石上優はやり直す   作:石神

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奉心祭の夜に

〈い、いいいいい石上!? アンタ、どうしてこばちゃんと一緒なのよ!?〉

 

スピーカーから聞こえて来る伊井野の声に、思わず通話終了ボタンをタップしたくなる。

 

「……そういう事だよ。」

 

〈キャーッ!! どっち!? 石上君、どっちから告白したの!?〉

 

「そ、それは……」

 

大友の勢いに思わず後退る。

 

〈石上ー、今言わなくても明日吐く事になるんだからさー、言っちゃいなよ。〉

 

〈そうだ、そうだー!〉

 

追求する小野寺と、その言葉にノリノリで追随する大友……

 

〈い、石上! アンタ、こばちゃんを自分の部屋に連れ込んでナニするつもり!?〉

 

微妙に何のニュアンスが違う伊井野……大仏に救いの目を向けるも逸らされる。

 

「僕からだよ……あと、伊井野は脳内ピンクも大概にしとけ。」

 

〈おー……〉

 

〈おー!〉

 

〈脳内ピンク!?〉

 

伊井野の横から大友が画面を覗き込む。

 

〈ねぇねぇ! 何て言って告白したの?〉

 

「お、大友さん、もういいでしょ?」

 

大友の追求に耐えられなくなった大仏が、自分に画面を向けて喋る。助かった……流石にそれは言いたくない。

 

〈おさちゃん、彼シャツしてるんだねー?……もしかして、お泊り?〉

 

大友の言葉に大仏の肩がピクッと跳ねた。

 

〈いや、大友さん流石にそれはないって……ね、大仏さん?〉

 

「え、えぇとっ……う、うん。」

 

〈……うわぁ、マジか。〉

 

小野寺の全てを察した声が聞こえて来た。

 

〈石上! アンタ、こばちゃんを襲ったりしたら只じゃっむぐっ!?〉

 

〈ハイハイ、伊井野は落ち着きな。〉

 

〈おさちゃん、明日感想聞かせてね!〉

 

「何の感想!?」

 

〈わかってる癖にぃ〜。〉ニマニマ

 

(大友さんが凄い絡んでくる……)

「……もしかして、お酒飲んでる?」

 

〈ないない、奉心祭が終わった開放感と大仏さんの恋バナでテンション上がってるだけ。〉

 

「そう……」

(まぁ、ミコちゃんが居てそれはないか。)

 

〈まー、今日の所はこれくらいでやめておこうか。〉

 

〈えー、もっと話したいよー。〉

 

小野寺の言葉に、大友が駄々を捏ねる。

 

〈でも大友さん、2人はこれからほら……アレだし。〉

 

〈あー……じゃあ仕方ないね。〉

 

「大友さんは何を察したの!?」

 

「小野寺! 変な気の利かせ方すんな!」

 

〈じゃー頑張ってねー。〉

 

〈頑張れー!〉

 

〈むぐぅー!!〉

 

言いたい事だけ言って小野寺は通話を切った。

 

「……あはは、バレちゃったね。」

 

「まぁ、遅かれ早かれバレてただろうな……それに、隠す事でもないし。」

 

「うん、そうだね。」

 

「2人共ー、ご飯出来たわよ。」

 

階下から聞こえて来た母さんの声に、大仏と顔を見合わせ下へと降りた。

 


 

〈四宮邸〉

 

「……はっ、初キスで舌をっ!? かぐや様! なんて事をしてるんですか!?」

 

「感極まっちゃって思わず……でも、眞妃さんもしてるって言ってたし……」

 

「眞妃様は付き合って半年以上経ってるからですよ! 初キスでディープキスをブチかます様なかぐや様と一緒にしないであげて下さい!」

 

「早坂! ディープキスなんてエッチな言い方じゃなくて、おさしみって言って!」

 

「なんですか、おさしみって!……っていうか、そっちの方が淫らに聞こえますよ!?」

 

「はぁ……」

(駄目ね、キスもした事ないお子様な早坂に話すだけ無駄だったかしら……)

 

「いま滅茶苦茶ムカつく事考えてますよね? 一旦叩いて目を覚ましてあげましょうか?……では、かぐや様がやらかしたか、やらかしてないか、あの子に聞いてみましょう。」

 

「あの子……?」

 

かぐやが身悶える事になるまで、あと10分……

 


 

夕食後、両親に大仏との事を根掘り葉掘り聞かれ余計に疲れた……部屋に上がりスマホで時間を確認する。時刻は11時過ぎ……普段ならまだまだ起きていられる時間だが、今日は色々あって疲労感が凄い。大仏も疲れているだろうと、母さんに諭され客間に案内された……まぁ、恋人が同じ部屋で寝るっていうのは、親の立場的に問題があるのだろう。もう少し一緒に居たかったけど仕方ない……と自分を納得させ、ベッドで横になるとスマホが着信音を響かせた。

 

………

 

「……あ、会計君? 今ちょっと良ーい?」

 

〈早坂先輩? どうしたんですか?〉

 

「ちょっとね……実は会計君に聞きたい事があってさー。」

 

(あの子って石上君の事だったのね、早坂……いつの間に石上君の連絡先を知ったのかしら?)

 

「会計君はさー、初キスでディープキスする女子をどう思う?」

 

〈初キスでって……ははは、そんな女子いる訳ないじゃないですか。〉

 

「うん、私もそう思ってたー……じゃなくて、思ってるけどさー……例えばでいいからどう思うか教えてー?」

 

〈まぁ、ド淫乱ですよね。実際そんな事されたら、かなり欲求不満なんだな……とか思っちゃいますよね。〉

 

「」

 

「だよねー……ありがと、それだけ聞きたかったんだー。じゃあ、またねー。」

 

〈あ、はい……また。〉ピッ

 

「……どうですか、かぐや様? 自分が何をやらかしたのか、少しは自覚して頂けましたか?」

 

「は、早坂……私、明日からどんな顔して会長に会えば……」

 

「まぁ、ド淫乱の欲求不満女と思われてる事は覚悟しておくべきかと……」

 

「」

 

本日の勝敗、かぐやの敗北

結果的にやらかしてしまい、更にそれを自覚してしまった為。

 


 

〈伊井野邸〉

 

深夜……

 

「不純異性交遊はんたーい!」くわっ!

 

「はんたーい!」

 

「不純異性交遊は取り締まりたいしょー!!」くわっ!

 

「たいしょー!!」

 

伊井野が叫び、それに大友さんが合いの手を入れる光景を私は眺める……2日に渡って開催された奉心祭による疲労、開放感、大仏さんと石上の恋人報告……更に深夜テンションが合わさり、最早私には制御出来ない状況になっていた。

 

「私が生徒会長になったら、厳しく取り締まります!」キリッ

 

「いいぞ、いいぞー!」

 

「……大友さんは、厳しく取り締まられたら困るんじゃないの? いつも彼氏欲しいって言ってるのに……」

 

「私に彼氏が居ないんだから、他の人もつくるなー!」

 

「つくるなー!」くわっ!

 

大友さんの発言に、今度は伊井野が合いの手を入れる。

 

「えぇ……」

(ふ、普通にタチが悪い……死なば諸共みたいな事言ってるし……)

 

「我等独り身3人娘! 生まれた場所は違うけど……なんちゃらかんちゃらー!」

 

「らー!」くわっ!

 

(コレ、私が収拾つけなきゃいけないの? しかも、独り身3人娘って私もカウントされてるし……でも、伊井野もこんなバカ騒ぎにノるなんて、意外っちゃー意外……)

 

床についた手にカサッと何かの包み紙が触れた。私はその包み紙を拾い上げると、書かれた文字に目を通した。

 

〈whisky bonbon〉

 

「あー、ウイスキーボンボン……原因はコレかなぁ。」

 

「おのちゃん! 私達はいつまでも一緒だよ! 抜け駆けはナシだよ!」

 

「アハハ……」

(そういう事言う子に限って、1番最初に抜け駆けしたりするんだよね……)

 

「麗ちゃんも、私と一緒に不純異性交遊取り締まろうね! 一生!」

 

「いや、流石に一生はちょっと……」

 

「麗ちゃーん!」ギュッ

 

「おのちゃーん!」ダキッ

 

「あーもー、2人共もう寝なさい!」

 

&小野寺の敗北

この後、このテンションの2人の相手を2時間務めた為。

 


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