石上優はやり直す   作:石神

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感想ありがとうございます(`・∀・´)


石上優は伝えたい

 

〈中庭〉

 

「そっか、上手くいったみたいで良かったよ。」

 

「翼先輩には相談に乗ってもらって……ありがとうございました。」

 

「全然いいよ。僕だって相談に乗ってもらってたし、こういうのはお互い様だからね。」

 

翼先輩にこばちと恋人となった事を報告する。翼先輩も気にしてくれていた様で、笑って祝福してくれた。

 

「会長には、もう報告したの?」

 

「いや、それが……」

 

翼先輩の言葉に思わず言い淀む。僕は今日の会長の姿を思い出す……

 

………

 

「羊が87匹、羊が88匹、羊が89匹……」

 

「……」

 

「ひ、棺が一基、棺が二基……」

 

「棺!?」ビクッ

 

………

 

「……ちょっと忙しそうなので、落ち着いたら伝えます。」

 

「そっか、まぁ生徒会長だもんね。」

 

「……そうですね。」

(四宮先輩が髪を下ろしてるのと関係してると思うんだけど……前回はいつの間にか元に戻ってたからなぁ。)

 

「マキちゃんには伝えた? 心配してたよ。」

 

「この後に伝えに行こうかと思ってます。」

 

「そっか、じゃあ早く教えてあげて。マキちゃんも早く知りたい筈だよ。」

 

「そうっすね、行ってきます。」

 

「マキちゃんは生徒会室に行くって言ってたよ。」

 

翼先輩の言葉に僕は手を振って感謝の意を示し、生徒会室へと向かった。

 


 

〈生徒会室〉

 

「違うって言ってるでしょ!」

 

「何が違うのよ! 」

 

生徒会室に入ると、マキ先輩と四宮先輩が言い争いをしていた。

 

「ちょっ!? 2人共どうしたんですか!?」

 

「石上君……」

 

「優……翼君と一緒じゃなかったの?」

 

「翼先輩にマキ先輩は此処だって聞きまして。」

 

「あら、私に何か用?」

 

「……内密な話なら私は席を外しますが?」

 

「いえ、四宮先輩にも聞いて欲しいんです。」

 

………

 

「へぇ、大仏さんとね……おめでとう、石上君。祝福するわ。」

 

「良かったわね。大仏って、あのTVに出てた眼鏡の子でしょ? 眼鏡外したらかなり印象変わって見えるわよね。」

 

「ありがとうございます。今、その件で色々考えてまして……」

 

「……石上君さえ良かったら、話してくれますか?」

 

「そうね、何か問題があるんでしょ?」

 

「はい、実は大仏がTVに出ていたのは……」

 

「待ちなさい。」

 

話し始めてすぐに、四宮先輩に止められる。

 

「はい?」

 

「先ず、問題背景を知る為に……付き合う事になった時の事を詳しく話すべきだと思うわ。」ソワソワ

 

「た、確かにおば様の言う通りね……優、詳しく話して!」ソワソワ

 

「えぇ……女子ってホント恋バナ好きですよね。」

 

………

 

四宮先輩とマキ先輩が固唾を飲んで僕の話に聴き入っている。途中、こばちと桜の木の下でした遣り取りも細かく説明させられた。流石に恥ずかしいからと濁して言おうとしたら、滅茶苦茶怒られたし清々しい程全部吐かされた……もう胃液も出ない。

 

告白の微に入り細を穿つ説明が終わり、僕の計画を2人の先輩に伝えた。

 

「へぇ? 石上君にしては……という遣り方ね。」

 

「……ダメ、でしょうか?」

 

「私は嫌いじゃないわよ。初手の子供っぽさと未成年である事を利用した狡賢さ、そして前準備は完了済み……強いて言えば、その父親に対する罰が軽過ぎるくらいかしら。」

 

「そうですかね……マキ先輩はどう思います?」

 

「私もおば様と同意見よ。だけど、1つだけ……彼女には伝えてるの?」

 

「それは……」

 

「ま、優の言いたくない気持ちもわかるけどね……」

 

「今回の件で、大仏は十分辛い思いをしました。これ以上余計な罪悪感とか感じて欲しくないですし、縛り付ける様な真似はしたくありません。」

 

「……でも、石上君が待っててくれて、彼女は心の底から嬉しかった筈よ。」

 

「……」

 

「無意識に、心の奥底で望んでいた……彼女が1番求めている行動を……石上君、貴方は取ったのよ。」

 

だったら俺が見せてやる。

 

かぐやの脳裏には、かつて夏祭りで自分を探し出してくれた男の姿が去来する。

 

(まるで会長みたい……そう思った事が間違いじゃないと言える程、貴方は優しい子ね……)

「確かに……石上君のしようとしている事の一部は、大仏さんが気に病んでしまう内容かもしれない……でも彼女からしたら、石上君が1人で抱え込む事を良しとするかしら?」

 

「それは……」

 

「逆の立場なら……優はどう思う?……コレはそういう話よ。」

 

四宮先輩とマキ先輩の言葉に僕は……

 

「まぁ……石上君がやろうとしている事自体は、別に問題ないと思うわ。」

 

「そうね、おさしみやらかすおば様より全然マシだと思うわ。」

 

「だから、それは違うと言ってるでしょう! アレはもう1人の私が勝手にした事でっ……!」

 

(……遊○王?)

「まぁまぁ、2人共落ち着いて下さい……というか、おさしみって何ですか?」

 

「「んなっ!? このハレンチ!!」」

 

「えぇっ!?」

 


 

こばちの問題を解決するには、幾つかの条件がある。

 

1つ、秀知院学園の残り2年分の学費(約400万)の工面。

 

コレは前回の僕なら到底無理だったけど、今回はなんとか出来る。

 

2つ、こばちの母親の収入源の確保。

 

例えこの件が解決しても、こばちが大学進学する場合は進学先の選択肢が狭まってしまうので心配していたが……

 

3つ、こばちが芸能事務所と契約をしているかどうか……

 

コレが最も重要な案件だったが、こばちに確認すると書類等に一切のサインはしていないと言う。全くの無契約な少女をTV局が出演させるとは思えない。いざという時の為、書類上の責任者がいる筈だ。そして……こばちがTV局で聞いた父親の発言から、当面の責任者は間違いなく父親だ。まぁ、大した問題を起こす訳じゃないからそこまで凄い賠償額にはならないだろうけど……

 

「なぁ、こばち……」

 

隣を歩く少女に話し掛ける。

 

「うん? なぁに、優?」

 

「明日、僕は……」

 

いよいよ、明日は……クリスマスイブだ。……恋人同士が寄り添う日、そして……大仏こばちの問題を解決する日だ。

 


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