続くか続かないかは作者次第   作:安宅時雨

3 / 4
前回ラストの彼女のことは誰も当てられない無理ゲーだったことを白状します。本当にごめんなさい。


調伏

 

「『ダメだとか、わからないとか、そんなこと言うのは簡単だけどさ。そうやって目を瞑って、それで何か変わると思うか?』」

 

「え…」

 

「プロデューサーさん、貴方が言ったんですよ?アイドルを諦めようとした私に」

 

…誰だ?

Pの頬を掴んでいたのは、全く知らない少女だった。

 

「すまない。誰かと間違えたりしてないか?」

「えっ…いや、私ですよ?」

 

新手のナンパだろうか。何か適当なことを言って………いや。

 

「きみ、少しばかり俺の突拍子もない話を聞いてくれないか?」

「いいですけど…きみ、じゃなくて陽子ですよ!いつも通りに呼んでください!」

 

陽子と名乗る少女。高校生くらいだろうか。Pは自分の記憶に陽子という人間を探すが、やはり陽子という名前の知り合いは思いつかなかった。

だがよくよく考えればPのことをプロデューサーと呼んでいることから、このパラレルワールドでは知り合いなのかもしれない。どこかの事務所のアイドル、もしくはこの世界ではPがこの子の担当をしている可能性もある。

 

「とある男の話なんだが、そいつはどうやら違う世界からやってきたらしいんだ」

「突拍子ないですねぇ、ほんとに。今流行りの異世界転生ってやつですか?」

「いや、パラレルワールドみたいなものだ。知り合いのはずの人には知らない人扱いされたり、人の過去が変わってたり、なかったことになってたり。そういう世界に迷い込んでしまったらしい」

 

陽子という少女は、意外にも真剣に聞いているようだ。「お前は何を言っているんだ」とはならなかったらしい。顎に手を当ててむむむ…と悩んだ末、手を叩いた。

 

「それって、別の世界の自分と自分が入れ替わった!とかですか?最近漫画で読みました!」

「入れ替わり…そうかもしれないな」

 

だとしたら、元の世界にはこちらの世界のPがいるということになる。ある意味Pの代わりに仕事をする人間がいるならPは安心するので、そうであってほしいと思われる。

 

「その漫画では、最後には元に戻れたのか?」

「わかりません」

「それはどうして?」

「実はまだ連載中で…」

「なるほど」

 

この考えが正解だと決めつけるのは早いが、Pはとりあえず入れ替わり説を信じてみることにする。

 

「俺は元の世界に帰りたいと思っている。だから、その方法を探さなくちゃいけないんだ」

「…あの、プロデューサーさん」

「…?どうした?」

「俺って言っちゃってますけど」

「あ」

 

口を滑らせたPは慌てて言い繕おうとしたが、上手い返しが思いつかなかった。Pは黙ってしまう。

 

「その、今しゃべっているプロデューサーさんが別の世界のプロデューサーさんだとして、気になることがあるんですけど」

「なんだ?」

「元の世界で私とプロデューサーさんは知り合いでしたか?赤の他人だった、なんてことは…まああり得る話ですよね!漫画でもそんな展開ありましたし!えへへ…」

 

Pには陽子が悲しみながら、しかしそれを見せないように必死で堪えているように見えた。

この子に嘘をついてはいけないと、Pは思った。誠実に答えなければこの子に悪いと思ったからだ。

 

「…ああ。俺は少なくとも、きみの名前さえ知らなかった」

「そうですか。…じゃあ、また自己紹介しないといけませんね!」

 

少女はスゥーッと息を吸った。

 

「私は矢口陽子。ハイパーアイドル、矢口陽子!よろしくお願いしますね、プロデューサーさん!」

「…ハイパーアイドル?」

「はい!ハイパーアイドルです」

 

「ははっ、いいなそれ。じゃあ、俺もハイパープロデューサーにならなきゃな」

 

陽子がニコッと笑った。

 

「世界は違っても、プロデューサーさんはプロデューサーさんなんですね。こっちのプロデューサーさんと全く同じこと言ってますよ」

「そうか?」

 

正直そう言われてもピンとこないが、ある意味それが二つの世界を裏付けるように思えた。同じことを考え、同じことを思う自分であって自分じゃない誰かさん。それが向こうの世界に行っているのなら、おそらくは大丈夫なのだろうと。

 

「まあ、とにかくよろしく頼む」

「はい!じゃあ、握手しましょう!」

 

陽子が手を差し出してきた。Pも手を出し、2人は握手をする。Pにとってその握手は、陽子は忘れてはいけない24人目のアイドルだと自分に言い聞かせる意味もあった。

 

「この話、他の誰かにはしたんですか?」

「いや、陽子が初めてだ。アンティーカの5…いや、4人にはちょっと怪しい動きを見せてしまったけど」

「うーん、この際みんなに話してしまうっていうのはどうです?いずれバレてしまうよりは、そのほうがいいかなって思いまして!」

「それもいいかもしれないな。だが、大ごとにしすぎると収集がつかなくならないか」

 

自分のプロデューサーが急に自分の知るプロデューサーではないと言われても混乱するだけだ。認識の齟齬は出るかもしれないが、そこはどうにかカバーしていけるだろうと考えるのは楽観的すぎるだろうか。

 

「だから、これは陽子と俺だけの秘密にしておいてくれ」

「2人だけの秘密ですか。ふふっ、もしかして口説いてます?」

「え、そういうわけでは」

「ジョーダンですよ。プロデューサーさんはそんなことする人じゃないってわかってます。じゃあ、放クラのみんなには隠しておきますね!」

 

 

 

「放クラ?」

 

 

 

ノクチルの4人はアイドルではなかった。アンティーカは1人が別の道を辿っていた。

放課後クライマックスガールズは…

 

「…陽子、放クラのメンバーを全員言ってくれないか」

「いいですけど…まずはレッド、正義のヒーロー・小宮果穂ちゃん!」

 

「ブルーは冷静沈着・杜野凛世ちゃん!」

 

「イエローはバッドガール・西城樹里ちゃん!」

 

「グリーンは目指すはトップ・有栖川夏葉さん!」

 

「そしてピンク、ハイパーアイドル・矢口陽子!5人合わせて放課後クライマックスガールズ!!」

 

 

「…ハイパーアイドルに質問なんだが」

「はい?」

「知り合いに園田智代子って、いるか?」

「あれ?私、智代子ちゃんの話してましたっけ?なんでも食べちゃう食いしん坊なんですよね〜!あ、私の友達なんですけど」

 

 

園田智代子がアイドルになったのは、智代子の友達がアイドルオーディションに出れなくなったから。代わりで来た智代子はそのオーディションで合格し、283プロに入り、放課後クライマックスガールズのメンバーとなった。

 

では、智代子の友達が予定通りオーディションに参加できていたとしたら?

 

「プロデューサーさん?どうかしました?」

「…いや、なんでもない。俺との秘密は、絶対に守ってくれ。283プロのアイドルだけじゃない。友達には特に、絶対に言わないこと。約束してくれ」

「…ええ、いいですよ。これでもハイパーアイドルですから、約束を守ることに関してもハイパーです!」

 

(智代子と俺が関わることで、何か拗れてしまうかもしれない。主に俺の方の抑えが効かなくなる可能性も含めて、この話は広げるべきではない。)

 

「陽子、放クラはこの後何かあったか?」

「ラジオ収録があるはずです!はづきさんが一緒に来るので、俺はため込んだ仕事を消化しなきゃ、って昨日こっちのプロデューサーさんが言ってました!」

「そうか。頑張ってきてくれ。俺は向こうの俺の仕事をすることにするよ」

 

Pは陽子と別れ、来た道を戻って事務所に向かう。だがPには1つ、懸念があった。

 

 

ノクチル、アンティーカ、そして放クラ。3つのユニットに変化が生じた。なら、他のユニットは?

 

 

 

 

Pはいてもたってもいられずスマホを取り出し、通話アプリのチェインを開き––––––

 

 

 





ゆ る し て。
答え:智代子の友達、9割9分オリキャラ。あっ殴らないで!
放クラ編といいつつ、純正放クラは1人も出てこない非常事態。

名前にも一応意味がありまして、陽はお日さまとかをイメージさせる言葉ですが、
「矢口陽子の代わり」
「矢口 お日さま 子の代わり」
「矢口 日 子の代わり」
「智 子の代わり」
『智代子』
とすれば智代子が「矢口陽子の代わり」という意味を持ちます。それだけです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。