石上優はやり直す   作:石神

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合コン遊戯に興じたい

 

〈生徒会室〉

 

「みんなで合コンゲームやりましょう!」

 

体育祭から早1週間が経ち、通常業務へと戻った生徒会……突如藤原の発言により開催される事となった10円玉ゲーム。YESなら表を、NOなら裏を出し出題者の質問に答える匿名式アンケートゲームである。

 

「嘘はダメですからね!? 少しでも怪しいと感じたら嘘発見機で晒し上げますからね!!」

 

「藤原さん、何もそこまでしなくても……」

 

「合コンにポリグラフ持って来る人とか、次から絶対呼ばれませんよ。」

 

「あ、あれ? 合コンゲームってコレ使わないんですか?」

 

「ミコちゃんそれ、コックリさん呼ぶ奴……」

 

「伊井野の中の合コンのイメージどうなってんの?」

 

「じゃあ行きますよー? 私に恋愛感情を持っている人は表、持ってない人は裏を出して下さい!」

 

「……」

(藤原もまた面倒な質問を……)

 

「どうして藤原先輩は、自分から傷付きに行くんですか?」

 

「どういう意味ですか!? いいから出して下さい! 3、2、1、ハイ!」

(ふーんだ、口ではなんとでも言えますからね! 本当は私に普段からドキドキしたりしているんでしょうっ!?)

 

裏×6

 

「……」ホッ

(良かった、会長は藤原さんに恋愛感情は無いのね……まぁ知ってましたけど。)

 

「……ミコちゃん、嘘発見機の準備して。」

 

「は、はい!」

 

「藤原先輩、往生際が悪いですよ。」

 

「それはこっちのセリフです! 」

 

「ふ、藤原先輩、準備出来ました!」

 

「では、会長から嘘発見機にかけます!」

 

「はぁ、さっさと終わらせてくれよ……」

(此処で反応したらマズイ、何がなんでも平静を保たなくては!)

 

「いいえで答えて下さいね?……会長は、私に恋愛感情を持っていますか?」

 

「いいえ。」

(親父の顔、親父の顔……)

 

〈……〉←嘘発見機無反応

 

「……」ホッ

 

「」

 

「ぶふっ……」

 

藤原先輩の、ウソでしょ……とでも言いたげな表情に思わず吹き出した。

 

「石上くん、何笑ってるんですか!」

 

「いえ、グクッ……すいません。」キリッ

 

「もー! 次は石上くんですよ!」

 

「はいはい。」

 

「いいえで答えて下さい……石上くんは、私に恋愛感情を持っていますか!?」

 

「いいえ。」

 

〈……〉←嘘発見機無反応

 

「……」ホッ

(はぁ、良かった……石上は藤原先輩を好きじゃないんだ。)

 

「もおおぉぉ! なんでウチの男子共は、こんなにも恋愛に淡白なんですか!? 特に会長は、私が普段どれだけお世話してるとっ……」

 

「うぐっ……なんかスマン。」

 

「別に恋愛に淡白な訳じゃなくて、単純に藤原先輩が恋愛対象外なだけですよ。」ニコッ

 

「そっちの方が腹立つんですけど!?」

 

「次は僕が質問しますね……現在、好きな人がいる人は表を、いない人は裏をお願いします。」

 

「「「っ!!?」」」

 

(い、石上!? なんつぅ質問をっ……)

 

(石上君!? 貴方なんて質問をっ……)

 

(どうしよう……嘘ついて裏を出してもいいけど、嘘発見機を使われたら困るし、うぅん……)

 

「じゃー、行きますよー?」バッ

 

表×4

裏×2

 

「えっ、多いっ!?」

 

「だれだれ!? 誰が恋してるんですか!?」

 

「藤原先輩、特定は禁止ですよ。」

 

「……ッ」

(こ、この中に恋をしている人間が……)

 

「……」

(4人……伊井野さんは、この前の女子会で堂々とアイドル好きを公言していましたし、藤原さんも態々女子会で小細工を弄した事実から好きな人がいるとは考えづらい……つまり、表を出したのは藤原さんと伊井野さん以外の全員?)

 

「……」

(一体誰だ? 藤原のそういう話は聞かないから、裏を出した2人の内1人はおそらく藤原だろうが、残りの1人は……)

 

情報量の差……女子会に参加したかぐやは、伊井野の歪んだ恋愛感を直接聞く事が出来た為、裏を出した人間を特定可能。

 

対する白銀は当然ながら、女子会は不参加。それどころか、その様な催しが開かれていた事すら知らない。狙った訳ではないが、此処に来てかぐやは情報量の差で一歩リードする事となった。

 

「……」

(僕以外に3人が表を出した……会長と四宮先輩は確定で、藤原先輩は除外……伊井野か大仏のどちらかが、今誰かに恋をしている……?)

 

「じゃあ次はミコちゃん、行きましょー!」

 

「えっ、私ですか……えぇと、私……普段から友達に色々ダメ出しされる事が多いんですけど……もしかしたら、生徒会でも全然役に立ってない役立たずなんじゃないですか?」

 

不安そうな表情を浮かべ、周りを見渡しながら洩らした伊井野の発言に生徒会室の空気が凍る。

 

「質問内容が暗いな!?」

 

「さっきまでの空気が吹き飛んだぞ……」

 

「すいません……じゃあ質問を変えます、私を生徒会に必要な人間だと思っている人は表、要らないと思ってる人は裏をお願いします……」

 

「だから暗いってっ!!」

 

「それ何の投票!?」

 

「……」

(またミコちゃんはブッとんだ事を……)

 

「じゃあ行きますよー? ミコちゃん必要だと思ってる人は……」

 

表×6

 

「6人! ミコちゃんはちゃんと生徒会に必要な人材ですよ!」

 

「えっ、本当ですか?」

 

「一体どんなダメ出しをされたら、そこまで病むのか気になるな。」

 

「まぁ、小野寺さんとか私が結構ズバズバ言ってるから……」

 

「伊井野監査は、普段から真面目に取り組んでいるしな。」

 

「そうですね、大仏さんと風紀委員会を兼任していて良く頑張っていますし。」

 

「そうですよ! ミコちゃんはもっと自信持って下さい! ミコちゃんは可愛い! 頑張ってる! 頼りになります!」

(……特殊性癖持ちな部分は、ちょっとアレですけど!)

 

「……ッ!」モジモジ、ゾクゾク

 

「伊井野はマジで1人で行動するのは控えろよ、チョロいにも程があるから。」

 

「ミコちゃんが終わったから、次は私ですね……付き合うなら巨乳の方がいい、YESなら表、NOなら裏でお願いします。」

 

「「えーっ!!?」」

 

「大仏庶務、なんて質問を出してるんだ!?」

 

「なんで、男子を狙い撃ちすんの!?」

 

「女子は全員、表を出して下さいね。」

 

「特定禁止だっつってんのに、特定する気満々じゃねぇか!!」

 

「まぁまぁ、ちょっとした茶目っ気ですよ。」

 

「いや大仏、その質問エグいって……」

 

「因みに、どちらを出そうと嘘発見機は使いますから正直に答えた方が良いですよ?」

 

「悪魔かお前は。」

 

「……」

(石上は胸の大きさで女性を選ぶなんて事はないと思うけど、念の為確認だけしておこう。)

 

普段から、身長に見合っていないスタイルを有する伊井野と一緒にいる大仏である。石上の人間性を信じている一方、男の下心的存在を危惧する板挟み的心理状態であった。

 

「さあさあ〜! 会長も石上くんも観念して下さい。」ニマニマ

 

「会長? 早くお出しになって下さい。」

(まさか、胸の大きさにしか目がいかない卑劣漢ではないと信じていますが……)

 

「石上もほら、早く出して。」

 

クイッと眼鏡を押さえる大仏の言葉に後退る。

 

「か、会長からどうぞっ……」

 

「い、いや、石上から行けよ! 俺は後でいいからっ……!」

 

「「「さぁ、早く。」」」

 

「「あ、ああぁぁ……」」

 

本日の勝敗、白銀&石上の敗北

女子の多数派圧力の怖さを思い知った為。

 

 

 


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