石上優はやり直す   作:石神

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感想ありがとうございます(゚ω゚)


大仏こばちは攻めてみたい

 

〈生徒会室〉

 

「こんちゃーす……あれ、会長だけですか?」

 

石上が生徒会室に入ると、室内に居るのは白銀御行だけだった。白銀は視線を下ろしたまま、手元の書類にサインをしながら答える。

 

「あぁ、2年は今日三者面談だ。俺は順番最後だから、事務処理しに寄っただけ。」

 

「あー、三者面談……今日でしたか、面倒臭そうですね。」

 

「自分の将来に関する事だからそうも言ってられんがな……石上は将来の展望とかないのか?」

 

「将来の展望……」

 

白銀は話の流れ的に当然、進路や就職についての展望を聞いたに過ぎないのだが……

 

「……」

(出来る事なら早い内に大仏と付き合って、そこからは恋人として高校生活を過ごしたいし、一緒の大学にも行きたい……)

 

今の石上は、若干恋愛脳になっていた。

 

「石上、どうした?」

 

「あ、すいません……そうですね、奉心祭が勝負かなと思います。」

 

「いや、何の話だよ。」ガチャッ

 

「お疲れ様です。」

 

「おぅ、お疲れ。」

 

「大仏庶務、伊井野監査はどうした? 一緒じゃないのか?」

 

「今日2年の三者面談で、風紀委員が少し人数不足なんですよ。とりあえず、先輩の面談が終わるまでの繋ぎ役として、ミコちゃんが残ってます。」

 

「なるほどな。」

 

「白銀会長も今日は面談じゃないんですか?」

 

「あぁ、時間まで仕事しにな……そろそろ行かなくてはならんな。少しの間、石上と大仏庶務の2人になるが……」

 

「大丈夫ですよ、とりあえず進められる分は進めておきますから。」

 

石上はパソコンを立ち上げながら、書類の準備に取り掛かる。

 

「ふむ、石上がいるなら大丈夫か……直に藤原と四宮も来ると思うからのんびりやっててくれ。」

 

「了解っす。」

 

「わかりました。」

 

2人の返事を確認すると、白銀は生徒会室を出て行った。

 

「……じゃあ大仏は、この申請書類をクラスと部活で別にしておいてくれ。」

 

「うん、任せて。」

 

「おぅ、任せた。」

 

石上はパソコンで書類処理を、大仏は書類の選別作業に暫し没頭する……

 

………

 

「……ふー、終わったぁ。」

 

僕はパソコンから目を離すと、天井を見上げて目頭を押さえる。

 

「お疲れ様、相変わらず早いね。」

 

「まぁ、これくらいはな……」

 

大仏の言葉に、両手をヒラヒラと振りながら答える。

 

「……」

 

そういえば……手に対するスキンシップは、好意の意味があるって聞いた事あるよ、隙を見て手でも握ったら?

 

(……よし!)

「ねぇ、石上……」

 

「ん?」

 

「パソコン作業で疲れてるならさ……マッサージでもしようか?」

 

「マッサージ?」

 

「うん、パソコン腱鞘炎っていうのもあるらしいし……ダメ?」

 

「いや、してくれるなら有難いけど……」

(え? マッサージ? しかも手のマッサージって事は、直接手を握られるって事!?)

 

「じ、じゃあ……するね?」ギュッ

(き、緊張してきた……)

 

大仏は石上の隣に移動すると、靴を脱ぎソファに正座で座り直した。石上と向かい合い、両手を伸ばして石上の差し出された手を包み込む様に握るとマッサージを始めた。

 

「……っ!?」

(大仏の手、柔らかっ……いやいや、大仏は善意でやってくれてるんだ、邪な考えは捨てろ!)

 

「……んっ、ふっ……!」ニギニギ

(やっぱり……石上も男の子なんだなー、私の手なんかより全然大きい……)

 

「……」

(好きな子が自分の為に頑張ってる姿って、嬉しいというか……凄い癒されるな……)

 

「……石上の手、意外と大きいね?」

 

「ん、そうかな?」

 

「うん……ねぇ石上、気持ち良い?」

 

「あぁ、凄い気持ち良いよ。」

 

「そっか、良かった……」

 

「……」

(油断したら、勢いで告りそうになる……耐えろ、石上優!)

 

「……」

(もし、石上と付き合えたら……こういうスキンシップも増えるのかなぁ……)

 

などと生徒会室でやっている2人だったが……

 

………

 

〈2年教室廊下〉

 

「あ、かぐやさんも面談終わったんですか?」

 

「えぇ、藤原さんも?」

 

「はい! 一緒に生徒会室行きましょー!」

 

「そうですね……会長が言うには、生徒会室には石上君と大仏さんの2人だけの様ですし。」

 

「えっ!? かぐやさん、それは本当ですか!?」

 

ガシッと藤原はかぐやの肩を掴み問い掛けた。

 

「え、えぇ……先に事務処理を進めてくれているらしいですよ。」

 

「こうしちゃいられません! かぐやさん、急ぎますよ!」グイグイッ

 

藤原はかぐやの手を掴むと一目散に生徒会室へと向かった。

 

「えぇっ!? ふ、藤原さん!?」

 

「かぐやさん、急いで!」

 

「な、なんなのー!?」

 

………

 

〈生徒会室前〉

 

「もう……藤原さん、どうしたんですか?」

 

息を整えながら、かぐやは藤原をジト目で睨む。

 

「シッ! ……かぐやさんは気付いてましたか? こばちちゃんが石上くんを好意的に見てる事。」

 

「好意的? えぇまぁ、それくらいの事なら気付いてましたよ。」

 

「いいですか、かぐやさん! この場合の好意的って意味は恋愛的な意味ですよ! ラブ探偵の恋愛センサーが反応しまくってます!」

 

「はぁ……それで、藤原さんは何がしたいんですか?」

 

「いいですか? 誰も居ない生徒会室に男女が2人……しかも片方はもう片方に好意を持ってるんですよ? 何かありそうじゃないですか?」

 

「藤原さん、貴方まさか……」

 

「ちょっとだけ、ちょっとだけドア開けて聞き耳立てるだけですからっ!」

 

「要は覗きじゃない……藤原さん、そういった行いは慎むべきだと……」

 

藤原は僅かに開いたドアの隙間から、室内の様子を窺う……

 

「藤原さん!? 貴方っ……」

 

「シーッ! かぐやさんも、ここまで来たら一連托生ですからね!」

 

「はぁ……仕方ありませんね、何もなければすぐに終わりにするんですよ?」

 

「はーい……」コソコソ

 

「じ、じゃあ……するね?」

 

「「っ!?」」ガバッ

 

「石上の…意外と大き……」

 

「はああぁぁっ!? 何がですか!? 何が大きいんですか!?」

 

「ここからだと、ソファの背凭れが邪魔で見えませんね……」

 

「……ねぇ石上、気持ち良い?」

 

「ち、ちょちょちょっ!? 違いますよね!? そんな事してませんよね!?」

 

「……凄い気持ち良いよ。」

 

「してるっぽーい!?」

 

「藤原さん、してるって何をですか?」

 

「あの体勢的に考えられるのは……」ゴニョゴニョ

 

「手っ!?」

 

「そっか、良かった……」

 

「何も良くないです! 生徒会室でなんて事をしてるんですか!?」

 

「に、逃げた方がいいんじゃ……」

 

「あのー……2人共何してるんですか?」

 

「「ひゃわぁぁぁっ!?」」

 

「え!? ど、どうしたんですか?」

 

「み、ミコちゃん! 驚かせないで下さい!」

 

「えっ、す、すいません……」

 

「藤原さん、ダメよ八つ当たりなんて。」

 

「あ……ゴメンね、ミコちゃん。」

 

「いえ……私が悪いんです。私がいけない子だから……」

 

「……」

(この子、大丈夫かしら……)

 

「ミコちゃん、お願いがあるの! 一緒に生徒会室に突入してくれる!?」

 

「はい、藤原先輩のお願いなら!……でも、どうして突入するんですか?」

 

「説明は後です!行きますよ、ミコちゃん!」

 

「は、はい!」

 

「……」

(藤原さん、伊井野さんを無理矢理巻き込みましたね……)

 

「モラル警察です! 生徒会室でインモラルな事をしている悪い子は此処ですか!?」バンッ

 

「は?」

 

「え?」

 

「」

 

藤原は、自分がやらかした事を察した。

 

………

 

「……つまり、藤原先輩は僕と大仏が生徒会室で変な事をしていると勘違いしたと?」

 

「ハイ……」←正座

 

「藤原先輩……そういう事に興味がある年頃なのはわかりますが、TPOを考えて下さいね。」

 

「うわあああん!! 優しく諭さないでいっそのこと罵倒して下さいよー!!」

 

「……ミコちゃんも、あんまりHな事ばっかり考えちゃダメだよ?」

 

「えぇっ!? こばちゃん、私は違っ……」

 

「ミコちゃん!」

 

「……ハイ。」←正座

 

「……」

(……ホント、藤原さんの言う事を信じると碌な事がないわね。)

 

かぐやは無関係を装った。

 

本日の勝敗、藤原&伊井野の敗北

勘違いの所為で後輩にムッツリ扱いされ、そのムッツリに巻き込み事故を喰らった為。

 

 


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