石上優はやり直す   作:石神

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感想ありがとうございます(`・∀・´)
if√は集計後、12月に投稿開始します。
デブリボン……一体、何原ちゃんなんだ……


仏の小鉢after②

 

〈藤原千花は愛されたい〉

 

「皆さんの私に対する態度が最近、本当に酷い。」

 

藤原のこの発言を発端に、突如開始される事となった〈愛してるゲーム〉……面と向かい合い「愛してる」と発言、それに対して照れたら負けというシンプルなゲームである。

 

「とりあえず、ミコちゃんとやってみますね。ミコちゃん、こっち来て。」

 

「は、はい。」

 

「ミコちゃん……愛してる。」

 

「っ!?」

 

「こんな感じで、照れたり狼狽したら負けです……皆さん、散々私を馬鹿にしてるんですから、まさか照れたりなんて……しませんよねぇ?」

 

「する訳ないでしょう? なんだったら、ハンデ有りでも良いですよ?」

 

「……」

(愛してるゲームでハンデって何だ?)

 

白銀は困惑した。

 

「そんな事言って、後悔しますよ!?」

 

「僕言われる側だけで良いですか? こばち以外には愛してるなんて言いたくないので。」

 

「ゆ、優!?」

 

最近の石上は、ブレーキが壊れていた。

 

「くっ、なんか見せ付けられてる気分です……精々彼女の前で照れない様に気をつけるんですね!! ミコちゃん、スタートの合図を!」

 

「は、はい! では、スタートです!」

 

「……この1年間、石上くんとは色々やり合って来ましたね。今まで私と対等な態度で接してくれる男子って会長くらいしか居なかったので、石上くんとワーワーやってる時が実は1番楽しかったりしたんですよ?……えへへ、石上くん好きだよ。」

 

「……ッ」ギリッ

 

秘技、舌噛み! 前回の人生において、石上優は藤原千花相手にこのゲームで照れてしまい、あっさりと敗北を喫した! その際藤原に、アホ程マウントを取られた事を石上は未だに根に持っていたのである!! 照れない為、耐える為に舌を噛み、拳を強く握り、態と伸ばした爪を掌に食い込ませた痛みで藤原の発言に死ぬ気で耐える。男としてのプライド、恋人の前で無様な姿は晒せない……と言えば聞こえは良いが、只々藤原にマウントを取られた事が悔しかっただけである。

 

「……もういいですか?」

 

「うあーっ! なんでぇっ!? 普通の男子なら瞬殺なんですよ!?」

 

「何度でも言いますが、藤原先輩は僕の趣味趣向にはガチのマジでそぐわないからです。」

 

「何度も言わないで下さい! 次です、次!! 会長ですよ!!」

 

「お、俺か!?」

 

会長と藤原先輩のやり取りを尻目に、こばちと向き合う。

 

「優、よく照れなかったね。」

 

「……そりゃそうだろ。こばちに言われるならまだしも……」

 

「ゆ、優……愛してる。」

 

「……僕も愛してるよ、こばち。」

 

こばちを抱き寄せ、耳元で囁くと耳まで真っ赤になったこばちが此方を睨む。

 

「も、もう! 私ばっかりドキドキさせられてる気がする…… 」

 

「……少しはカッコ付けさせてくれよ。」

 

「優はずっと……あの時から、カッコイイままだよ。」

 

僕は大仏の事、ちゃんと見てたよ。

 

そう言って私を助けてくれた……あの時から。

 

「……」

(羨ましい、堂々とイチャイチャして……あとで、仕事を理由に会長と残ってギュッてしてもらいましょう。)

 

「……なんで、会長は泣いてるんですか!? どんな感情が渦巻いてるんですか!?」

 

「……」ニマニマ

(ふふ、流石は会長ね……やはり殿方とは斯くあるべきだわ。)

 

「……って石上くん! 何を堂々とイチャついてるんですか!? 離れて下さい!!」

 

「独り身の嫉妬は見苦しいですよ。」

 

「言い方ぁ!!」

 

本日の勝敗、藤原の敗北

生徒会男子を照れさせる事が出来なかった為。

 

「……ッ」ハッハッハッ

(び、びっくりしたぁ……石上とこばちゃん、き、キスするかと思った……)

 

&伊井野の敗北

 


 

〈石上優は結びたい〉

 

「……会長、コレは?」

 

僕は机の上に置かれた箱を指差して尋ねた。

 

「あぁ、校長からの差し入れだ。」

 

「わーっ! サクランボのゼリーだ! 早速食べましょう! はい、ミコちゃん。」

 

「わーい!」

 

順番にゼリーを渡す藤原先輩を見ながら思った……来たなと。

 

前回の人生で起こった石上優チェリーボーイ事件! サクランボの茎を舌で結べるかを競った勝負に於いて、石上は藤原に敗北! 前回の人生で苦汁を舐めさせられた愛してるゲーム同様、アホ程マウントを取られたのである。そして、石上は当然ながらそれも根に持っていた! 故に、この時の為だけに茎結びの練習を滅茶苦茶して来ていたのである!

 

「皆さん、サクランボの茎を口の中で結べます?」

 

藤原先輩の発言を皮切りに、皆がサクランボの茎を口の中へと放り込んだ。四宮先輩は、今回も秒でクリアしていた。流石に四宮先輩みたいに、口の中で結んで解けるテクニシャンには勝てないけど……そうこうしている内に、手応え……いや、舌応えを感じて舌を出した。

 

「あ、出来ました。」

 

石上は舌を出し、クリアした事をアピールするが……

 

「……」

 

シンと生徒会室は静まり返っていた。

 

「え? 何ですか、この空気?」

 

石上は気付いていない。前回の茎結び勝負に参加した人間の中には、表向きは付き合っている人間がその場に居なかった。白銀御行と四宮かぐやは今回も当然恋人同士ではあるが、表向きは付き合っていないし、かぐやは茎結びを出来なかったと装っている……石上優と大仏こばちの2人だけが周囲に認知されているカップルなのである。つまり……

 

「い、石上……アンタ……」プルプルッ

 

「えっ、何?」

 

「そ、その舌遣いで、こばちゃんの口の中を陵辱しまくってるのね!?」

 

「はあああっ!?」

 

この様な誤解が生まれるのも必然であった。

 

「こ、口腔陵辱罪で取り締まるわよ!! 」

 

「嫌な言い方すんじゃねぇよ! なんだよ、口腔陵辱罪って!?」

 

「アンタがこばちゃんに普段からしてる事よ!!」

 

「誤解だって! こばちも何とか言ってっ……」

 

「ぁ……」

 

大仏こばちとて、乙女である。彼氏である石上優が、茎が結べればキスが上手いと言われる茎結びを1分と経たずにクリアした事実を目の当たりにし、平静を失っていた。

 

「こばち、今その反応は誤解されるヤツだから……」

 

「ご、ごめん……!」

 

「い、石上……やっぱり!?」

 

「だから違うって……」

 

「あ、出来ましたー……じゃ、皆さんお仕事に戻りましょうか。」

 

話を終わらせ様とする藤原先輩の発言に反発する。

 

「ちょっと待って下さい! 誤解が解けてから次に行って下さいよ!?」

 

「さ、流石は石上だ……だが、校内では慎みを持つようにな。」

 

「会長!?」

 

「テクニックも大事だけど、1番大事なのはタイミングよ?」

 

「四宮先輩!?」

(一番のテクニシャンがそれ言います!?)

 

「ゆ、優……私もその、上手に出来る様に頑張るから……」

 

「……っ!?」

 

「……石上、今はやめとけよ。」

 

「……大丈夫です、耐えました。」

 

「うん? 優、どうしたの?」

 

「……なんでもないよ。」

(あんな事言うなんて、我慢する男の事も考えてくれよ……)

 

本日の勝敗、石上の敗北

彼女の発言がクリーンヒットした為。

 


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