大図書館と生徒会(仮)   作:天神神楽

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ここは完全にオリジナルです。
というより、前回の続き。
次回からは本筋に戻ります。


第4話

「お疲れ様でした!」

無事に収録が終わり、みな順々に解散していく。

「お疲れ様でした。輝夜さんも来てくれてありがとうございました!」

主役として、見事に演技しきった琴音ちゃんが挨拶をしに来てくれた。流石に疲れた様子だが、休憩時同様やりきったようで満足そうだ。

「お疲れ様琴音ちゃん。どう? このあとお食事でも。母さんも一緒だから来にくいかもしれないけど」

関係者、しかも社長と一緒なのは普通はまあ来にくいだろう。だが、琴音ちゃんはいいえといって首をふる。

「社長、いえ珊瑚さんは私のお母さんのような人です! ですから是非ご一緒させてください」

「あら、嬉しいことをいってくれるわね琴音。水結あなたも来れる? あなたも私の可愛い娘だしね」

「はい! お供します、珊瑚さん、輝夜さん」

娘といわれて嬉しそうな芹沢さん。俺としても可愛い後輩と一緒に食事の方が楽しい。

「お店の予約は取ってあるわ。今日は琴音の好きなイタリアンよ。高級店ではないけど、堅苦しいのは面倒だしね。でも、私の行きつけだから味は保証するわ」

「わっ、楽しみです!」

「珊瑚さんの行きつけのお店なんて楽しみです」

二人は随分と喜んでくれているようで何より。母さんは美食家としても有名なので、そんな母さんの行きつけとあれば期待しないわけにはいかないだろう。

「お車の用意はできています。私は車の方でお待ちしております」

「じゃあ、俺も月さんと一緒にいるよ。二人もゆっくり来てくれていいからな」

「私も監督と少し話をしてからいくわ。そんなに長くならないから安心して」

とりあえず、月さんと一緒に裂きに車に乗り込んで三人を待つ。最近は学校を優先させてもらっているので、月さんとは電話やメールでしかやりとりしていなかったので、二人っきりで話すのは久しぶりだ。

「お疲れ様月さん。仕事は最近忙しい?」

「継続したものはありますが、多くは順調です。私としては輝夜様と一緒にお仕事をしたいのですけれど」

クスクス笑いながら言ってくる月さんはとても魅力的。外ではこのように笑うことはないので、これを見られるのは少し自慢だ。

「夏休みに入ったらヘイゼルリンクに行くし、それまでは月さんに任せることになっちゃうけど、よろしくね」

「はい。今回は文化交流が主ですから、お互いの摺り合わせなので、幾分仕事が楽です。シャルロット妃殿下が多くの提案をしてきてくださるので、それを選別するのは少し大変ですけど」

どうやら、同い年の王女様は多くの案を出してくれているらしい。

「今度俺もシャルと話したいな。もし向こうの都合がつくようなら調節してもらっていい?」

「はい。お聞きしておきます。詳細が決まりましたら連絡いたします」

「ごめんね余計な手間かけさせちゃって」

「むしろ手間をかけさせてくださいませ。私としてはもう少しお世話させていただきたいのですが」

笑みを浮べながら言われるので、なかなか返答しにくい。それが魅力的なのだからたまらない。

「あら、二人で密談? 相変わらず仲が良いわね」

「輝夜さんと月さん、仲がよろしいですねぇ~」

「これは新聞部に良いネタができたかな?」

そこに三人そろってやってきて、ヒョイとのぞき込んできた。三人とも意地の悪い笑みを浮べている。先程の月さんの笑みとは天地の差だ。魅力的なのは認めるが。

「はいはい、冗談はそこまで。じゃあ、行こうか。月さん」

「はい。では皆様お乗りください」

にやつく三人をさっさと車に乗せると、月さんの運転で目的地に向かう。とはいっても、そんなに遠いところではないので十五分ほどで到着する。

「メディアに出てこないから、あまり知られていないけど、美味しいのよ。あなたたちにはまだ早いけど、ワインセレクトは日本でも随一と思っているわ」

「それは言い過ぎだぜ珊瑚」

そういって出てきたのは苦笑いをした男性。店長である宮川遠矢。通称マスター。

「あら、言い過ぎではないと思うけれど。まあ良いわ、今日は可愛いレディも一緒だから、気合いを入れて作ってね」

「っと、失礼。おぉ、今日は輝夜も一緒か。ほれ、入れ」

中に案内され、料理を待っている間、話題は先程の収録のことになる。

「琴音も水結も、さっきのアフレコよかったわよ」

「ありがとうございます。初日だったから緊張しましたけど、イメージ通りできました」

「私も、イメージ通りでした。姫に素直に感情を入れられたと思います。輝夜さんはどう思います?」

「さっきも言わせてもらったけど、アフレコとしては最高のできだったと思うよ。感情の込め方、それぞれの呼吸、あとはそうだね、細かい部分だけど、吐息なんかもセクシーだったかな」

この二人はそこの所の表現が上手い。レッスンをつんだプロなのでそういう演技はできる。でも、そのような部分の外の表現が非常に巧い。やはりそれは才能なんだとおもう。

「一話ですからそこまで感情的になる部分はなかったですけど、後半は泣く演技とかも出てきますから、そこが勝負ですね」

「監督さんの指示も勉強になりますよね。それに答える皆さんの演技もすごいですけど」

琴音ちゃんも芹沢さんも演技の勉強に余念がない。

「おまっとさん。今日は大勢いるから大皿でだな。どうやら初日の打ち上げみたいだし、色々作ってみた」

パスタやラザニア、ピザにサラダなど、次々料理が運ばれてくる。これには話を中断し、料理に集中せざるを得ない。

「わー、美味しそー!」

「相変わらず良い香りね。楽しみだわ」

「ではお取り分けいたします」

これまで後ろに控えていた月さんが本領発揮とばかりに料理を取り分けてくれる。……メイド服が似合いそうな様子だが、普段はスーツを着こなす才女のはずである。

ともかく、綺麗に盛りつけられた料理をいただく。うん、やっぱりマスターの料理は美味しい。

「わ、美味しい」

思わずといった様子で感想を漏らしていた。

「透矢は元マラソン選手でね。オリンピック代表候補にもなるほどだったのよ」

「……ったく、これまた古い話を」

母さんにワインを持ってきたマスターが、苦笑をしながらワインを注ぐ。

「あら、話してあげなさいな。酒の肴にね♪」

注がれたワインを嬉しそうに飲む母さん。俺は聞いたことがあるが、初めてここに来た二人は興味津々である。

二人の純粋な瞳に負けたマスターは、あきらめたようだ。

「といっても、あんまりたいした話じゃねぇよ。怪我をしてな。選手生命が絶たれたんだ」

思っていた以上に重い話に、わくわくしていた二人の表情が固まる。

「そんな顔はするなって。で、夢破れたわけだが、こうして自分の城を持てたってわけだ。ちなみに、そのきっかけがいま珊瑚が飲んでるワインだ」

「ワインですか?」

母さんの飲んでいるワインを見て琴音ちゃんが首をかしげる。

「俺の人生を変えた、いや、新たに歩き出すきっかけを与えてくれた、って感じだな。……って、なんでこんなこと話させたんだよ」

話していた恥ずかしくなったのか、マスターは奥に引っ込んでしまった。

「人生を変えたワイン、かぁ……」

一杯のワインの意味を改めて知ったからか、芹沢さんは母さんが持つワインを見つめる目が変わる。

「そうよ。陳腐な言葉かもしれないけど、実際にそれに触れた人間はとても少ない。それが料理にも現れているのかしら? だから、私はこのお店が大好きなのよ」

そう言ってワインを飲む姿は、我が母ながら美しい。それは二人も同じようにポーッとしていた。

「私はね。あなたたち二人には、このワインのような可能性を見つけたのよ。どうなるかはあなたたち次第だけど、こういう姿もあるって、言いたかったの。ごめんなさいね、説教くさくて」

「いえっ、素晴らしいお話でした」

「このお話、しっかりと考えていきたいと思います」

母さんの言葉を、真摯に受け止める琴音ちゃんと芹沢さん。そんな二人の姿をみて、母さんは本当に嬉しそうにわらったのであった。

 




 芹沢さんの声優sideの話は、完全にオリジナルです。アニメの収録の風景などは、私の想像なので、現実からは乖離しているかと思います。
ちなみに参考にしているのは、「ARIA」の佐藤監督のコメンタリーです。
 「ARIA」シリーズのアニメに対する姿勢は、私が心から尊敬している作品です。
キャストの方々の声の吹き込み方に関しても、演技よりも外にある部分での言葉を引き出そうとする監督のこだわり、どう構成をするかについての考え方、そして、終わらせ方に対するこだわりも、このアニメの素晴らしさにつながったのだと思っています。
 第3期に関しては、原作漫画の完結と同時にアニメも完結させるという、前代未聞の終わらせ方には、当時本当に驚きました。原作を愛してやまない監督と、アニメを愛してやまない天野先生。互いに互いを愛していたからこそ、あのような素晴らしいアニメになったのだと思っています。
 一つの漫画原作アニメの理想型ではないかな、と思い、この話のモデルとして使わせてもらっています。とはいっても、そこまで登場することはありませんが、このSSの裏で、彼らは一つの作品を作っていると思っていただければ、これ以上嬉しいことはありません。
 原作と話を変更して書く二次創作小説ですが、私が書くときに、どのように話を変えていくか、というのは、この「ARIA」の影響を受けています。原作の世界観を変えてはいけないのは当然ですが、そこに新たな要素をいれるには、どこをずらすのか、というのはいつも考えています。そこに賛否両論はあるでしょうが……、
 ぜひ、皆様もネオ・ヴェネツィアに行ってみてはいかがでしょうか。最終回の灯里が泣くシーンの演技は、シリーズ随一です。また、最終巻の座談会も必見ですよ。

 
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