでした?」

 

「き、気の所為じゃないですか?」

 

「そうかなぁ……あれ、ミコちゃんが音楽聴いてるー。何聴いてるの?」

 

「軽いヒーリングミュージックですよ。」

 

死ぬ寸前に縋るヘビーミュージックである。

 

「……ッ!」

(もうダメだ、もうすぐ会長と四宮先輩も来てしまう……もう僕に出来るのは……!)

 

「そうなんだー、ごめんね勉強の邪魔してー。」

 

「いえ、気にしないで下さい。」

 

藤原への返答を済ませた伊井野は再度、イヤホンを耳に差し込み勉強を再開する。

 

「ミコちゃん、待っ…んぐっ!?」

(い、石上!? なんでっ!?このままじゃ、ミコちゃんが闇が深い痛い子扱いにっ!)

 

伊井野の身を案じる大仏を僕は背後から抑える。

 

「堪えてくれ、大仏! ダメージを最小にするにはもうこれしかないんだ!」ボソボソッ

(こうなったら、会長と四宮先輩が来る前に全てを終わらせるしかっ……!)

 

「んーっ!?」ゾクゾク

(耳元で囁かないでー!?)

 

伊井野のスマホから発せらた再生音のピッという音が、その時の僕には……どんな騒音よりも響いて聞こえた。

 

〈君は本当に可愛いね〉〈大丈夫、自信持って〉〈世界一可愛いよ〉

 

「……」

 

「……」

 

「おぉぅっ……」ヒキッ

 

「」

 

………

 

「皆さん、遅くなりました。」

 

「皆揃ってるな、それじゃあ早速……ん? 伊井野はどうかしたのか?」

 

「」

 

「気にしないであげて下さい。ミコちゃんは……今ちょっと自分を見失ってるだけなので……」

 

「何があった!?」

 

「何かあったんですか?」

 

「……伊井野の分の業務は僕がやるので、少しの間放っておいてあげて下さい。」

 

「うぅむ、まぁ石上が言うなら……」

 

「仕方ありませんね。」

 

「……」

(コレはイジっていいヤツなんですかねー?)

 

………

 

「では、今日の業務はここまでにしよう。」

 

「そうですね、お疲れ様でした。」

 

「お疲れ様ー!」

 

「お疲れーっす。」

 

「お疲れ様です。」

 

「」

 

「結局、伊井野は元に戻っていないんだが……」

 

「本当にどうしたのかしら?」

 

「うぅん……まぁ、伊井野の内面に深く関わる事なので……」

 

「ミコちゃんが正気に戻るまで私達が付いてますから、会長達は先に帰って大丈夫ですよ。」

 

「そうか……まぁ同学年にしかわからない事もあるか……」

 

「藤原さんは最初から居ましたよね? 何か知ってるんじゃないですか?」

 

「……ミコちゃんの名誉の為に言えません!」

 

「名誉って……」

 

「……仕方あるまい。四宮、藤原書記、俺達は先に帰るぞ。」

 

「そうですね、わかりました。それじゃ石上君、戸締りお願いね?」

 

「それじゃまた明日ー。」

 

「はい、お疲れさんでした。」

 

「お疲れ様です。」

 

………

 

生徒会室を出て行く先輩達を見送り、10分が過ぎた頃……

 

「……ハッ!?……あれ、私?」

 

「ミコちゃん……」

 

「やっと元に戻ったか……」

 

「……っ!?!!? あ、夢か……」

 

「ミコちゃん……現実逃避したい気持ちはわかるけど……」

 

「ショックなのはわかるけど現実だぞ。」

 

「はあっ!? ショックな訳ないでしょ!」ヨロ

 

石上の言葉に立ち上がり抗議する伊井野だが……

 

「でも自立出来なくなってる!」

 

精神的ダメージは甚大であった。

 

「まぁ、落ち込むのもわかるしな……もう帰って寝て忘れろよ。2人共送って行くから。」

 

「ミコちゃん、帰ろ?」

 

「うん……藤原先輩何か言ってた?」

 

「……特に何も言ってなかったよ。」

 

「……」

(顔は引き攣ってたけどな……)

 

本日の勝敗、1年組の敗北

伊井野のやらかしに巻き込まれた為。

 


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