石上優はやり直す   作:石神

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感想ありがとうございます!(`・∀・´)


恋する少女は話したい

 

〈中庭〉

 

「……石上がグイグイ来てる?」

 

「うん……」

 

12月に入り、二学期期末テストも無事終了したある日の午後、ベンチに座り大仏の言葉に耳を傾けるのは同じクラスの小野寺麗である。

 

「ふーん、良かったじゃん。石上も大仏さんの事、意識してるって事じゃないの?」

 

「そう……なのかな? でも……そんな都合が良い話があると思う?」

 

「うーん、私はグイグイ来てる内容を知らないからねー。具体的にはどんな感じで来てんの?」

 

「え、えぇと……後ろから抱きつかれたり、生徒会が休みになったのに態々残って勉強を教えてくれたり、マフラー貸してくれたり、それに……」

 

大仏にしか、こういう事やってない。

 

「くうぅ……」ドキドキッ

 

「……それに?」

 

「な、なんでもない……!」

 

大仏は紅潮した顔を隠す様に、俯きながら答えた。

 

「えー……」

(そこまでしてる時点で、高確率で石上も大仏さんの事好きだと思うけど……でも、後ろから抱きつくなんて、石上も結構過激な事すんねー。)

 

伊井野の面子を守ろうとした結果である。

 

「じゃあさー、大仏さんもちょっと攻めてみたら? 石上が大仏さんを意識してるなら、何かしらのリアクションがあるかもしれないし。」

 

「攻める……どんな感じですればいいかな?」

 

「え、うーん……」

 

小野寺は言葉に詰まる。何故なら……この女、大仏の恋愛相談に乗ってはいるが自身の恋愛経験は皆無! 故に異性に対するアピールなど、皆目見当も付かない。精々が少女漫画やドラマ、友人の経験談から答えを導くしか出来ないのである。

 

「そういえば……手に対するスキンシップは、好意の意味があるって聞いた事あるよ、隙を見て手でも握ったら?」

 

「えぇっ!? それはちょっと、ハードルが高いというか……」

 

「……あれ? 体育祭の時に、借り物競争で手握ってなかった?」

 

「あ、あれはっ……石上に引っ張られてただけだから……!」

 

「ふーん、手握るくらいで……うぶだねー。」

 

「もう、やめてったらー。」

 

中庭で2人の少女が恋バナに花を咲かしている頃、生徒会室では……

 

………

 

〈生徒会室〉

 

「……それで、この前が付き合って半年記念でね? その日の翼君は、凄く強引で……」

 

「……」

 

「い、所謂……フ、フレンチキスっていうの? そういう感じのをされちゃって……」

 

「……え?」

(フレンチ……? 何故いきなり西洋料理の種類の話に?)

 

「それでね、それでねっ……!」

 

「あの、眞妃さん……話の腰を折って申し訳ないのですが、フレンチキスとは何でしょう?」

 

「えっ!? おば様知らないの?」

 

「すいません、そういった事には疎いもので……」

 

「あぁ、名家の御令嬢は箱入りだもんねぇ……えぇと、フレンチキスっていうのは……」

 

「フレンチキスというのは?」

 

「ディ、ディープなキスみたいな?」

 

「ディープ? 深いのですか? 具体的に何が深いのですか?」

 

無知とは罪である。

 

「えっ、えぇと……し、舌をね……?」

 

「……舌?」

 

「」

(ええぇぇっ!? ここまで言ったんだから、なんとか察しなさいよ!?)

 

四条眞妃の困惑も仕方のない事である。1学期の初体験勘違い事件を経て、一応の性に対する基礎知識は身に付けてはいるが、基礎知識はあくまでも基礎知識。基礎を発展させた応用編は未だblack boxの中で燻っている状態である。

 

「……あの? 眞妃さん、出来ればもっとちゃんと教えて頂きたいのですが……」

 

「し、仕方ないわね!」

 

四条眞妃は立ち上がると、かぐやの耳元へと口を近付ける。

 

「ディープキスっていうのはね……」

 

「……はい。」

 

「……で、2人の……をしたり…されたり……っていうのがディープキスよ、わかった!?」

 

半端ヤケクソで説明した四条眞妃であった。

 

「」プルプルッ

 

「お、おば様?」

 

「は、破廉恥です! そ、そんなっ……粘膜接触を高校生がするなんて!?」

 

「ち、ちょっと!? 粘膜接触とか生々しい言い方しないでよ!」

 

「ま、眞妃さん!? 今はそういうのが普通なのですか!?」

 

「あ、当たり前でしょ! 皆やってるわよ!」

 

四条眞妃は、自身のアブノーマル扱いを避ける為にホラを吹いた。

 

「当たり前……皆やってる……」

 

「あっ、でもこういうのは本当に好きな人とやるものだからね? 其処は間違えちゃダメよ?」

 

「も、勿論です! 私はそんなはしたない女じゃありませんからっ……!」

 

「なんか言い方に含みがあるんだけど……」

 

「ディープキスは、本当に好きな人に……」

 

幸か不幸か、今回もかぐやに時限爆弾が搭載された。

 

「それで、どうだったんですか?」

 

「な、何が?」

 

「で、ですからっ……ディープキスの感触とか、感想とかです!」

 

「ね、ねぇ……なんかディープキスってストレート過ぎていかがわしい感じがするから……おさしみって言い方にしない?」

 

「……其方の方がかなりいかがわしい印象を受けますが、別にいいですよ。」

 

「ふう……やっと終わった。」ガチャッ

 

「「ひゃわあぁぁっ!!?」」ビクゥ

 

「えっ!? 何!?何事だ!?」

 

「か、会長!?」

 

「お、おう、四宮……四条も居たのか。」

 

「ま、まぁね。 」

 

「何か相談事か?」

 

「うぅん、まぁそんなトコ!……じ、じゃあ、そろそろ失礼するわね!」

 

「お、おう……」

 

バタンッと勢いよく扉を閉めると、四条眞妃は出て行った……

 

「随分と慌てていたな……何か聞かれたくない話だったのか?」

 

「ま、まぁそうですね……おさしみの話を少々。」

 

「おさしみ?」

 

「……ッ」ドキドキッ

 

「……?」

(わからん、なんで四宮は顔を赤くしているんだ? そもそもなんで刺身?)

 

白銀は混乱した。

 




※おさしみとは、江戸時代の隠語でディープキスの事です。(`・ω・´)

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