自分を菊地真に生まれたと思い込んだ人間がアイドルになって菊地真になる話。

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特殊タグ練習を兼ねてアイドルマスターとアクタージュのクロスがないから書きました。

……これをアイドルマスターと言ってもいいのかわからないけど。


僕は菊地真になりたかった

 突然だがアイドルマスターというコンテンツをご存じだろうか、

 

 

 プロデューサーとなりアイドルを導くゲームであり、動画投稿サイトでキャラクターたちを使った二次創作ともいえる様々なジャンルで一世を風靡し、アニメ化してソシャゲーにもなった、2020年の段階でも大人気コンテンツである。

 

 いや、あるなんて言ってしまえば語弊がある。何しろこの世界にはアイドルマスターなんてゲームは存在しないのだから。

 

 

 重ね重ね突然だが、語り手であるは転生者である。

 

 

 いわゆる小説投稿サイトで前世をもってある者の総称で、時には成り上がり、ある時は復讐者になり、ある時は世界をめちゃくちゃにする。

 

 立ち位置によって変化するけど大抵は前世の知識と経験を生かして活躍していく人種のことを言う。

 

 さて。ながながと語ったがこの二つがどう関係するのか、察しのいい人間はもう気が付いているだろう。

 

 アニメやゲームのキャラに憑依、もしくは生まれ変わり、勝ち組になったりこじらせたりするタイプの転生物だって当然ある。そしてその当事者になるなんて想像する人間なんていないだろうしそうなったときの対処法なんてどこにもありはしない。

 

 もうここまで語ったのならはぐらかす必要もないだろう。単刀直入に言えば、

 

 

 菊地真、それが今世でのの立ち位置だ。

 

 

 

 

 

 

 「あーあ、まーた落選かぁ、アイドルになるための事務所なんて一つしかないと思ってたんだけどなぁ」

 

 菊地真として生まれてから早16年。765プロも存在せず、ほかのアイドルも見つからないまま惰性のまま生きてきた。菊地真として公式プロフ通り空手もやってたしスポーツだって積極的にこなし、学校では王子様扱いを受けるように紳士的に振る舞い、菊地真になるために自分を磨き上げた。

 菊地真になり切るためならなんだってやった。

 そんなの菊地真としての譲れない一線。候補生のままだったとしてもアイドルプロダクションに入ってプロデューサーに出会ってトップアイドルを目指すということ。

 アイドルマスターは菊地真ただ一人。やらなくては誰にも知られず消えていく。

 他のアイドルもいなくても、アイドルマスターが存在したということを残せるのはしかいない。

 そんなこと俺は認めたくない

 「よーし!100回やってもダメなら200回やろう!僕だって可愛いアイドルになれるって見せつけてやるんだから!」

 そうでなくちゃ生きている意味はない

 駅内掲示板に映る広告ポスターに睨視を止めずに想いを馳せる。

 菊地真らしい仕草で。

 「……それにしても悔しいけど可愛いなぁ、僕もこんな風に振舞えたらいいなぁ」

 菊地真だったらこういうだろうという言葉を選ぶ。

 

 そうして前世でもアイドルマスターの世界でも存在しなかった女優を見据えて気合を入れる。

 

 「百城千世子、芸能界のトップスター……」

 なんでアイマスメンバーじゃないんだろう。

 百城千世子、今現在芸能業界にて一番売れている女優だ。

 

 彼女を見ない日はなく、

彼女を見ると自分がこの世界の人間じゃないと突きつけられる感覚に陥る

 彼女の存在がトップという壁を実感させられる。

彼女の存在がアイドルマスターの否定につながる錯覚に陥る

 だからこそアイドル業を始めるにしても存在を無視できない。

彼女を憎むのは菊地真のすることじゃないからすべて飲み込む。

 

 「……帰ろう。明日だって学校あるしプロダクションも探さないといけないから」

 765プロが存在しない世界で無駄だとわかっているのに

 駅のホームから改札をめざし、踵を返す。今の時間は人はいないからほとんど貸切だ。

 

 

 だからこそ油断したのかもしれない。

 

 

 「きゃっ!」

 

 「わっ!」

 

 振り返り際に人とぶつかるなんて想像もしていない。

 とっさに菊地真のリアクションができた

 「すいません!大丈夫……ですか?」

 

 「ごめんね。こちらも不注意だったよ」

 

 自分の真後ろに人がいることなんてこれっぽっちも考えもしなかったことを反省してぶつかった相手に手を差し伸べる。

 できる限り紳士的に

 相手はサングラスとマスクをしていて怪しい服装だったけどぶつかったのは自分なので反省する。

 そのしぐささえ自然と出てくるように特訓した

 「それにしても、私に気が付かないでポスターを眺めてるなんて、そんなに気に入ったの? 百城千世子のこと」

 

 「いやぁ、あはははははは……」

 そんなわけがない

 実はアイドルを目指すための目標だなんて言葉を口にはできずにごまかすように笑う。

 そのしぐさも自然と身についた

 「ねぇねぇ、そんなに好きならさ、教えてよ。彼女の魅力」

 

 「え!? い、いきなり何言ってるんですか!?」

 

 「私に気づかないでぶつかっちゃうくらいなんだからさ、さっきぶつかったことを悪かったんだと思っているならね。次の電車が来るまで暇なんだよねぇ」

 

 「いやいやいや、確かにこっちが悪かったけど、初対面で何言ってるのさ」

 

 そう言うと相手は顔が見えないにも関わらず少し不機嫌になったような気がした。

 いや、顔が見えなくても不機嫌を伝えることができるくらい雰囲気を操るのがうまいと言い換えるべきだろうか。

 「ふーん、アイドル目指してる“王子様”がそういうこと言っちゃうんだ」

 

 「な!? なんでそれを知ってるんだよ!?」

 少し既視感を覚えるのを無視する。

 この人はストーカーか何かだろうか?

 

 「その、彼女は女の子らしくて無邪気でどんな小さな声でもはっきり聞こえて」

 だからこそ妬ましい。その少女性は萩原雪歩が、その無邪気さは星井美希が、その声は如月千早が、

 「それでそれで」

 

 「すっごくミステリアスで上品で天使がここにいるっていうか」

 その不可思議さは四条貴音が、その自由奔放さは水瀬伊織が、その誠実さは秋月律子が、

 「うんうん」

 

 「もう目が離せないって感じだよ」

 そこにはいない人間を夢想し、恋い焦がれ、そして絶望する。

 「フーン、ま、お世辞としてはよかったよ。次は心のこもった言葉を聞きたいな」

 

 「なっ!?」

 そこにいたにも関わらず気が付かなかった。

 サングラスをずらした目から見えた目はいたずらに成功したような目があった。間違いない。目の前にいる彼女は――

 

 「百城千世子!?」

 

 叫び声は無情にもレールから響く音でかき消された。

 ここにいた証さえもかき消されたかのように

 「フフッ、電車が来たからもう行くね」

 

 彼女が乗る列車は昼間にもかかわらず天使のための列車といわんばかりに光輝いて見えた。

 それを肯定するかのように羽が生えてるがごとき軽やかなステップで降車口に飛び乗った。

 トップは当然自分であるという事実を何の呵責もなしに受け止め、当然のようにふるまう。

 それが許されるような優雅さで芸術家が作ったような美しさだった。

 仕草ひとつでそれができる。それがトップの才能、としか言い表せなかった。

 

 「じゃあね。真ちゃん。次はアイドルとして私に会いに来てね」

 

 「ちょっとま――」

 

 ドアの開閉音がそのまま世界を分けるように、無情に閉じていった。

 世界が無情に動くように、彼女もまた、視認できない速さで遠ざかって行った。

 そこまでの距離が無間の距離に思えた。

 

 「……なんで、僕、まだ事務所にすらたどり着いていないんだろう」

 

 過ぎ去っていく電車には追いつけない。その事実さえ忘れて呆然と立ち尽くすのみであった。

 こんなところで終われない

 はいまだにプロデューサーを見つけることができていない。




アニメのアイドルマスターが配信されてたを全話見たのでお蔵入りする前に投稿。

続きは書けないのに投稿する奴がいるらしい。

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