石上優はやり直す   作:石神

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石上優は出会えない

石上は木陰で出会った1学年先輩である龍珠桃と、暫しのハンティングに興じていた。

 

「こんな遣り方があったとは知らなかったわ、お前すげぇな。」

 

「いやいや、僕なんて全然ですよ〜。」

 

嘘である。この男、逆行前のゲーム三昧した記憶を利用し、新発売のゲームが出る度に掲示板へボス情報や隠し要素を書き込み……

 

「攻略遅すぎ。く、さ、は、え、る……っと。」

 

とマウントを取っている! 勉学に励み部活に精を出し、周りから尊敬の目で見られ始めていても石上優の本質は変わらない。陰キャ(ダークサイド)なのである!

 

そう……ネット上では、マウントを取られたほうが負けなのである!!

 

「そういえばお前、高等部に何しに来たんだ?」

 

「あ……」

 

石上ここにきて自身の目的を思い出す。ゲームの話が盛り上がり、石上のゲーオタ魂に火がついた結果である。

 

「そうだった、僕はこの書類を生徒会に提出しに来たんでした。」

 

「書類? ふーん……」

 

パシッと石上の手から書類を掠め取ると、龍珠は視線を落とす。

 

「……お前風紀委員?」

 

「いえ、代理で来ただけです。」

 

「じゃあいいや、案内してやるからついて来いよ。」

 

「いいんですか? ありがとうございます。」

 

歩き出した龍珠の後を追い石上も歩き出す。

 

「……」ソワソワ

(1年の頃の会長か、なんか変な感じだなぁ。間違えて会長呼びしないように気をつけないと。)

 

気持ちが逸るのを抑えながら石上は、校舎内を懐かしみながら歩いて行く。

 

「ここが生徒会室だ。」ガチャッ

 

「し、失礼します。」

 

「まぁ折角来たんだ、茶くらい淹れてやるよ。」

 

「龍珠先輩、あの……勝手にやっていいんですか?」

 

「は? ……あぁ、そういえば言ってなかったな。私、生徒会の会計だから。」

 

「え……」

 

ここで石上に生徒会参入当初の記憶が蘇る。

 

………

 

「今日から君も生徒会の一員だ、よろしく頼む。」

 

「僕で役に立てるのなら……」

 

「うむ、ならばコレを渡しておこう。」

 

石上は白銀から〈石上優〉と表示されたプレートを受け取る。

 

「コレは……」

 

「役職に就く者はそのプレートを彼処の壁に掛けるんだ。石上は会計の欄に掛けておいてくれ。」

 

「はい、あの……コレは?」

 

「あぁそれは、前任者のモノだな。外し忘れたんだろう……アイツは不精な所があるからな。」

 

「前任者……」

(龍珠桃……女子生徒か。)

 

「それは俺が預かっておこう……では、先ずは簡単な書類整理から始めようか。」

 

………

 

「……」

(あー……どっかで見聞きしたような気がしたのはコレか。)

 

「ほらよ。」コトッ

 

過去を思い出した石上の目の前に、お茶で満たされたコップが置かれた。

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「あぁ、しかし誰もいやがらねぇ。」

 

「あの、他の人は?」

 

「さぁな、何処で道草食ってんだか……」

 

「……」

(いや、貴女は道草どころかゲームしてましたけどね……)

 

「あ? なんだよ?」

 

「……なんでもないっす。」

 

「チッ……まったく、何処に……」

 

突如スマホの着信音が生徒会室に鳴り響いた。

 

「はい……は? 今生徒会室だけど……はぁ? マジかよ面倒くせぇ……チッ、わかったよ。」

 

龍珠はスマホを耳から離すと……

 

「悪い石上……急用が出来た。書類は机の上に置いといてくれ。」

 

「急用ですか……」

 

「あぁ、他の生徒会の奴もそっちに集まってるらしくてな。ったく、面倒くせぇ。」

 

「じゃあ僕はコレで……」

 

「あぁ、じゃあな。」

 

「はい。龍珠先輩、ありがとうございました。」

 

石上はそれだけ言うと生徒会を出て行った。

 

「はぁ、もうちょいゲームしてたかったな……」

 

石上が出て行くのを目で追いながら、龍珠は無意識に呟いた。

 


 

その後、生徒会室……

 

「……いきなり呼び出してすまなかったね、龍珠会計。」

 

「ホントだよ会長、私も忙しいんだけど?」

 

「……その手に持っているゲーム機は何かな?」

 

「ふんっ……」

 

「おや? そのコップ……誰か来てたのかい?」

 

「中等部の奴が書類を届けに来てたんだよ。」

 

「え……龍珠が対応したのか?」

 

「なんだよ白銀……なんか文句でもあんのか?」

 

「いや、文句とかじゃなくて……」

 

「ふふ、白銀庶務は驚いてるんだよ。だって会長である僕にも敬語を使わないような君が、態々お茶を出して来客をもてなすなんて事をしたんだからね。そもそもの話……龍珠会計が僕達にお茶を出した事があったかな?」

 

「ふん、なんで私がアンタらに茶を出さなきゃいけないんだよ。」

 

「ヤレヤレ、君が態々お茶を出した人物にも興味があるけど……書類が溜まってるし、先ずはコレを片付けよう。」

 

「はい。」

 

「チッ、面倒くせぇ……」

 

 

 

 


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