無事完結いたしました、火ノ丸相撲二次創作『蛍火は円(まどか)に舞う』、
いかがでしたでしょうか。
いやぁ『火ノ丸相撲』最高でしたね。まさか現在であんなに熱い漫画が読めるなんて
思ってもいませんでした、平成から令和にならんとしてる時代に昭和どストライクな
あの内容、私みたいな古い人間にはたまりませんわ。
特に沙田戦、沙田がさわやかな顔で『戦いが楽しい』なんて言ってる次のページで
『 何 を 笑 っ て い や が る 』
このコマで完全に深みにはまりましたよ、自分の見て来た漫画のシーンで間違いなく
5指に入る名シーンです。
まぁそんな作品でしたが、不満が全く無かったわけでもなかったです。
え、草介が天王寺に勝つの?とか、ちょ、國崎が大典太を・・・ええ大包平まで!?とか
嫌アァァァヒロインがレイナ?堀ちゃんじゃないのかよおぉぉぉ(号泣)とか。
まぁ読者としてワガママは色々あるんですが、一番の不満はそこじゃなかったんですよね。
少年漫画という都合上、最低限のチートっていうか、いわゆる主人公補正はどーしても
必要になって来るでしょう。火ノ丸相撲においてもそれは結構顕著でしたね。
小兵の火ノ丸がどう考えても体格を超える膂力を持っているとか、
2年間ロクに対人稽古をこなせず、春まで西上の生徒に負けていた小関が全国で勝ちまくるとか
國崎は言うに及ばず、佑真も空手をかじっただけのヤンキーが半年稽古しただけで
全国の強豪と互角に渡り合うとか。
酷かったのは桐仁ですね。たかが高1の小僧がなんで名門高の監督を上回る指導力を
持っているのか、どう考えても無理あるでしょうアレ。
ですがいいんです、少年漫画ですから。
でも、そんな世界ですら、全く報われなかった人物がひとり居ました。
そう、三ツ橋蛍です。
彼が勝てないのは極めて当然の話です。ロクにスポーツ経験も無く、体は小さくて力も無い
そんな人間が相撲はじめてもそら負けまくりますって。
でも、これは少年漫画でしょ?多少の主人公補正やファンタジーはあってもいいでしょ?
他の5人みたいに。
が、この世界は彼に対してだけは徹底的に残酷でした。理想を捨て、試合を捨て、
捨て続けた先の勝負の一番でもあっけなく負かされて、最後の希望を託して
立ち合い不成立を繰り返し、背中まで向けて挑発したあの一番すら、世界は彼に
勝利を与えませんでした。
まるで他のチームメイトを贔屓する分、彼だけに現実の厳しさを押し付けるように。
それで作品のバランスを調整しているような、負けることで禊の役目を背負わされているが如く。
彼はさらに残酷な現実を突きつけられます。彼に変わって出場した桐仁は決勝戦で
蛍がどうしても挙げられなかった白星を得、あろうことかチームは全国優勝してしまいました。
全国優勝のチームのレギュラーで全試合敗北。
これ酷すぎません?
例えば祝賀会があったとして、彼だけは完全に針のムシロでしょコレ。
学校で優勝を全校生徒に報告されたとして、あとで試合のリザルトを調べた生徒が
三ツ橋だけ全敗した事実を学校中に広められたら・・・地獄ですよ。
自分だったら間違いなく不登校になるレベルですよ、転校したいですよ、頭からフトン被って
現実逃避するしかないですよこんなもん。
そんな残酷な扱いを受けた彼、それは火ノ丸相撲に対する一番の不満であり・・・
最高の二次創作の題材じゃないですか(歓喜)
そう、本作は彼の原作に対する復讐劇なのです。
それだけに本作は原作の『火ノ丸相撲』に沿った世界でなければ意味がありません。
異世界転生して刃皇に匹敵する力を持って戻ったり、彼が急にスタンド能力に目覚めるような
話ではダメなんです。
あくまで積み重ね続け、過去の屈辱を力に変え、仲間と共に成長する。艱難辛苦を乗り越え、
かつ原作の『三ツ橋蛍』という人物をスタートラインとして、なおかつ彼を最強クラスに
押し上げるという無理難題が課された作品になりました。
第0話にエピローグを持ってきたのは、作者が話を進める上で目指すべき所を見失わない
ようにと、最初に設定した目標でもあったのです。
そのせいか、本作は私の書いた作の中でもぶっちぎりの長期連載になりました。
蛍の強化を説得力ある表現で積み重ねる為には、仲間やライバル、それぞれの『心』まで
しっかり描いて行かなければなりません。また小説と言うよりは『漫画の文章家』という
表現をしてきた事もあり、一話一話が非常に短期間の話になり、結果120話という長編に
なってしまいました。
私が小説を書く時は、クライマックスやラストシーンをまず思い描き、それを元にして
起承転結をがっつり設定するようにしてます。なので書き始めると『早くクライマックスを
書きたい』という思いに囚われ、かなりの短期間で物語を完結させてしまいます。
まぁそれでクライマックスより繋ぎの話が面白くなってしまったりしますけど。
本作を書くにあたって、メインはどうしても高校相撲になるため、いろんな部活モノの
漫画、アニメを見漁りました。昭和のスポコン野球漫画は言うに及ばず、スラムダンクや
帯をギュッとね、等の平成スポーツ物から、近年のけいおん!、放課後ていぼう日誌、
ゆるキャン△に至るユルすぎる作品まで。
で、本作が一番参考になったのは意外にも『タッチ』でした。
カっちゃんの死や、達也と南の恋愛模様が印象的なこの作品ですが、作者にとって
一番のキーマンは途中で現れた監督代行、柏葉英二郎ではなかったかと思っています。
明青学園に対する復讐心を胸に、その力をもって野球部を叩き上げたその姿は
恋愛メインの主人公補正、才能至上主義の世界観に確かな説得力を持たせていました。
思えば柴木山親方の「時には夢や希望なんかより、怒り、嫉妬、屈辱、焦り、そんな
負の感情が人を奮い立たせる事もある」というセリフこそが本作の骨子だったかもしれません。
登場するライバルには事欠きませんでしたね。前述の通り本作でダチ高が優遇
されているなら、その裏では涙をのんだやられ役たちが大勢いたわけですから。
沙田に残酷に倒された大河内、鬼丸の成長の象徴にされた下山、ダチ高の当て馬にされた
柏実業に弱小校の象徴であった西上、そして睨み出しで戦わずして負かされた黒田(仮名)。
彼らに蛍と同じ『負の感情』を奮起材料としてダチ高の前に立たせた時、作者の予想以上の
熱い戦いが巻き起こりました。
そしてそれこそが蛍を叩き上げる、何よりの題材になったと思っています。
もう一つ大事なのは、最後の最後で蛍が単に復讐心だけでは無く、すべての陰陽の思いを
力に変える人物に成れた、という事でした。原作で鬼丸が刃皇に相対した時、彼は明らかに
負の感情に囚われて十全の力は出せませんでした。
蛍が最終目的である横綱鬼丸との戦いに当たって、かつての鬼丸以上の状態で相対する
というのが、最後の一番の結果に代わる蛍の『勝利の形』でもあります。
次回作はまだ未定ですが、火ノ丸相撲ではもうやり切った感じがあるので、書くとしたら
違うジャンルの話になるかと思います。
ここまで読んで頂けた読者諸氏がもし次回作を期待しておられるなら、それまでの繋ぎに
私の過去作品を流し見して頂けると幸いです、ジャンルはいろいろありまっせーw
それでは、またお目にかかる日まで。
三流FLASH職人