部室で白崎さんたちと合流した後、急いで女の子がラブレターを渡した相手に連絡。その男子生徒は自分がしたことを謝罪し、その勢いで告白をした。それを女の子は受諾し、何ともはちゃめちゃな騒ぎは最良の結果で終結した。
「でも、清涼院くん。一つ連絡入れてくれれば良かったのに」
二人が付き合うことになったことを喜んでいた白崎さんだったが、流石の彼女でも三時間の捜索は骨が折れたようだ。俺のことをジト目で睨んできた。
「はは、ごめんごめん。まさかすれ違っているとは思わなかったからね」
聞いた限りでは、本当に一瞬のすれ違いだったようだ。しかも、俺と女の子が図書館でも奥の目立たない机にいたため、全く気付かなかったらしい。
「でも良かったじゃん。二人をくっつけることが出来てさ」
「む? バカをいうな高峰。私たちが二人を結びつけたのではない。二人が結びついたのは、二人の想いの力が強かったからだ」
乙女ヂカラ炸裂な桜庭さん。流石に恥ずかしくなるフレーズだ。
「桜庭先輩って、意外と乙女なんですね」
「知らなかった? 玉藻ちゃん、可愛いものとか大好きなんだよ?」
こそこそ話す白崎さんと鈴木さん。まぁ、思春期とでもいえばいいのだろう。むっつりと乙女が共存しているみたいだし。
「でも、桜庭さんじゃないけど、白崎さんたちもああいう恋愛とか憧れるんじゃないの?」
「えぇ!? うーん……確かに憧れるけど、私はもっと平凡な恋愛がいいかな? Fドラマみたいのは、ドキドキしすぎておかしくなっちゃうから」
「だってさ、筧」
「なぜ俺にふる」
だって、ねぇ?
「じゃあ、清涼院はどうなんだ? 色々経験してそうだし、会長との関係も気になるんだけど」
周りが「ナイス高峰」といっているような気がした。確かに、そういう噂が聞こえてくるのは確かだが、こうあからさまに見られると居心地が悪い。
「恋愛ね……、特定の人と付き合ったことはないな。仕事柄出会いは多いけど、それが目的ってわけじゃないし」
「そりゃそうか。じゃあ、たまに校門で待ち合わせしてる美人の年上お姉さんは?」
「そりゃ月さん、俺の仕事をサポートしてくれてる人だな。正式にじゃないけど、秘書みたいなことをしてくれてる人だよ。待ってくれてるのは、その後仕事があるから。まぁ、色恋沙汰ではないわな」
俺の答えにあからさまにがっくりしている女性陣。そこまでして恋愛に結びつけたいのか。
「というか、それほど女性に囲まれているのに、付き合うとかないのか? 昨日だって、芹沢と一緒に帰っていたじゃないか」
ここで昨日の出来事を持ち出された。どうやら今日は俺が質問攻めにされるらしい。
「芹沢さんとはお仕事。昨日の収録はウチの会社で手がけてるものだから、挨拶もかねてね。それに、芹沢さんと主役の子は、母さんも期待しているから付き合い長いんだ」
「あのアニメの主役っていうと、四宮琴音だったよな? 清涼院、そんな人気声優とも知り合いなのかよ」
「私も知ってるよ。すっごくかわいくて歌も上手な子だよね?」
「去年、新人賞を取っていたな。そういえば、清涼院グループはアニメにも関わっていたんだったな」
「《More&More》ね。まぁ、そういう繫がりで知り合いが多いってわけ。特に二人とは年齢も近いし、芹沢さんは同じ学校だしね」
色恋につながることではないことがそんなにもつまらないのか、みなこちらのことをジト目で見つめてくる。
「……じゃあ、望月さんとの関係は?」
「今度はそっちか……」
今度は白崎さんからの追求。それにしても、会長、真帆ちゃんとの関係か……。
「会長としての望月さんとは、仲のいい先輩後輩かな」
「じゃあ、幼馴染みとしては?」
ワザとぼかしていったが、少々わざとらしすぎたか。今回はおとなしく観念することにしよう。
「幼馴染みとしての真帆ちゃんは、守ってあげたい女の子かな? ああ見えて寂しがり屋なとこもあるし、それに、彼女はサポートのし甲斐がある。公私ともに最高のパートナーがだれか、と聞かれれば、彼女だね」
これは紛れもない真実。真帆ちゃんはとても愛おしい存在だ。正直彼女との生活がなくなるというのは耐えがたい。
「わわっ、情熱的ですね!?」
「そこまで込みの幼馴染みってことだよ。それ=恋愛とはならないし、もしかしたら芹沢さんと付き合うことになるかもしれないし、はたまた月さんと付き合うことになるかもしれない。ともかく、俺にとって仲が良い女性っていうのはそういう存在。一生を添い遂げる相手となると、また違うかな?」
すこしオーバーな言い方かもしれないけど、仲が良いからといって付き合うわけではない。そんなこといったら筧も俺もハーレム作成の最低野郎だ。
「むー、でも、清涼院くんのことが好きな子がいたらどうするの?」
「そういう子がいたら、もちろん光栄なことだけどね。付き合うか付き合わないかはそのときどう感じたかによるよ」
誠心誠意答えたつもりだが、女性陣には少々不評。恐らく、誰が好きなのかはっきりしろってところだろう。しかし、そう簡単に言ってたまるか。
「まあまあ、それより遅くなっちゃったけど、大丈夫?」
時計を見れば8時5分。話している内に少し時間が過ぎてしまったようだ。
「そうだな、今日は解散にしよう」
「明日からは御園さんの調査の仕事が入ってるから、そのつもりでよろしくね」
そういえば、図書部として依頼を受けていたんだっけ。
さてさて、あの子は随分難しい子だから、一筋縄ではいかないが、白崎さんたちはどうするのだろうか。非常に楽しみである。
Another side 白崎
四月二十三日
私たちは、いま御園さんの寮の前に来ている。お昼に御園さんが体調不良で休んでいると聞いて、いてもたってもいられなかったからだ。
みんなには呆れられちゃったけど、それでも来てくれたことが嬉しい。
「ふふっ」
「ん? どうした白崎? 御園と話せるのがそんなに嬉しいのか?」
思わず声が出てしまい、それを玉藻ちゃんに聞かれてしまった。私は違うの、と首を振る。
「私のわがままに、みんなが協力してくれるのが嬉しくて。つい、顔がほころんじゃった」
私がそう言うと、玉藻ちゃんや佳奈ちゃんが肩を落としていた。な、なんで?
「いや、私が言うのはなんだが……、白崎、それはいくら何でも恥ずかしい」
「私的には世界遺産認定なんですけど、流石に紅くなっちゃいますね」
「うー、みんなのいじわる-。も、もう。早く御園さんの部屋にいこ!」
なんだか私も恥ずかしくなってきたので、ごまかすように御園さんの部屋に向かう。
寮母さんに事の次第を伝え部屋の前までいく。インターホンを鳴らしても応答がない。
「寝てるのかな?」
「そうかもしれないが、倒れている可能性もある」
玉藻ちゃんはそう言ってドアノブをひねるが鍵は閉まっていた。
「ふむ、当然だが鍵は開いていないか」
「警察を呼んだ方がいいですかね?」
玉藻ちゃんや佳奈ちゃんの言うとおり、中で倒れているのならそういうことも必要かもしれない。
「まずは、寮母さんに連絡をしてから……」
「あら、筧君?」
突然かけられた聞き覚えのある声。振り返ってみると、食材がたくさん入った袋を持った望月さんが、不思議そうに私たちのことを見つめていた。