石上優はやり直す   作:石神

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アンケートの結果

年上の眼光鋭き、極道少女 (444)
同級生のむっつりスケベ風紀委員 (263)
デブリボン (100)
その他 (34)

となりましたので、龍珠桃編開始します。
アンケートにお答えして頂きありがとうございました。(_ _).


√B.龍と黒白の珠編
龍珠ルート突入


この√は、60話のハッピーライフゲームで、大仏こばちではなく龍珠桃を選択した世界線となります。故に、大仏こばち√で起こった大仏父イベントは無く、学費問題に寄る大仏こばちの芸能界入りもありませんし、大仏こばちは生徒会にも入りません。

その他のイベントは、同じ様に起こっていると思って下さい。(眞妃ちゃん関連など)

その設定を許容出来るなら、お読み下さい。(_ _).

 


 

夏休みも終わり、未だ残暑を感じ続ける9月のある日……四宮かぐやは、藤原千花、その妹萌葉、その友人白銀圭と4人でウインドウショッピングに出掛けていた。秋物の服を買い揃え、次の店へと移動していると……

 

「……」

(あら? この喫茶店は……)

 

かぐやは、ある喫茶店の前で暫し立ち止まる。その喫茶店は夏休み、想い人である白銀御行と共に数回利用した喫茶店だった。夏休みの始めこそ白銀と会う機会の無かったかぐやだが、8月に入って直ぐに白銀から喫茶店へと誘われ、それ以降は週一で喫茶店デートを楽しむ事が出来たのである。

 

(それも……石上君が気を利かせて無料券を融通してくれたからね。本当に、可愛い後輩だわ。)

 

かぐやはなんとなしに店内を見渡すと、見知った顔を窓側の席に見つけた。

 

「……!」

(あら、石上君……偶然ね。)

 

「かぐやさん、どうしたんですかー?」

 

「いえ、其処の喫茶店に石上君が……」

 

「石上くん?……休みの日に1人で喫茶店なんて、寂しい子ですね〜。」

 

ぷひゅひゅと笑いを零す藤原をかぐやはジトッとした目で見つめる。

 

(……態々休みの日に、面倒な思いをさせる必要もないわよね。)

「藤原さん……幾ら同じ生徒会とはいえ、プライベートに不必要な干渉は避けるべきよ?」

 

「えー? 折角1人喫茶店っていう、寂しい事をしてる石上くんをイジるチャンスなのにぃ……」

 

「(休日まで藤原さんの相手をさせられる石上君が)可哀想だから、やめてあげなさい。」

 

「そうですね!(1人喫茶店してる所を女子に見られるなんて)可哀想ですしね!」

 

かぐやと藤原は噛み合っていなかった。

 

「……姉様〜? どうしたの?」

 

「四宮さん? どうかしたんですか?」

 

喫茶店の前で立ち止まって、会話を続ける2人を訝しんだ萌葉と圭が近付く。

 

「あー、石上先輩だ。」

 

「あ、ホント……1人なのかな?」

 

「寂しい人ですよね〜。」ニマニマ

 

「あれ? でも千花姉、向かいの席に誰か座ったよ?」

 

「え!?」

 

「あら……」

 

外から眺めていると、石上の向かいの席には帽子を被った少女が座った。

 

(龍珠さんと来てたのね。)

 

「龍珠さんと来てたんですねー。むふ、デートの邪魔しちゃ悪いから行きましょうか!」ニマ

 

「そうね……」

(週明けにイジる気満々ね……)

 

藤原はニマニマとイヤラシイ笑みを浮かべ、窓越しに2人を見ていると……

 

「……ッ!」ギラッ

 

「ぴいっ!?」ビクッ

 

「どうしたの、姉様?」

 

「千花姉?」

 

「……藤原さん?」

 

「い、行きましょうか!……ね!?」

 

「え、千花姉どうしたの?」

 

「い、いいからっ……ほら、急いで!」

 

「え、えぇー!?」

 

………

 

「ん? 桃先輩、どうしたんですか?」

 

「……なんでもねぇよ。」

 

「?」

 


 

〈9月9日、白銀御行誕生日当日〉

 

「会長、誕生日おめでとうございます。コレ、誕生日プレゼントです。」

 

「え? い、いいのか?」

 

「はい、会長の為に買った物なので。」

 

「そうか、ありがとう……開けてもいいか?」

 

会長の言葉に勿論です、と答える。

 

「……おぉ! 万年筆か、有難い。大切に使わせてもらうよ。」

 

「喜んでもらって何よりです。」ガチャッ

 

「こんにちはー!」

 

「こんにちは」

 

「おう、じゃあ仕事を始めるか。」

 

暫し、生徒会室にはパソコンのタイピング音とペンを走らせる音が充満する。

 

(誕生日……か、そういえば……)

 

僕はパソコンに保存したファイルを開き、目当ての項目を確認して行った。

 

………

 

「今日はこれくらいにしよう。皆お疲れ。」

 

「お疲れ様でしたー! それじゃ、また明日ー。」

 

「お疲れ様です。僕も今日はコレで……」

 

「おう、また明日。」

 

「また明日ね」ポヤポヤ

 

「はい、また明日……」

(なんか、今日の四宮先輩はポヤポヤしてたな……)

 

僕は、生徒会室に2人を残して出て行った。

 

………

 

〈石上家〉

 

その日の夜、そろそろ寝ようとベッドに入ろうとした時だ……そういえばと思い立ち、僕はスマホで藤原先輩へとメッセージを送った。

 

………

 

〈藤原家〉

 

「あれ、石上くんからメッセージ来てる……珍し〜、なんだろ?」

 

藤原はスマホを操作して、メッセージ画面を開いた。すると……

 

〈知ってました? 今日って会長の誕生日なんですよ?〉

 

「」

 

藤原はやらかした。

 


 

ーある少女の独白ー

 

私が2年生に進学し、後輩になる新1年生が入学して2ヶ月が経った頃……1人中庭で過ごす女の子を見つけた。なんとなく気になって、友達や部活の先輩や後輩から話を聞くと、その女の子が誰かわかった。広域暴力団龍珠組の愛娘、龍珠桃……そういえば、同じクラスの会長君がやっと口説き落とせたと、友達に零していたのを聞いた事がある。去年、1年生にして生徒会長に就任した傑物と言われている彼がそこまでする程の少女……なのに、彼女はいつ見ても1人だった。ある時は木陰で、またある時は中庭のベンチで……いつも1人の彼女を見て、次は話し掛けようと密かに決めていた。

 

人生というフィルターを通して見た場合、高校生活の3年間はとても短いモノだと思う……でも、いつか学生時代を振り返る時が来た時、この高校生活はとても大きな割合を占める。その時に嫌な気持ちや苦々しい気持ちを抱き、無意味な高校生活だったと思ってしまう人を少しでも無くしたい……そういう気持ちで、私は龍珠桃という少女を探していた。

 

……7月に入って直ぐの頃、中庭の木陰でゲームに勤しむ彼女を見つけた。近付いて話し掛けようとすると、彼女は木の裏側に身体を向けて何やら喋り出した。誰かいるのかな? と様子を窺っていると、木の裏側から中等部の制服に身を包んだ男の子が出て来た。2人は少しの会話の後、座り直しゲームを始めた。そこで初めて私は、笑った彼女を見て……もう龍珠ちゃんは1人じゃないんだと思った。

 

偶々、偶然、偶発的、思い掛けず……このタイミングで彼女と知り合った事は、あの男の子からしたらそういった言葉で片付けられる事だろうし、それは龍珠ちゃんも同じだと思う……只、それを見ていた私だけはこう思った。

 

この出会いは……運命かもしれないと。

 

 

 

 


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