渡辺曜と浮気した話 作:人体列車
今日は曜にも呼ばれていない、千歌と約束もしてない完全にフリーな日。
家にいても嫌な予感しかしなかった為、僕は今、遠くの本屋へ出かけた。
ここなら千歌も曜も来ないだろう。
曜の事も千歌に対する申し訳なさ、言えない自分のもどかしさを一時的にでも忘れてしまいたかったから。
とは言ってもお目当ての本がある訳でも無く、ただタイトルや帯から面白そうな本を手に取り、立ち読みをするだけなのだが。
それだけでも僕は気持ち大分楽になったような気がした。
気に入った本を3冊ほど見繕い、携帯を開く。
「12時40分か……げ、電池少なくなってる。」
丁度お昼くらい。昼食を取るにはいい時間だろう。
あと充電もしたい。最近は減るのが早い気がする。そろそろ買い替え時なのだろう。
近くにあったカフェで昼食を取ろうかと僕はお店に入ろうとした。
すると後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「春くん!!」
後ろからぎゅっと抱き締められる。
背中から香る柑橘類の様な甘酸っぱい匂い、脳が蕩けそうになるほどの甘い声。
僕の彼女、高海千歌。
「千歌?」
「やっぱり春くん!奇遇だねぇ~」
一段と強くぎゅっと抱きめしる。
「千歌、どうしてここに?」
内浦からは距離があるし、沼津からも大分距離がある。
だから、曜と千歌から離れて考えようとこの場所を選んだのだか。
「志満ねえにお使い頼まれちゃって……ここで売ってるみかんが美味しいから家は買いに来るんだよ!今、そのお店のトラックで家まで運んで貰ってるんだ」
高海家には絶えずみかんが置いてある。
旅館へ来たお客様に出す用、あと自分たち用として重宝しているのだろう。
あまり違いが分からない僕が食べても美味しいと感じる程の物。
少し家からは遠いが、今度買ってみるものいいかもしれない。
「春くんは何してるの?」
「いや、僕はちょっと本を買いに来ただけ。たまには遠出をして見るのもいいんじゃないかと思って。」
「なら、千歌も誘ってくれれば良かったのに……」
ぷくーと膨らませた千歌の頬を突くと穴の空いたボールの様にぷしゅーと萎んでいく。
「まぁ、結局こうしてあったんだからいいじゃん。」
「なら、許してあげよう!あ、家に美味しいみかんジュースあるんだけど一緒に飲もうよ!」
彼女は僕の手を引っ張り駆けていく。
千歌に引っ張られながら僕は、雲に隠された太陽が浮かぶ空を見た。
雨……降るのかな。
◆
十千万へと戻ってきた僕達。
千歌は冷蔵庫からみかんジュースを取り、自分の部屋へと元気よく駆けていった。
そして、僕は美渡さんに捕まっていた。
「お、春。」
「こんにちは、美渡さん。」
「今日も何処か一緒に千歌と遊びに行ってたのか?」
「あ、いえ、ただ僕1人で出掛けてたんですけど、志満さんからお使い頼まれてみかんを買いに来たって聞いたんですけど………」
「あれ?そんな事言ってないはずだぞ。千歌からは春と出かけるって聞いた。」
「え?」
「もしかして、何か私に内緒で美味しい物で買うために嘘ついたんじゃないだろうな、千歌……」
「そんな事………あるかも。」
千歌なら、美渡さんに食べられたくないと内緒で買うくらいしそう。
みかんケーキみたいなの。
美渡さんの食べ物に対する勘は鋭いのだ。
「春くーん!!早く来てよ!!」
「今行くよ。」
「千歌が買ってきたやつを見つけるとするか」
「食べないでくださいね、そしたら、絶対千歌拗ねますし、拗ねたら機嫌直すの大変なんですから。」
そう美渡さんに言い、階段を上がり千歌の部屋へと入る。
「もぅ、遅いよぉ~」
「ごめん、ごめん。」
彼女の隣へと腰掛ける。
すると、足の間の隙間に彼女は移動し挟まる様に座った。
「えへへ~千歌の特等席~」
にへらと笑う彼女を見て、くすりと僕は笑って彼女の髪を優しく撫でた。
さらりと流れる彼女の美しい太陽の様な輝きを持つ髪。手で梳いてあげると、ふわりと彼女の甘い香りが漂った。
その後はくだらない話をした。
帰る時にいつもする様な会話を日が落ちるまで。
◆
外はもう周りを赤く優しく染めあげ、幻想的な風景を作り上げている。
そろそろ帰ろうかと、立ち上がるとちょこんと服の裾を掴まれていた。
掴んでいたのは勿論、千歌。
「どうしたの?」
優しく問いかける。
「春くん、私の事………好き?」
不安げな瞳を向けながらそう問いかけてくる。
「そりゃあ、勿論好きだよ。」
「えへへ~私も愛してる。」
「僕も大好きだよ。千歌」
ぎゅっと千歌を抱きしめて十千万を出た。
出た後に美渡さんと千歌の言い争う声が聞こえた。
千歌、内緒でお菓子食べようとしたんだな……
「ねぇ、面白い情報あるんだけど聞かない?」
出て直ぐにあまり会いたくない人に出会った。
「どうしてここにいるんだ……曜。」
「千歌ちゃん家にいるだろうと思ってずっと見張ってたんだ。そしたら案の定って感じ。」
「ストーカーしてたのか……」
「ただ見張ってただけだよ。ま、それはいいんだけど取っておきの情報があるんだけど、聞かない?」
「一体どんな情報だ?」
「千歌ちゃんの君に秘密にして、君にやってる事があるんだよ。聞きたい?」
僕はぐっと唾を飲んだ。
彼女はただ微笑んだ。
千歌ちゃん、梨子ちゃんでもこんな感じでやろうとしてます。(予定だけ)
モチベが消え去る前に完結にしたいので、あと数話程度で終わる予定。