渡辺曜と浮気した話 作:人体列車
次の日の朝、いつもの様に千歌と一緒に学校に向かうために十千万へ向かう。
「おはよう!春くん!」
満点の笑顔を咲かせ、挨拶をする千歌の顔を見ることは出来なかった。
「春くん………?」
顔を逸らしたのが気になったのか顔を覗き込む様に千歌は尋ねてきた。
「い、いや、少し考え事。今日どこ行こっかなぁって。おはよう、千歌」
「うん!楽しみ!」
そう言って、腕に抱きついてくる。
頭を撫でてやると、気持ちよさそうに目を細めた。
昨日の事を忘れてしまうくらい今は幸せで、このまま昨日の事を忘れてしまいたい。
「おはヨーソロー!」
しかし、いとも容易く崩された
昨日、嫌になってしまうくらい好きになってしまうくらい聞いた彼女の声。
振り返るとアッシュ色の髪を風にたなびかせながら、彼女、渡辺曜は立っていた。
「おはよう、曜ちゃん」
「おはよう、千歌ちゃん。そして、春ちゃんも。」
「あ、ああ。おはよう。」
ドキドキと心臓がうるさいくらいに鼓動を始める。
もし今、曜から昨日の事を千歌に言われたら終わりだ。
襲われたとはいえ、浮気は浮気。
千歌からすると気持ちのいいものではないだろう。
そんな思考の海に落ちていると曜は顔をこちらの耳元に近づけて、囁いた
「昨日は楽しかったね」
それで、思い出してしまうのは一糸まとわぬ彼女の白く輝くしなやかな肢体、快感に喘ぐ声、そしてこちらに与えられた快感。
忘れようとしても脳に、耳にこびりついて離れない。
何とも悲しい男の
あんな姿を見てしまったら、ついつい意識をしてしまう。
それが、可愛い又は美人な人なら尚更。
僕が千歌を好きという気持ちは決して変わらないが、大きく揺さぶりを掛けるのには十分だった。
「千歌ちゃんには言わないであげるよ。」
そう彼女は耳元で囁く
ぞわりと身体に駆け巡る声
「その代わり……
焦らす様にもったいぶりながら、こう言った。
また付き合ってね。来なかったら……ね?」
何とも楽しそうに、彼女は僕にそう言って立ち去った。
来なかったら、多分その時は千歌に報告される事だろう。
今日の千歌とのデートはその事で頭がいっぱいだった。
*
あれから曜は、「今すぐ私の家に来て。来なければ千歌ちゃんにバラしちゃおうかな~♪」
と脅し身体を幾度か重ねていた。
そこで彼女が何回も何回も耳元で呟く言葉がある。
それは
「千歌ちゃんから私の物になる気になった?」
優しく背中を撫でながら、頭を撫でながら、それでいて離さないと分かるほどに力を入れて僕を抱きしめながらよく彼女はそういうのだ。
僕を煽るかのように
「千歌ちゃんと出来ない事、私はなんでもしてあげるよ?こういう事だって貴方の好きな風にしてあげる。千歌ちゃんを捨てて私の物になってよ」
甘い言葉を目の前にぶら下げて誘惑をしてくる。
もう脅されて何回もこんな事をしている僕が言っても説得力は無いけれど
「僕は千歌一筋だ。」
今、こうやってズルズルと続いているこの関係。
強く断れずにまた今日もしてしまう自分の事が嫌いだ。
千歌にバレて嫌われたくない、別れたくない、あの輝きを手離したくないとただの利己的な考えで彼女と交わした秘密事は無し、困った事があったら相談するという付き合い初めて最初に決めた約束事をしたが、それすら守れてないダメな彼氏。
彼女の隣に立つ資格なんてとっくに消えている。
それでも僕は千歌の事が大好きなんだ。
彼女の隣に縋りつきたいんだ。
特有の性の匂いが充満する曜の部屋でスマホで今まで来た通知を確認している僕を曜はつまらなそうに口を尖らせ僕を見つめていた。
そして、不敵に1回笑い彼女はどこか遠くを見ながら
「春くんは私の事好き?」
首を傾げなからそう聞いてくる
「ふ……「もちろん、普通ってのはダメ。好きか嫌いか」………」
普通と言って濁そうとする前に先手を打たれた。
「好きか嫌いかと言えば曜の事は好き」
彼女へのせめてもの反抗として出来るだけ小さく聞こえないように呟いた。
それでも彼女は地獄耳だったようで
「そっか!!春くんは私の事大好きなんだね!勿論、私も愛してる」
満点の笑顔と共に彼女は隔てる物が何一つない布団の中で抱きついてきた。
「千歌ちゃんに負けないよ?私」
愛してる、夫婦のイメージ。深い愛
大好き、恋人のイメージ、愛してるに比べて浅い愛
クズ主人公のタグつけようかな……